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M&Aのメリット・デメリットは?主なM&A手法も3つご紹介

HUPRO 編集部
M&Aのメリット・デメリットは?会計処理について

最近企業のグローバル化や多角化が進んできており、M&Aも活発になっています。企業がM&Aをする理由は様々ですが、何らかのメリットがあると感じて行っていることでしょう。では、M&Aのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。そこで、今回はM&Aのメリットについて現役公認会計士が解説します。

M&Aとは?

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略で、合併と買収と日本語訳されることが多いですが、M&Aとそのまま使われることが多いです。
合併とは、二つ以上の会社が一つになる組織再編を言い、法人格も一緒になります。よって、適用される社内規定なども同一となります。一方で買収というのは、一方の会社が一方の会社を子会社化することを言います。法人格は別のままですので適用される規定などはそれぞれの会社のものが適用されます。しかし、買収を機に子会社の規定を親会社に合わせるなどする場合もあります。

M&Aのメリットは?

M&Aのメリットは様々です。ここでは、買い手側と売り手側それぞれに立って考えてみましょう。

M&Aにおける買い手側のメリット

まず、買い手側にとって事業規模の拡大というのが一番わかりやすいメリットでしょう。事業規模が拡大すると家賃や管理部門などの固定費が共通化されるため、利益率が向上する可能性があります。

また、同業をM&Aをした場合は顧客の共有化をすることで新たな販路をそれぞれの会社で開拓できる可能性があります。同業ではなかったとしても、新たな販路が開拓できる可能性があります。これをシナジー効果と言います。

万が一同業ではなく全く業種の異なった企業をM&Aした場合はどうでしょう。仮に自動車メーカーが鉄道会社を買収したとします。若者が自動車離れをして電車などの公共交通機関にシフトしたとすると自動車メーカーの業績は下がりますが、鉄道会社の業績は上がるでしょう。また、逆に自動車需要が増したときに鉄道会社の業績が悪くなるなど、両社が相互に補完する関係になることができます。
このように、M&Aでは関連多角化と無関連多角化とあり、シナジー効果やリスクヘッジ等のメリットがあるといえます。

M&Aにおける売り手側のメリット

売り手側にとってもM&Aのメリットは多々あります。まず、当然ですが、M&Aによって売り手側の創業者などの株主は売却益を得ることができます。
また、非上場の中小企業の場合、創業者が株主となっている場合がほとんどですが、創業者が高齢になり、後継者も見つからず、でも従業員を守るために会社の事業は継続しなければならないというケースで、M&Aは有効に活用されます。

シナジー効果がありそうな優良企業に、自社を売却することでさらなる成長が見込め、同時に従業員の雇用も守ることができるからです。
他にも、廃業コストがかからないで済むことなどがメリットとして挙げられるでしょう。

M&Aのデメリットは?

一方で、M&Aにはデメリットもあります。

M&Aにおける買い手側のデメリット

まず、買収には多額の資金が必要であったり、買収額がそこまで高くなくても買収先の借入金を肩代わりしなくてはならない可能性があったりします。
一般的にM&Aをされる売り手側は何らかの事情で経営権を売り渡しているため、負の財産も残っていることが通常です。よって、買収後に早期返済できないとなると負の財産のリスクのみが残ることになります。

また、M&Aのデメリットとして買収後の組織の融合がなかなかうまくいかず、優秀な人材が離脱してしまうリスクがあることが挙げられます。買収する側とされる側はそれぞれ別の文化で育っていますが、買収後は何かと組織を統一しようと業務の流れなどを変える動きもあります。上司が変わることもあるでしょう。そんな変化に耐えきれずに優秀な社員が退職してしまう可能性があります。

M&Aにおける売り手側のデメリット

M&Aにおいて、必ずしも売り手側が望む希望価格で買収されるとは限りません。ですので、景気状況や対象企業の借入額の大きさなどから企業価値判断され、売り手側の想定よりも低い価格で買収が行われるということもあります。

また、買い手側のデメリットでもお伝えしましたが、やはり対象企業で働く従業員が一番の影響を受けるでしょう。上述したメリットも当然ありますが、買い手側の企業の方針に従わなければならないことも多く発生するなど、不満を感じてしまうことも考えられます。また、社長についてきた幹部などが離職することもあるでしょう。あとは、取引先についても、経営権が変わり担当も変更になったら契約をやめたいと申し出があるケースも考えられます。

以上のように、M&Aにはメリットもたくさんある一方で、場合によってはそれがデメリットに変わってしまうことも多々あります
では、M&Aにおいてなるべくメリットが生まれるためにはどうしたら良いのでしょうか。下記に見ていきます。

M&Aのメリットを享受するためには

M&Aにはメリットとデメリットがあるとお伝えしましたが、デメリットを減らしメリットを増やすことが大事になります。M&Aのデメリットとして組織の融合がうまくいかないというお話をしました。よって、組織をうまく融合することが重要となります。
そこで用いられる手法がPMIとなります。PMIはPost Merger Integrationの略で経営、業務、意識の統合を行うプロセスを言います。PMIで最も大事な統合が経営統合です。

経営統合とは

経営統合では企業の理念や理念に沿った戦略、経営の基礎を統合することになります。
経営理念は内外の関係者にその経営者のメッセージを発信するのに有効であり、古い会社では毎朝、経営理念の唱和を行うほどです。

大規模な会社が小規模な会社をM&Aした場合は大規模会社の経営理念に合わせることもありますが、対等合併等では新たに経営理念を作成することもあるでしょう。どちらにしても、全体集会やメール、広報誌等どこでも良いのでトップ自らが経営理念を発信することが大事です。
次に、業務統合も重要なプロセスとなります。

業務統合とは

業務統合では、IT関係や業務のやり方などを統合します。ここでは単純に大企業の方にシステムを合わせるだけでなく、合併された会社にもある良い仕組みは積極的に取り入れる姿勢が重要です。コストのことのみを考えて大会社のシステムに統一しても使い勝手が悪いシステムを増殖するだけになるかもしれませんし、M&Aされた会社の従業員のモチベーションも下がる一方となってしまいます。

さらに、意識統合も重要となります。互いに異なる二つの会社では、勤務時間での従業員の会話も異なりますし、挨拶の仕方一つでも違うでしょう。これは意図的にどちらにするかが難しい分野になりますので、ある程度組織再編をして人材の交流を図ることが融合への近道と言えます。

M&Aでメリットのある会計処理

M&Aを続ける企業であれば、連結財務諸表にのれんが多額に計上されることもあるでしょう。のれんは日本基準では最長20年間で償却処理をしなければなりません。仮に10億円ののれんを5年で償却するとすると毎年2億円の負担が追加されます。
この点、IFRS(国際会計基準)であればのれんは非償却となりメリットがあると言えます。しかし、のれんは毎年減損テストと呼ばれる処理をしなければならず、また特別損失という分類が無いため思わぬ損失が発生する可能性があり、導入には慎重になるべきと言えます。

M&Aの手法

上記では、M&Aのメリット・デメリットを解説してきましたが、実際のM&Aの手法としては主に以下の3つがあります。それぞれ説明してきます。

TOB:テイク・オーバー・ビット

TOBは、株式公開買付と呼ばれます。世界中で広く用いられている手法で、M&Aの対象となる企業の株式取得について、不特定多数の株主に告知します。金融商品取引所を介さず取引されるので、市場価格にさらに上乗せされた株価で買い付けられます。

一般的なTOBと日本のTOBには大きな違いがあります。通常のTOBは、敵対的M&Aや敵対的買収と呼ばれるもので、買収の対象となる企業の経営陣の承諾を得ずして行われます。対象企業の資産獲得後に企業価値を高め、売却して利益を得ることを目的としています。一方で日本国内のTOBの多くは友好的M&Aと呼ばれ、買収対象の企業の経営陣との話し合いを行い、双方が納得の上で実施されます。

MBO:マネジメント・バイアウト

MBOはオーナーや経営陣、従業員が自社株式を購入し、オーナーとして独立するという手法です。メリットとしては、株主や投資家の意向に左右されないこと、自由かつ柔軟性のある経営が可能になることに加え、意思決定のスピード化が図れること等が挙げられます。

MBOは主に経営体制や企業運営見直しの対応策として行われます。また、株式を公開するメリットが低下したことで、MBOに踏み切って株式を非上場にする企業もあります。

株式譲渡

中小企業のM&Aで利用されるのは、ほとんどのケースが株式譲渡または事業譲渡ですが、その中でも最も容易なのが株式譲渡です。

株式譲渡では、個人や法人が保有している株式を売買し、株主変更を行います。株主が法人となった場合、売り渡された会社は子会社となり、事業をそのまま継続することが可能になります。株式の譲渡は会社組織そのものの改編につながるわけではないため、法務局への登記変更や役所への手続きは不要です。また業務や従業員に関しても、大きな影響を与えず引き継げることが大きなメリットです。

まとめ

以上、M&Aのメリット・デメリットを中心に、M&Aの手法や、メリットを最大限に受けるにはどうしたら良いのかを見てきました。M&Aが活発に行われている現在、経理・財務担当者はもちろんですが、現場の責任者の方もM&Aによってどのような影響が生じるのかはきちんと理解しておく必要があるでしょう。

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この記事を書いたライター

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