キャリアパスとは、企業内での昇進・昇格のモデルとなる職務経歴や、仕事における専門性を極めるための道筋などを表わす言葉です。
目指す職位や職務に就任するために、中長期的にどのようなスキルや専門性を身につけるべきか、そのためにはどのような部門での職歴を重ねていくべきかといった具体的な内容まで落とし込むことで、自分の取るべき行動が見えてきます。
今回は人事担当者のキャリアパスと、もしそれがかなえられない場合どうするかについて解説します。
人事は企業や組織の「ヒト」を管理する部門です。ほとんどすべての企業が、人的リソースなしでは経営することができません。そのため、組織の成長や安定した経営をさせるために、非常に重要な役割を果たしています。そんな人事の業務は、大きく4つに分かれます。それぞれ見ていきましょう。
組織の目標達成への貢献が期待できる社員を採用します。業務への適性を測るだけでなく、社風や職場の雰囲気にマッチするかどうかも判断しながら、目標とする採用人数が満たせるよう尽力します。
ただ選考に対応するだけでなく、求職者にとって魅力のある会社だと感じてもらえるようにアピールすることも、業務の一部です。
採用した人の持っている「スペック」は千差万別であり、求められるパフォーマンスを出せるようになるまでの期間も人それぞれです。そんな新入社員をどのように育成していくのかという、教育体制や研修制度を構築するのも人事の役割です。
組織の理念や戦略を社員に浸透させ、文化を築き、社員がビジョンに向かって最大限に働ける環境を作り出します。いくら優秀な人材を採用できても、活躍できる環境づくりができていなければ、組織の目標達成に貢献できない可能性が高いです。
そのため、社風の醸成や社員のモチベーション向上のための施策を、時には他の部署とも協力しながら、主体的に行う必要があるのです。
法令遵守・福利厚生などを適正なものにして従業員の権利を守り、安心して働ける環境を作ります。人事部と労務部が分かれている場合は人事部の役割に該当しないことが多いですが、社内の「ヒト」に対して責任を持つ人事の大切な役割といえるでしょう。
人事の仕事について詳しく内容を確認したい方は、以下のコラムもご一読ください。
人事の役割や仕事内容が分かったところで、人事のキャリアパスにはどんなものがあるのか、見ていきましょう。
そもそもキャリアパスとは、将来的に目指す職位や職種を据えた上で、そこに到達するまでにどのような仕事をしていけばよいのかを明らかにしたものを指します。ゴールまでの年数を決めた上で、そこまでの各ステップでかかると想定される年数についても細分化することで、今すべきことがより明確になります。
あくまでも職位や職種の目標なので、必ずしも在籍している職場に居続けていなければならないというわけではありません。転職してキャリアアップするのというのも有効な選択肢といえます。
人事のキャリアパスの中で、ゴールとして設定されやすいものとしては、大きく以下の3つに分かれます。
「人事部長」「CHRO」といった役職で人事部のトップを目指すキャリアパスです。人事として働く中で、最も描きやすいキャリアパスといえるでしょう。人材の採用や育成といった人事業務を包括的にマネジメントをするのはもちろんですが、経営戦略に基づいた目標や適切な人材育成のための評価制度を策定するのも、業務の一つとなります。
人事部の予算を超過することなく目標達成する責任を請け負う重要なポジションであるため、やりがいを感じやすい仕事です。
採用・人材育成・マネジメント・労務など、人事に関する分野の中の一つのスキル習得に特化し、特定分野のスペシャルストを目指すキャリアパスです。特に中小企業において、人事部が全ての分野に精通していることはあまり無いため、企業のウィークポイントである部分のスペシャリストになることで、キャリアップすることができます。
特定の分野のスペシャリストになっておくと市場価値が高くなるので、他の職場に転職するとしてもニーズを高めることができるでしょう。
人事の仕事の経験は、他の職種でも活かせることがあります。
代表的なのが、人事のコンサルティング会社です。クライアント企業の「ヒト」に関する課題を解決するため、今まで所属する企業に提供していたノウハウをクライアントに提供するという形となります。多くの企業を外側から見ながらコンサルティングを行うため、難しさは感じやすいですが、課題解決に導けるやりがいも感じやすい職種です。
また人材紹介会社でも同様に、人事のスキルを活かしてクライアントの「ヒト」の不足を解消することができるでしょう。さらに転職とは少し異なりますが、経営力や起業志向のある方は、独立して人事のスキルを活かしてメンバーを採用していくというケースもあります。
人事職においては、どのようなゴールを目指すのかによって、たどるべきルートが異なります。具体例を以下で見てみましょう。
①人事部全体を統括するジェネラリスト
ジェネラリストを目指す場合、人事領域の業務をなるべく広く経験しましょう。
採用担当者であれば、新卒と中途はもちろん、営業・開発・マーケティング・管理部門など、幅広い職種の採用を担当しておくことがオススメです。他にも会社説明会や採用アシスタント、採用・研修計画などに携わり、管理職へ昇進、戦略人事の視点をもちながら人材採用・活用制度設計などにも携わるのが理想的でしょう。
②人事領域の特定分野を極めるスペシャリスト
例えば労務のプロフェッショナルになるのであれば、労務管理担当になり実務を担当するのがよいでしょう。社員の相談や労働基準監督署との対応も経験し、もしかのであれば社会保険労務士資格を取得し、より専門的な知識も深めるのがベストです。
③人事の経験を活かして他職種への転職
他職種への転職をする場合は、どのような職種を目指すのかによって、キャリアパスも変わってきます。ただし、基本的には人事全体のコンサルティング業務を行うことになりますので、ジェネラリストと同じく幅広い業務を経験しておく必要があります。
人事部門でのスペシャリストを目指すのであれば、実際に自分のキャリアパスの希望を作成して、人事部門に提出しておくというのも一つの手段です。
自社で希望するポジションに着いている人が、どのようなキャリアパスを歩んできたかを参考にすると、より実践的なキャリアパスを作ることができるでしょう。
企業によっては、今後のキャリアパスの希望を確認し、異動の際に参考にするような仕組みを整えているところもあります。
社員を適性や希望のあるポジションにつけることで、パフォーマンスを上げてもらうことは、人材の有効活用につながるからです。
しかし、自分が希望しているからといって、それが企業内で通るかどうかは、また別の問題になります。人事部門は人気のポジションも多く、社内の競争率も高いので、会社から見てより能力を発揮してくれそうな人がいれば、そちらが優先されてしまうため、自分の思うキャリアパスが描けないという事態になってしまうことも。
例えば、自分は人事のプロフェッショナルを目指しているのに、会社で関係のない部門に配属されてしまったというようなことがあった場合はどうすべきでしょうか。
個人の希望と適性が違うことは往々にしてよくあることですし、会社の人事は万能ではありません。自分にはよくわからないまま、希望の部署に行くことができないということも、残念ながらあり得ます。
会社としては本人の適性を見込んで配属したということであれば、もちろんそこでキャリアパスを変更するということも考えてみるのもよいでしょう。
または、より自分の希望するキャリアパスを描けそうな企業へ転職するというのも一つの手段です。
仕事をする時間は人生の中で長い時間に及びます。希望の部署に配属されず、普段の仕事が自分の希望にそぐわないと感じながらも、忙しいまま毎日が終わってしまう方も多いでしょう。仕事に対して何を求めているのか、いったん立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。
理想のキャリアを実現するために、転職活動をしていくにあたって、面接でキャリパスをどう伝えればいいのか、分からないという方も多いのではないでしょうか?ここでは、そんな人事職の面接でのキャリアパスの伝え方をご紹介します。
キャリアパスは、短期(1~2年)・中期(3~5年)・長期(5年以上)の視点を持つことで、一貫性のあるストーリーになります。短期的な視点では「採用・労務・制度設計などの特定分野のスキルを磨く」、中期的な視点では「人事の幅を広げ、戦略的な人事やマネジメントに挑戦する」、長期的な視点では「経営に近い立場で人事戦略を推進する」など、それぞれの視点で目標に向けてどうするのかを具体化しましょう。
企業ごとに人事に求める役割は異なります。そのため、企業のビジョンや事業フェーズ、応募するポジションに応じて、キャリアパスをうまく調整するのがオススメです。
目指しているキャリアパスの一貫性や信頼性をアピールするために、これまでの経験と紐づけてキャリアパスを伝えましょう。
今回は人事職のキャリアパスの選択肢や、それを実現するための方法についてご紹介しました。人事のキャリアパスは一つではありませんし、実現方法にはより多くの選択肢があります。自身の希望と特性を捉えながら、理想のキャリアの実現を目指しましょう。
理想の実現のために、資格を取るのもよいでしょう。人事では社会保険労務士やキャリアコンサルタントなどの資格が活かしやすいので、経験を積みながら勉強を進めるというのもオススメです。
他にもセミナーや研修に参加するなど、主体的に行動することが、思い描いたキャリアの実現に繋がります。