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会社経営に活かせる!若者雇用促進法について解説します!

HUPRO 編集部
会社経営に活かせる!若者雇用促進法について解説します!

若者雇用促進法(正式名称:青少年の雇用の促進等に関する法律)は、若者の雇用の促進を図ることや、能力を有効に発揮できる環境を整備することを目的とし、平成27年10月に施行された法律です。今回は実務上も影響の大きな本法律の概要説明と会社経営に活かす方法について、社会保険労務士が監修のもと解説していきます。

なぜ若年雇用促進法が制定されたのか

日本の少子高齢化が進むなか、労働力人口は減り続けています。そうした中で経済を維持・発展させるためには、「若者の労働力を活かすこと」が非常に重要なテーマとなります。しかし経済が停滞する中で、若者の雇用実態は厳しさを増すばかりです。

こうした課題に対して対策を講じる必要性があることが若者雇用促進法制定の背景となっています。なお本法律における若者とは基本的には35歳未満を指していますが、個々の状況などによって45歳未満まで対象となる場合があります。

若年雇用促進法の概要

若年雇用促進法は大きく3つの内容に分かれます。以下それぞれの内容について説明をしていきます。

1.職場情報の積極的な提供

企業と新卒者間でのミスマッチによる早期離職を防止する観点から、新卒者を募集する企業に対して、幅広い情報提供を行うことが努力義務となりました。さらに応募者やハローワーク、職業紹介事業者等から求めがあった場合は、以下(ア)~(ウ)の3類型それぞれについて1つ以上の情報提供が義務となりました。

(ア)募集・採用に関する状況

・過去3年間の新卒採用者数、離職者数
・過去3年間の新卒採用者数の男女別人数
・平均勤続年数

(イ)職業能力の開発・向上に関する状況

・研修の有無及び内容
・自己啓発支援の有無及び内容
・メンター制度の有無
・キャリアコンサルティング制度の有無及び内容
・社内検定等の制度の有無及び内容

(ウ)企業における雇用管理に関する状況

前年度の月平均所定外労働時間の実績
前年度の有給休暇の平均取得日数
前年度の育児休業取得対象者数、取得者数(男女別)
役員に占める女性の割合及び管理的地位にある者に占める女性の割合

2.ハローワークにおける求人不受理

ハローワークでは、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令について、一定の違反があった求人者からの新卒求人を受理しないことができるようになりました。新卒採用に関わるトラブルは職業生活において長期的かつ多大な影響が生じる可能性があるためです。

3.ユースエール認定制度

若者の採用や育成など雇用管理状況について、優良な中小企業(常時雇用する従業員が300人以下)を厚生労働大臣が認定する制度です。ユースエール認定企業となった場合、求人時におけるハローワークでの積極的なPR、認定企業限定の就職面接会への参加、自社広告などへの認定マークの使用、助成金額の加算、日本政策金融公庫による低利融資、公共調達における加点評価など様々なメリットを享受することが可能となります。

これらは大企業に比べ、知名度に劣る中小企業にとって、採用時など非常に心強いサポートとなりますし、さらに融資等においては経営に大きなメリットが生じます。

3.ユースエール認定制度

ユースエール認定企業となるための条件

このように認定を受けられればメリットの大きなユースエール制度ですが、以下のすべての条件を満たしている企業であることが必要となります。すべてを満たすとなると厳しい条件ではありますが、クリアできるのであれば積極的に申請を検討すべきでしょう。

1.学校求人など若者対象の正社員の求人申込みまたは募集を行っていること
2.若者の採用や人材育成に積極的に取り組む企業であること
3.以下のすべての要件を満たしている事
・直近3事業年度内に正社員として就職した新卒者や若者のうち、同期間に離職した者の割合が20%以下
・人材育成方針と教育訓練計画を策定していること
・前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間数が20時間以下かつ、月平均法定時間外労働が60時間以上の正社員が1人もいないこと
・前事業年度の正社員の有給休暇の付与日数に占める取得日数の年平均70%以上、または取得日数が10日以上
・直近3事業年度の労働者について男性労働者の育児休業等の取得者が1人以上または女性労働者の育児休業等の取得率が75%以上
4.以下の雇用情報項目について公表していること
・直近3事業年度の新卒者などの採用者数・離職者数、男女別採用者数、平均継続勤務年数
・研修内容、メンター制度の有無、自己啓発支援・キャリアコンサルティング制度 ・社内検定の制度の有無とその内容
・前事業年度の月平均の所定外労働時間
・有給休暇の平均取得日数
・育児休業の取得対象者数
・取得者数(男女別)
・役員、管理職の女性割合
5.過去に認定を取り消された場合、取り消しの日から起算して3年以上経過していること
6.過去に7から12までに掲げる基準を満たさなくなったため認定辞退を申し出て取り消した場合、取消しの日から3年以上経過していること
7.過去3年間に新規学卒者の採用内定取消しを行っていないこと
8.過去1年間に事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと
9.暴力団関係事業主でないこと
10.風俗営業等関係事業主でないこと
11.雇用関係助成金の不支給措置を受けていないこと
12.重大な労働関係法令違反を行っていないこと

学校や民間会社での採用時においても情報提供が必須に  

若者雇用促進法が施工されてから、ハローワークだけでなく、高校や大学などの学校や、民間の人材紹介会社などを利用した場合においても、前述した離職率や平均残業時間などの情報提供が求められることが一般的になってきています。これら情報提供が求められる内容は、その企業での働き方の実態が求職者にオープンになるものと言えます。

求職者側としては就職活動にあたって、知りたい情報ではあるものの、聞きづらい点が網羅されているため、注目すべき有益な情報と言えるでしょう。一方で企業側からすると、情報提供をするためのデータ収集や管理など体制を整えることはもちろん、常日頃の労務管理を徹底し、実態の就業環境を改善していくことがより強く求められるようになったとも言えます。

まとめ

この若者雇用促進法の内容は、求職者側からすると就職前に適切な情報を入手することができ、就業時のミスマッチを防ぐことで、特に重要な若年期における長期的なキャリア形成についての実現性を高める効果があると言えます。一方企業側からしてもうまく活用できれば採用、離職率低下、財務的な経営支援などそのメリットはとても高いものです。ぜひ今回の記事を参考に活用を検討いただければと思います。

この記事を書いたライター

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