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裁量労働制とは?メリットとデメリットについて解説します

HUPRO 編集部
裁量労働制とは?メリットとデメリットについて解説します

裁量労働制という制度は、従業員の裁量で仕事の配分ができ、企業と従業員の間の協定で定めた時間分を賃金として払うという労働形態です。
全ての人に適用できるわけではなく、裁量労働制が適用できる職種が限られており、残業についての考え方なども異なります。

今回は、裁量労働制ついて、把握しておくべきポイント、メリット・デメリット、残業代などについて解説しています。就職・転職などで裁量労働制の業務に就くような場合に、事前に把握しておきましょう。

裁量労働制とは

裁量労働制とは、業務にかかった実際の労働時間がどれだけなのかに関係なく、あらかじめ労使協定で定めた時間だけ働いたとみなして報酬を支払う仕組みのことです。

裁量とは「自分の考えで問題を判断し処理すること(大辞林 第三版)」という意味で、通常の労働時間やその内容は、管理者によって管理されますが、裁量労働制においては、企業側での労働者の管理をおこなわないことが特徴とされています。

裁量労働制の場合は「時間外労働」という概念が存在しません。しかし、全ての業種にそれを認めてしまうと、過重労働の原因となってしまいます。

厚生労働省においては、業務遂行の手段や方法、時間配分などを、労働者の裁量にゆだねる必要があるとされる職種のみ、裁量労働制をとることができると定めています。

具体的には、以下のの2種類に大別されています。

・専門業務型裁量労働制:高度に専門的な業務を行う
・企画業務型裁量労働制:事業運営上の重要な決定をおこなう

次項にて順に見ていきましょう。

専門業務型裁量労働制

定められた19業務に限り、事業場の過半数労働組合又は過半数代表者との労使協定を締結することにより導入することが可能です。

(1) 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
(2) 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務
(3) 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務
(4) 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
(5) 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
(6) 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
(7) 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
(8) 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
(9) ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
(10) 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
(11) 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
(12) 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
(13) 公認会計士の業務
(14) 弁護士の業務
(15) 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
(16) 不動産鑑定士の業務
(17) 弁理士の業務
(18) 税理士の業務
(19) 中小企業診断士の業務

出典:専門業務型裁量労働制|厚生労働省

企画業務型裁量労働制

企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象とした裁量労働制です。本社・本店以外でも、企業の事業運営に関わる大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店も含まれます。

例えば、経営企画部、営業企画部、経理部、人事部、広報部などが該当します。

職種は特に限定されてはいませんが、工場での製造作業や、支店での営業など、本社や本店から指示を受けておこなっている業務については企画業務型裁量労働制を導入することはできません。

企画業務型裁量労働制の導入には、企業内で労使委員会を作り、企画業務型裁量労働制の実施のための決議をし、所轄の労働基準監督署への届出が必要です。

企画業務型裁量労働制

裁量労働制のメリットとデメリット

裁量労働制には企業と従業員それぞれにメリットとデメリットがあります。

(1)裁量労働制のメリット

企業にとって裁量労働制のメリットは、人件費と労務管理の負担軽減です。裁量労働制でも残業代や休日手当が生じないわけではありませんが、基本的には少ないため、人件費の総額があらかじめ算定しやすいというメリットがあります。

次に、従業員におけるメリットでもありますが、仕事の進め方が個人の裁量に任されているため、管理職による時間中の監督がありません。
例えば、テレワーク中にもちゃんと机についてPCに向かっているかとか、休憩時間を多く取っていないかなどを見る必要がないので、管理者の仕事も減らすことができます。

従業員としても、拘束される時間がないため、自分のペースで仕事ができます。例えば2営業日で終わらせる仕事を1.5営業日で終わらせて、空いた時間を自由に使うことができるというのは、裁量労働制の大きな魅力ではないでしょうか。

(2)裁量労働制のデメリット

裁量労働制には、メリットだけでなく、デメリットもあります。企業にとっては、裁量労働制を取り入れるために、労使委員会を設置し、決議を所轄労働基準監督署への提出するなど導入に当たっての手間がかかることです。

また、従業員においては「みなし労働」として、通常よりも多くの業務が割り当てられてしまい、実労働時間が過重労働となってしまうケースも。
裁量労働制では、時間外労働に対する残業代は原則として発生しないことになっていますが、「定額働かせ放題」という批判もあり、これから制度変更がおこなわれるかもしれません。

裁量労働制の残業代・休日手当はどうなる?

裁量労働制の場合、残業や時間外労働という概念が存在しないという認識を労働者側も雇用者側も持っている場合があるのですが、実は裁量労働制においても、以下のケースであれば雇用者側は残業代を支払う義務が生じます。

(1)残業代が生じる場合

裁量労働制では、実労働時間にかかわらずみなし労働時間で働くため、残業代はないように思われますが、実はそうではありません。以下のケースの場合、残業代が生じます。

・みなし労働時間を8時間超に設定した場合
・深夜勤務(22:00~翌05:00)をした場合

残業代については、通常賃金の25%以上の割増賃金を残業代として支払う必要があります。

(2)法定休日に勤務した場合

「法定休日」とは、労働基準法によって定められている休日で、以下の通り日数が決められています。

・最低でも週に1回
・4週間に4日以上

法定休日に働いた場合、35%以上の割増賃金を残業代として支払う必要があります。

裁量労働制は、労働時間が個人の裁量に任せられるので、柔軟な働き方が可能な代わりに、監督されずとも成果を出すための厳しい自己管理が必要となります。

裁量労働制だからといって、生活が不規則になったり、深夜や法定休日を狙って勤務することがないようにする必要があるでしょう。

当コラム内では、裁量労働制についての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。

この記事を書いたライター

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