士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

損金不算入とは?法人税額の算出には欠かせないルールをわかりやすく解説

HUPRO 編集部
損金不算入とは?法人税額の算出には欠かせないルールをわかりやすく解説

法人税額を算出する際に重要なのは、「益金」「損金」です。益金から損金を引いた金額に対して法人税率を乗することによって法人税額は導かれるからです。つまり、節税効果の観点から考えたとき、「損金をどれだけ大きくできるか」はとても重要な意味をもつことになります。

ところで、法人税額を算出する際には、「損金不算入」というルールが設けられていることをご存じですか?会計上は費用として計上されているのに、法人税法上は費用として扱うことができない、つまり、損金に計上できないものがあるのです。これでは、損金を大きくすることができないので、節税効果が得られず、企業にとっては非常に大きな課題となります。

そこで、今回はこの「損金不算入」について説明します。ぜひ最後までご一読ください。

損金不算入とは?

最初にお伝えしたように、損金不算入とは、会計上は費用計上されるのに、法人税法上は費用と認められないもののことです。

損金にできるだけ多くの内容を盛り込んだ方がより多くの節税効果が認められ、企業にとっては喜ばしいはずです。しかし、あまりに広範に損金への計上を認め、結果として企業が節税効果を受け過ぎることがあっては、税負担の公平性に反すると考えられます。

したがって、会計上は費用と計上されるもののうち一定範囲については、法人税法上の優遇を与えないために、損金不算入のルールが導入されているのです。

この損金不算入は、大きく2種類に分類できます。1つは、今期は損金にならないものの、一定の条件を満たした期に損金になるものです。もう1つは、今期だけではなく、永遠に損金にならないものです。

前者として扱われる場合には、やがて損金として扱えるので、いつかの節税効果として期待することができます。他方、後者として扱われる場合には、損益計算書の見栄えが悪くなるだけではなく、永久に節税効果も認められません。

今期は損金にならないものの、一定の条件を満たした期に損金になる損金不算入項目

いつかは損金になるが当期の損金とならない項目を、企業会計上は一時差異と言います。会計上の扱いと法人税上の扱いにおける違いが一時的に過ぎないことの基づきます。以下では、この一時差異に該当するものを紹介します。

①賞与引当金

賞与引当金とは、当期の労務の対価として賞与を支払う予定がある場合に、未だ賞与の支払いはされていないが当期の費用として計上するための引当金のことです。引当金には、退職給付引当金や環境引当金などいろいろな項目があります。

賞与は支払った期にしか損金に算入されないので、引当金を積んだ期は費用計上されるものの、損金不算入となります。実際に支出をした期において、損金として取り扱われます。

②税金

法人税、地方法人税、延滞税などについては、そもそも益金から損金を控除した所得該当金額に対して課せられるものです。したがって、損金として計上される余地はなく、損金不算入です。

これに対して、事業税については微妙な扱いとなります。というのも、事業税は1年間の損益を前提として計算され、決算後に納税処理が行われます。損益計算書レベルでは、その期に対応する事業税が計上されるので、支払う前に損益計算書に計上されます。これに対して、事業税が損金に算入できるのは支払った期なので、通常は翌期の損金として扱われます。つまり、事業税を損益計算書に計上した期においては、損益不算入としての扱いとも言えます。

事業税の損金算入についてはこちらの記事をご覧ください。
損金算入できる租税公課「事業税」とは

③通常よりも早く計上している減価償却費

固定資産の耐用年数は税法上規定があります。したがって、その税法上のルール通りに減価償却を行う場合には、損益計算書と損金との乖離は生じません。

ただし、企業の管理会計のために、耐用年数を税法上のルールとは異なった扱いにするケースがあります。例えば、社用車の耐用年数を6年ではなく3年と扱い、これを前提に減価償却を行うような場合です。この場合、ルール通りの6年よりも減価償却費は大きくなり、損益計算書に計上される額も増えますが、この処理は税法上は認められていません。

したがって、耐用年数を6年として計算した場合の償却費用との差額は、損金不算入として扱われます。

今期だけではなく、永遠に損金にならない損金不算入項目

来期以降も損金不算入として扱われる項目を、会計上は永久差異と呼びます。会計上の扱いと法人税法上の扱いが永久に異なるからです。これに含まれるものは以下の通りです。

①役員賞与

役員の賞与は、原則として損金不算入です。役員への賞与を損金として計上することを認めてしまうと、不当な節税を認めることになってしまうからです。例えば、企業の業績が高くなり過ぎた場合に、期末にかなりの額面の賞与を役員に払うことで法人税等の減額を狙うことができてしまいます。経営者からすれば通常の給与と同じような感覚かもしれませんが、これは合理性を超えた範囲の支給と考えられるので認められていません。

なお、すべての役員賞与が損金不算入になるわけではありません。このような税法ルールの潜脱が認められない以下のケースでは損金としての計上が可能となります。

事前確定届出給与:賞与の金額、賞与の支給時期をあらかじめ税務署に申告し、申告内容通りに賞与を支払った場合
業績連動給与:利益や株価など、客観的な指標に連動して賞与を支払うことが事前に定められ、その定め通りの額面を支給した場合

②交際費

交際費は、原則として損金不算入です。飲食店などで領収書をもらった分についてすべて交際費として計上し、かつ、これを損金として扱うことが許されてしまうと、法人税が不当に軽減される可能性があるからです。一般的に法人税関係で税務署と揉めるのはこの点です。

ただし、以下の一定の条件を充たす限りにおいて、損金としての計上が認められます。

会議費:会議のために支出したとされる費用のうち、1回あたり1人5,000円以下のものについては交際費として扱わず、会議費として損金に計上可能。
社外飲食接待費①:資本金が1億円を超える会社では、飲食を伴う交際費の1/2以下について社外飲食接待費として損金計上可能。1/2を超える部分については損金不算入。
社外飲食接待費②:資本金が1億円以下の会社及び自営業では、年間800万円以下、もしくは、飲食を伴う交際費の1/2の金額のうち有利な金額について社外飲食接待費として損金に計上可能。それを超える部分については損金不算入。

③寄付金

寄付金は、原則として損金不算入です。寄付金を無制限に損金扱いできるとなると、実体不明瞭な団体などに寄付をすることで法人税潜脱のおそれがあるからです。ただし、以下の条件を充たす限りにおいて、損金として計上できます。

国・地方公共団体に対する寄付:全額損金としての計上可能
上記以外の寄付についての損金上限額:資本金額×1/400 + 所得の金額×1/40

まとめ

以上が損金不算入のルールに関する説明です。損金として扱うことができないものにはいろいろありますが、各項目ごとに例外的扱いを許容したり、損金としての上限が設定されるなど注意すべき点がいくつかありました。

節税効果という観点からは、永久差異に分類される部分に留意すべきです。役員賞与や交際費については、後々取り返すこともできないので、場合によっては企業経営を左右しかねません。税務調査において不利な扱いを受けないように、損金不算入項目については十分に理解した上で、あらかじめ丁寧な取り扱いを心掛けておきましょう。

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:コラム・学び

おすすめの記事