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事業税とは?法人事業税を損金算入できるのはなぜ?

Hupro Magazine編集部 剱持
事業税とは?法人事業税を損金算入できるのはなぜ?

会社は、一般的に「法人税」を支払う義務を負います。その「法人税」は、厳密に言うと「法人税等」という名称で、「法人税」「法人住民税」「法人事業税」の3つの租税公課から成ります。

法人税等の一つである事業税は、他の法人税、法人住民税とは異なり、「損金算入」できるのが大きな特徴です。

では、そもそも事業税とは一体どのような税金なのでしょうか。詳しく解説していきます。

事業税・法人事業税とは?

事業税・法人事業税とは?

 事業税(法人事業税)とは、その名前の通り、法人が営む「事業」に課せられる税金です。

「事業」に課せられるといってもわかりづらいと思いますので、簡単に言うと、「法人が事業を営む上で、道路や港湾などの公共施設を利用したり、消防や警察などの公共サービスを受けているから、その経費の一部を、事業規模に合わせて負担してね」といった感じです。

事業税は地方税の一つなので、会社の所在地である各都道府県に対して税金を納めます。

また、事業税の税額は、所得に法人事業税率を乗じて計算されます。つまり、所得が赤字であれば、基本的には納める税金は発生しません。

ただし、資本金が1億円を超える法人は、外形標準課税が適用されるので、付加価値や資本金といった、「所得以外」 を基準に事業税が計算されることになります。

したがって、外形標準課税が適用される法人の場合は、赤字でも税金が課せられるケースがあります。

事業税・法人事業税は損金算入できる?なぜ?

 法人事業税は損金算入できる税金です。これは、法人税等を構成する租税公課の中で、唯一となっています。

「損金算入」というのは、法人税等の金額の基準となる「所得」を計算する際に、所得を減算することを言います。簡単に言うと、税金を計算する上で「費用として計上」することができるということです。

法人税や法人住民税も損金算入できた時代もあったようですが、今は法人税等の中で損金算入が認められているのは法人事業税だけです。

事業税・法人事業税の損金算入時期はいつ?

事業税・法人事業税の損金算入時期について、以下の3タイミングごとに解説していきます。

  • ①確定事業税
  • ②中間事業税
  • ③修正申告や更正で生じた事業税

①確定事業税

事業税を損金算入することができるのは、「申告書を提出した日の属する事業年度」です。

つまり、事業税を計算する際に、その申告書で損金算入できるのは 「前事業年度の事業税」で、その申告書で計算された事業税は、翌事業年度に損金算入することとなります。

ちなみに、「申告書を提出したものの、まだ税金を納めていない」という場合であっても、申告書を提出した日の属する事業年度において、損金算入されます。

②中間事業税

では、中間納付した事業税はどうなるのかというと、先程述べた通り、損金算入できるのは 「申告書を提出した日の属する事業年度」なので、その中間申告書を提出した事業年度に損金算入されます。

そして、①の確定事業税と同じく、未納であっても損金算入することができます。

①②をまとめると、ある事業年度に損金算入される事業税は、「前事業年度の確定事業税」と、「その事業年度の中間事業税」となります。

③修正申告や更正で生じた事業税

何度も繰り返しになりますが、事業税は「申告書を提出した事業年度」に損金算入されます。

修正申告の場合も同様で、修正申告で生じた事業税は、「修正申告書を提出した事業年度」に損金算入されます。

前期の修正申告書を、当期中に提出した場合であれば、①の確定事業税と同じ取り扱いなので、特に問題は発生しません。

しかし、問題となるのは、数年前まで遡って修正申告書を提出した場合です。

例えば、税務調査で3期前と2期前に売上の計上もれがあることが発覚し、それぞれ3期前と2期前の所得金額を増加修正しなければならない場合を考えてみましょう。

この場合、3期前の所得が増えるので、もちろん3期前の法人税、住民税、そして事業税の額も増えます。そして、2期前の所得も増えて、2期前の法人税等の額も増えます。

増加した事業税は、もちろん損金算入できるので、原則に従うと、「申告書を提出した事業年度」に損金算入されます。

しかし、増加した税金の負担をなるべく軽減するためには、増加した事業税を2期前、1期前の損金に算入して、税負担を減らしたい・・・と思いますよね。

こういった場合に備えて、きちんと通達で特例が用意されています。法人税について2期以上同時に更正をする場合には、納付すべき税額を見積もって、翌期の損金に算入することができます。(法人税基本通達9-5-2)

今回の例でいうと、3期前の修正申告で新たに発生した事業税は、2期前の損金に、2期前の修正申告で新たに発生した事業税は、1期前の損金に算入することができるというわけです。

少しマニアックな話になりますが、「事業税の外形標準」についてのみ更正が入った場合には、たとえ複数年の同時更正だったとしても、翌期の損金に算入することはできず、修正申告書を提出した事業年度の損金となります。(参考:法人税基本通達9-5-2 注3)

まとめ

少し小難いことも書きましたが、事業税は、原則「申告書を提出した事業年度」に「損金算入できる」少し特殊な租税公課です。修正申告の場合の特例は、頭の片隅にでも置いておきましょう。

ここに記載はしていませんが、税効果会計の対象になったりもする、なかなか攻略の難しい事業税。簡単な処理から徐々にマスターしていきましょう。

この記事を書いたライター

株式会社ヒュープロにてオウンドメディア「Hupro Magazine」のライティングなどを担当。大学法学部法律学科卒業後、銀行にてエネルギーや金属など"コモディティ"の取引、司法試験を中心とした資格試験予備校にてWEBマーケターとしての記事ディレクションなどを経て現職。法令や金融、資格試験の知識も活かしつつ、分かりやすくもためになる記事の作成に注力しています!士業や管理部門、FASなどの業界に就職・転職をご検討されている方は、ぜひ業界特化の転職エージェント「ヒュープロ」をご活用ください!
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