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貸倒引当金と貸倒損失の違いについて

HUPRO 編集部
貸倒引当金と貸倒損失の違いについて

みなさんは貸倒引当金や貸倒損失と聞くとどんなイメージ持たれるでしょうか?これらは売上の減少でも得意先の倒産でもありません。さらには会計に詳しい方ですと、「聞いたことあるけど、違いが分からない」状態の方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか?今回は、貸倒引当金と貸倒損失について、それぞれの目的・異同点・財務諸表への影響・得意先の状況の4つの観点から説明していきます。

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貸倒引当金・貸倒損失の定義と目的

貸倒引当金とは

貸倒引当金とは過去に発生した債権のうち、得意先から資金を回収できない可能性を事前に資産の減少として見積もっておくことです。一言でいえば「資産の再評価」です。え?資産の金額って1つじゃないの?と思った方もいると思います。資産の金額は1つですが、それは今の資産の価値です。誰も将来の価値は分かりません。そこで可能な限り「将来の資産の価値を測定して、今の金額より低い場合はそこまで減額させる」ことを目的とします。債権である以上、将来的にお金の流入が発生します。そのときに満額回収できないと困りますよね?その備えとして事前に将来に備えておくのです。

ただし、現時点で資産の価値が低いわけではないので、資産を計上した後に負債として減額して将来の資産の予想の価値にする。これが貸倒引当金の目的です。

貸倒損失とは

貸倒損失は当期に発生した債権で当期に回収できないことが分かったものは損失として計上することです。この目的は適正な損益計算です。

経理をやっている方はお仕事で次の仕訳をしたことがあると思います。売掛金100/売上100。これは100円の売上が発生したことにより将来100円の資金の流入があることを意味します。しかし得意先から20円回収できないことがわかったとしましょう。この場合当期の売上は実質的に80円になります。そこで貸倒損失20/売掛金20の仕訳をします。これにより、当期の利益に対するインパクトを80円にできます。

売掛金 100 / 売上高 100
貸倒損失 20 / 売掛金 20
→売掛金が20減り、利益となるのは実質80

上記の貸倒引当金と異なり、当期の売上の減少のため損失として計上します。「当期の利益を適正に計算する」ことは、先に示した「適正な損益計算」をすることになります。これが貸倒損失の目的です。

異同点

貸倒引当金と貸倒損失は共に「債権の回収不能」を表します。つまり資金が満額流入しないことを意味します。「得意先・債権・回収不能」この点において両者は同じです。

しかし貸倒引当金は未来の予想でありますが、貸倒損失は当期の実績である点において異なります。また、貸倒引当金は全ての会社に対して設定します。たとえ超お得意様であっても一般債権に対する引当金として数%設定します。一方で貸倒損失は貸倒れた会社に対してのみ適用します。そのため設定する数は少ないです。この点においても異なります。

また、少し細かい話になりますが貸倒引当金は、貸倒引当金繰入××/貸倒引当金××と仕訳します。貸倒引当金繰入は販売費及び一般管理費になります。貸倒損失は貸倒損失××/売掛金××と仕訳します。貸倒損失も販売費及び一般管理費に計上します。そのため、営業利益に影響する点で両者は同じです。一方で貸倒引当金は債権の一部を計上します。100円の売掛金に5円設定するイメージです。一部、破産更生債権として全額計上する場合もありますがこれは稀です。一方で貸倒損失は債権金額を全額計上します。100円の売掛金に貸倒損失100/売掛金100といったイメージです。このため、両者は計上する金額において異なります。

貸倒引当金勘定と貸倒損失勘定の財務諸表への影響

貸倒引当金は負債として計上します。そのため利益に対してインパクトがありません。一方で貸倒損失は費用として計上します。そのため、もろに利益にインパクトがあります。ここで損益計算に違いが発生します。貸倒引当金のポイントは過去に発生したものであるため、当期の損益計算に算入できない点です。損益計算とは当期に発生した収益(要は売上)と当期に発生した費用(要は経費)を対比させて利益を計算することです。

このことから、「資産に着目した勘定科目」であることが分かります。一方で貸倒損失は当期に発生した事象であるため当期の損益計算に算入しないわけにはいきません。しかし得意先との売上取引は終わっています。問題はお客様との取引それ自体ではありません。お客様が資金繰りを誤って当社に債務を払えないことが問題なんです。そのため売上の減少と同じインパクトを資産の減少を使用して仕訳します。このため貸倒損失は「損益に着目した勘定」であります。

得意先の状況

貸倒引当金の設定は得意先の債務の支払い状況により3つに分類します。

(1) 一般債権

1つは一般債権です。これは得意先の支払い状況が正常であることを意味します。簿記をやったことある方は「当社は売上債権に対して2%の引当金を設定している」という指示も見たことあると思います。まさにこの指示が一般債権です。ポイントは良好な会社ということです。

(2) 貸倒懸念債権

次は貸倒懸念債権です。これは得意先の支払い状況が危なくなってきている又はその予兆があることを意味します。簿記をやったことある方は「当社は貸付金に対して40%の引当金を設定した」という指示を見たことあると思います。まさにこの指示が貸倒懸念債権です。ポイントは良好な会社ではないけどまだ破産はしていないことです。

(3) 破産更生債権

最後に破産更生債権です。これは得意先の支払い状況がないことを意味します。簿記をやったことある方は「当社は貸付金を破産更生債権に分類した」という指示を見たことあると思います。この指示が破産更生債権です。ポイントは債権100%計上することと、実質的に100%回収不能であることです。

一方で貸倒損失は得意先の状況が危ないことを表します。もちろんこの取引だけで発生する債権ですから、すぐに倒産するとは限りません。しかし、「当期に発生した債務が当期に払えないことが確定する」とは短期的な資金繰りが著しく危ういことは明白です。取引は売上や仕入といった事象だけでなく、その後の資金繰りまで完結して1つの取引です。そのため、貸倒損失が発生した場合は得意先からの資金の回収に警戒信号が灯ったと思っていいでしょう。

まとめ

・貸倒引当金:現在の金額を将来の資産の予想の価値にする
・貸倒損失:当期の利益を適正に計算する
・貸倒引当金の設定は得意先の債務の支払い状況により3つに分類
 ①一般債権②貸倒懸念債権③破産更生債権

いかがでしたでしょうか。経理をやられている方にとっては「得意先の判断材料」として、簿記を勉強されている方にとっては「忘れないための理解の一助」としてすこしでもお役にたてたら幸いです。

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この記事を書いたライター

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