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減損会計とは?会計基準から具体的な処理の進め方まで解説!

HUPRO 編集部
減損会計とは?会計基準から具体的な処理の進め方まで解説!

簿記の勉強や実務を経験していると、「減損会計」という項目に出会うはず。基本会計業務とは異なり、特別な処理が求められる分野のため、苦手意識が強いという人も少なくないでしょう。

そこで、このコラムでは、減損会計とはどのようなものなのか、実務上の処理の手順について具体的に紹介します。実務上参考にされる会計基準についても解説するので、最後までご一読ください。

固定資産の減損会計とは

“固定資産の減損”とは、当該固定資産の市場価値の下落・収益獲得能力の低下などが原因で投資額を回収できなくなる現象のことを指します。そして、”固定資産の減損会計”とは、このような減損事象が発生した場面において、簿価(帳簿価額)を減額して当期の損失とする会計処理のことです。

よくある勘違いとして注意しなければいけないのは、固定資産の簿価よりも損失を計上されることはないという点です。固定資産の減損会計とは、あくまでも固定資産の簿価の切り下げの方法のこと。将来相当な損失が見込まれるからと言って損失を引当計上する会計基準ではありません。

減損会計は下記2つの基準に沿って処理されます。

固定資産の減損に係る会計基準
固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

参照:固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第6号)

「会計基準」と言われると、「固定資産の減損に係る会計基準」だけを指すようにも思えますが、実務で参照するのは「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」という実際上の運用があるので、両者をまとめて「会計基準」と呼んでいます。なお、”会計基準”というのは処理の原則がぼんやりと書いてあるイメージで、”適用指針”というのは具体的にどのように会計処理をするのか解説や設例が載っているものという理解で問題ありません。

”固定資産の減損に係る会計基準及び適用指針”の対象になるのは固定資産のみです。そして、他の基準で減損処理方法が定められている場合については、そちらが優先的に適用される点が注意ポイント。たとえば、”金融商品に係る会計基準”における金融資産・”税効果会計に係る会計基準”における繰延税金資産は、固定資産減損ルールの対象外となります。

減損会計の具体的な進め方

減損会計は「資産の収益性が低い」という事情だけで処理対象になるわけではありません。特に、上場企業・大会社では減損会計を実行する義務が発生するため、会計基準で定められた適正プロセスを遵守する必要があります。

同時に、回収可能性が低下した資産すべてを減損会計の対象に含めるとなると、実務上の作業が膨大に。これでは、企業の経理部門の非効率化を招くため、一定範囲の資産についてのみ減損会計の対象とするという運用が摂られることになります。

減損会計は、以下のステップによって厳格な手続きに基づいて処理されるものです。

①固定資産のグルーピング
②減損の兆候の把握
③減損損失の認識の判定
④減損損失の測定

このような流れを経た結果、減損会計の会計上の処理が行われ、表示が決定されることになります。それでは、減損会計の個別ステップについて具体的に見ていきましょう。

減損会計のステップ1:固定資産のグルーピング

減損会計では、まず固定資産を一定のグループに分ける作業が必要となります。グルーピングは、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位を区分として実施するのが一般的です。また、減損会計の為だけに資料を作るのではなく、会社が管理会計として採用しているグループは最小の単位の一つと言えます。

例えば、飲食店について減損会計のグルーピングについて考えてみましょう。店舗別に会社が損益管理をしている場合は店舗が最小の単位です。これを超えて、例えばエリアごとに管理することは原則として認められません。なぜなら、店舗がキャッシュ・フローの最小単位であり、複数店舗が介在するエリアは各キャッシュ・フロー単位の複合物に過ぎないからです。

その一方で、企業によっては、複数の飲食店営業所をまとめて損益管理をしているケースもあるでしょう。もし、その営業所群それぞれがキャッシュ・フローを生み出す単位だといえる場合には、個別の飲食店ではなく、営業所群というグループを最小の単位とすることもできます。

このグルーピングがあまりにも大きすぎると損益が相殺されてしまい減損会計の前提が崩れてしまうため、減損会計適用初年度はグルーピングについて監査法人とよく相談をしてから対象範囲を確定させましょう。

減損会計のステップ2:減損の兆候の把握

グルーピングが決定すると、期末時点で減損の兆候があるかどうかを確認します。分かりやすく表現すると、減損の兆候とは、””減損が生じる可能性が認められる事象””のことです。

そもそも、減損会計の実施対象は”キャッシュ・フローの最小単位”に限定されていますが、その最小単位内に存在するすべての資産を対象に減損会計を実施(キャッシュ・フローの計算・割引計算など)するのは実務上不可能です。

したがって、「最小単位内の資産について減損の兆候が見受けられるか」という観点から減損会計の対象をさらに一定数ふるいにかけるステップを踏まなければいけません。

“減損の兆候”として「固定資産の減損に係る会計基準及び適用指針」に掲げられている具体的事象として次の4つが参考になります。

①資産または資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みであること
②資産または資産グループの使用されている範囲または方法について、当該資産または資産グループの回収可能価額を著しく低下させるような変化が生じたか、あるいは生ずる見込みであること
③資産または資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したかまたは悪化する見込みであること
④資産または資産グループの市場価格の下落

各減損兆候についてもう少し踏み込んで確認していきましょう。

営業活動から生じる損益またはキャッシュ・フローが継続マイナス

減損の兆候の対象になる”営業活動から生じる損益またはキャッシュ・フロー”とは、企業の管理会計区分をベースに判断されます。

また、”継続マイナス”の判断については、原則として2期連続赤字もしくは赤字のグループが来期以降も明らかに赤字であることが求められます。つまり、過去2期連続で赤字であったとしても、当期の見込みがプラスであることが明らかなケースでは、減損の兆候は存在しないという判断が妥当でしょう。

使用範囲・方法について回収可能価額の低下・減少見込み

グルーピング範囲内の資産について、事業廃止・再編成が生じた場合には、原則として回収可能価額が低下した事象に該当すると考えられます。ただし、例外的に事業の再編成が明らかな収益性の向上に繋がると判断できるような場合には、減損の兆候は認められません。

また、従来予定したものとは異なる用途に転用する場合、また、早期売却を実施する場合も減損の兆候が認められるのが原則です。ただし、転用方法によって更なる収益増加が見込まれるケースでは、減損の兆候は否定されます。さらに、当該資産が遊休状態になっている場合・将来の使用用途が不明瞭な場合にも減損の兆候が認められます。

このように、減損の兆候の判断は、具体的な企業の経営方針や動向によって常に判断が分かれるものです。画一的な基準のみによって減損兆候の有無を判別できないので、かならず監査法人等からの適切なアドバイスを参考にしてください。

経営環境の悪化

企業活動をとりまく環境が著しく悪化した場合にも減損の兆候が認められる可能性があります。

たとえば、原材料価格の慢性的な高騰・市場における企業ブランド価値の普遍的低迷・別の技術革新による遅れ・規制緩和等の社会情勢に起因する環境悪化などの外部要因がこれに該当します。

資産・資産グループの市場価格の下落

市場価格の下落率を根拠に減損の兆候を判断できるケースがあります。

たとえば、市場価格が帳簿価額から50%程度減少した場合には、減損の兆候があると判断するのが一般的です。もっとも、企業の実務上の判断次第では、下落率について別の基準を定めることは否定されません。たとえば、市場価格の下落率が30%程度でも減損の兆候ありと判断しても差し支えありません。

さらに、固定資産の場合には、市場価格を用意に算定できないケースも少なくないでしょう。この場合には、実勢価格・査定価格・路面価などを参考に、市場価格の下落率を推定することになります。

減損会計のステップ3:減損損失の認識の判定

減損の兆候がありとされたグループについては、続いて、”減損損失の認識”を判定するステップに進みます。つまり、減損会計を実施するかの最終判断をこの段階で行うということです。

そのグループが将来どれくらいのキャッシュフ・ローを生み出すかを見積もります。キャッシュ・フローですので、損益で管理している場合はここに減価償却費等の”現金支出を伴わない科目”を足しこむ作業が行われます。

最大20年間のキャッシュ・フローを見積もるのですが、この見積りについて妥当であるかどうかを監査法人にチェックされます。この将来キャッシュ・フローの見積りに対する監査レベルは年々厳しくなっており、「よほど回復計画に合理性がある」と認められない限りは、減損損失を計上することが求められるのが現在のトレンドです。これは、「今まで予算と乖離して損失を計上してきたのに、なぜ来期以降は予算達成できると言えるのですか?」と鋭く突っ込まれるため、誰がどう見ても回復可能である計画でなければ否定されることとなります。

減損会計のステップ4:減損損失の測定

今までのステップで減損を認識することとなった資産グループについては、最終的にどの程度減損損失を計上しなければならないかを計算します。これが減損損失の測定です。

先ほど計算されたキャッシュ・フローと簿価との差額を減損損失として計上するのですが、キャッシュ・フローについては、「来年獲得できるもの」と「20年後獲得できるもの」とでは確実性が全く異なるものですので、割引計算が前提です。たとえば、割引率が5%だとすると、20年後に1億円獲得できる場合は1億円を20回1.05で割ることで計算されます。

このように計算された正味現在価値のキャッシュ・フローと簿価との差額を特別損失として減損損失を計上します。固定資産についても直接減額または減損損失累計額として簿価から差し引きます。

減損会計が必要な会社とは

すべての企業に減損会計が義務付けられているわけではありません。減損会計が義務付けられている企業・任意で減損会計を実施している企業が混在している状況です。

たとえば、減損会計が必要な企業は次をご参照ください。

・上場会社
・上場はしていないが売上数百億等の一定規模以上ある会社
・中小企業で管理会計に力を入れている会社

上の二つは、公認会計士等の外部の監査人と契約している会社で、最後の中小企業については、固定資産の重要性が高く、かつ社長の経理に対する意識が高い会社が該当するでしょう。

まとめ

減損会計では、将来における回収可能性を現在の視点に引き直して算出することが求められるため、会計業務のなかでは高い難易度レベルの業務に位置付けられます。作業範囲の確定から算定までの流れを今一度ご確認ください。

今後、会計業務でのキャリアアップを目指していくと、いつかは減損会計業務を任されることもあるはずです。その時のために、減損会計に係る会計基準や「兆候の確認、減損の認識、測定、開示」という事務処理上の流れについて押さえておきましょう。

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