税理士資格があれば、手に職があるという面で転職に有利になるのは言うまでもなく、そのメリットについては広く知られているのでもはや説明不要ともいえます。しかし「税理士資格さえあれば無条件に転職に有利なのか?」というと、昨今では経営コンサルティング業務等の税理士資格がなくても経営等をサポートできる職業があるため、少し事情が変わってきます。そこで今回は、税理士資格が転職にもたらすメリットや資格を活かせる転職先について、業界動向を交えて解説していきます。
「税理士に将来性はないのかも…」と懸念して転職しようか迷っている方も中にはいるのではないでしょうか?しかし実際は、そんなことありません。
税理士業界において現在問題になっているのは、将来性よりも「未来の税理士候補」が不足していることです。税理士の登録者数は増加傾向にある一方で、税理士試験の受験者数は減少しています。では税理士の合格率が上がったのかといえば、令和5年度を除きそんなこともありません。
背景としては、大学院税法科の修士課程修了者、税務署OBなどの「試験免除者」、公認会計士、弁護士の有資格者による登録が登録数の増加を支えていることがあります。
そして、税制が年々更新・複雑化されているため、引き続き、税理士の社会的ニーズは高い状態にありますので、有資格者は様々な職場から求められているのです。
税理士の需要が高いとはいえ、長く続く不景気によって、税理士有資格者の採用の数は常に多いというわけではないのが現実です。近年の人工知能の進化で、税理士業務がAIや機械にとられるのではないかという懸念もあるでしょう。
しかしそれらに取って代わられるのは基礎的な計算や処理の部分が多く、税理士としての知識を活かせる仕事は、まだ暫く人にしかできない業務と言われています。
ですので、ただ資格があることをアピールするのではなく、「税理士資格を持っている上で何ができるのか」といった部分のアピールが重要になってきます。
税理士資格は国家資格の中でも難易度が高く、知名度もあるので、転職や就職に有利に働くことは周知の事実でしょう。
しかし、専門性が高いこともあり、その理由についてはあまり知られていないかもしれませんので、5つにまとめてみました。
企業にとって税理士は、税金や会計の専門家であり、その知識やスキルを持つ人材は非常に重要です。また、税務や会計の問題が発生した際には迅速かつ正確な対応が求められるため、税理士資格を持つ人材は労働市場において重宝されるのです。
税理士は税金や会計に関する知識だけでなく、経営管理や法務の観点についても幅広い知識を持っていることが期待されます。そのため、ビジネス全般に関するアドバイスや意見を求められやすい立場にあります。また、企業の経営戦略に沿った会計システムを設計したり、法的な問題に対処したりすることが求められることもあります。
税理士は法律に基づいた専門家であるため、企業にとっては法的リスクを回避する上でも重要な存在です。税務や会計に関する問題が発生した場合には、税理士が適切な解決策を提供することができます。さらに、税務に関する法律や規制の変更への適切なアドバイスが求められます。
税理士は、会計や税務に関する知識を持つだけでなく、コミュニケーション能力や説明力も求められるため、幅広い業種・職種での活躍が期待されます。たとえば、企業の財務担当者や経理担当者、あるいは行政や法務関係の中の税務・会計に関する職種での活躍ができます。
また、業務の専門性以外にも税理士資格の取得を根拠として、正確な計算力や論理的な記述力が必要となるため、基本的な能力の高さもアピールできます。また、合格のために長期にわたって、目標に向かって粘り強く努力を重ねることができるといった点も十分アピールできるポイントでしょう。
税理士は、業務に対する責任や職業倫理に基づいた行動を求められます。そのため、企業にとっては法令遵守や社会的責任に基づく経営が求められる現代社会において、税理士との協力が不可欠であると言えます。
税理士に資格登録するためには、税理士試験に合格するのみならず下記のような一定の実務経験を2年以上満たす必要があります。
例えば、一般企業の経理部に勤めながら勉強して税理士試験に合格した場合があるとします。この場合は勤め先での仕事を通じて必要な実務経験を満たしていれば税理士資格に登録することが可能です。
しかし、このようなケースの場合、独自の経理や税務処理については実務経験の強みがあるかもしれませんが、それが社外でも役に立つかどうかは不透明となります。
他にも、会計事務所によっては記帳や経理代行や申告書作成の補助など単調な仕事ばかりをスタッフに割り振るところもあります。このような場合は限定した仕事しかしていないため、実務要件を満たしても税理士資格者として一人前とは言い難いです。
税理士有資格者に汎用性の高いスキルを求めている企業にとって、そのような税理士は期待値に達しない形になる可能性があります。
公認会計士・弁護士・税務署などに勤めて一定条件を満たした者は、手続きをすることで税理士資格を登録できます。
この場合、税理士資格を保有はできますが、実務経験という意味では一般的な税理士からややかけ離れたものです。
このように他資格の保有者が登録制度を経由して税理士資格を登録した場合は、資格と実務経験が直結していないと考えられるため、よほど特殊な経歴か企業側のニーズが無い限り転職に有利になりにくくなります。
転職においては、年齢が上がるほどそれまでの実務経験がシビアに問われるようになります。それは税理士資格があったとしても同じことで、たとえ税理士資格を保有していても年齢が高い場合は資格に加えて過去にどのような仕事に取り組んできたか、経験や実績がより一層求められます。
税理士の転職市場では特に40代後半以上になるとその傾向が顕著になります。
若い世代であれば実績や実務経験の少なさを大目に見てもらえるケースもありますが、その年齢に相応しい実務経験や実績が乏しい場合は、税理士資格を持っていても転職に活かしきれないこともあります。
たとえ税理士としての経験が十分にあって実績も申し分無いとしても、全くの異業種に転職する場合は税理士資格が必ずしも有利とはいえないケースもあります。
例えば、会計事務所の勤務税理士から一般企業に転職する場合があるとします。
この場合、企業によっては自社の業界に深い見識を持っていたり特殊な税務に精通している税理士を求めていることもあります。このように一般企業への転職は、税理士資格のみならずこういった企業側の独自のニーズを満たすプラスアルファの条件が求められることも多いため、税理士資格は有利になりにくくなります。
税理士の資格をキャリアチェンジに活かしきれないケースもご紹介しましたが、あくまで限定的なケースであり、税理士を募集する求人は数多く存在します。代表的な6つの転職先について、解説していきます。
税理士法人や会計事務所は、税務に関する専門知識を持った人材を必要としており、税理士の転職先として最も一般的な選択肢となっています。税務申告や監査業務など、税務に関する業務に従事することが多く、税務に関する幅広い知識を身に付けることができます。また、経理や財務に関する業務も多岐にわたり、税務以外の業務にも携わることができます。
国際的な税務ルールに精通した税理士は、外資系企業のグローバルなビジネス展開において重要な役割を担うことができます。国内外の税務に詳しく、異文化に対する理解も求められます。海外出張や駐在の機会があり、グローバルなキャリアを築くことができます。
そのため、昨今では外国語を話せる税理士が重宝されております。
銀行や証券会社などの金融機関において、税務に関するアドバイザーとして活躍することができます。金融商品の税務処理や顧客への税務アドバイスを行い、顧客からの信頼を得ることができます。金融商品の知識が求められるため、金融業界での経験があると有利です。
また、銀行等の顧客に対して、相続や事業承継に関する提案をすることも可能ですので業務の幅は広がります。
企業内経理部門には、会計や税務に関する業務を担当する人材が必要です。税理士は税務申告や税務リスクの管理など、企業内での税務に関する業務を担当することができます。また、財務分析や予算管理など、経理業務全般に携わることができます。
コンサルティングファームは専門性が分かれていますが、税理士の資格を有していてキャリアが活かせる分野としては、一般的な財務・会計や、企業再生系(事業継承、組織再編、事業再生、M&A)があります。
また、中小企業では近年、社長の高齢化により、事業承継の問題が深刻化していてM&Aに注目が集まるようになりました。よって、組織再編税制についての知識や判断力だけでなく、いかに円滑に物事を進められるかが試されます。
最近では税理士としてベンチャー企業に転職する方もいます。理由としては、スタートアップのために税務のみではなく、経理や財務など幅広い業務を任されたり、CFOや経理部長として、直接経営に参画できる場合もあります。また、上場を目指す会社が成長していくほどやりがいも感じやすいでしょう。
ヒュープロでは、税理士の資格をもった方の転職サポートをさせていただいております。皆さんが次に目指すべきキャリアの方向性や転職の必要性などカジュアルにご相談を承っておりますので、ぜひご相談ください。
最後に、税理士資格をお持ちの方にオススメの転職先として、幅広い経験を積めるシーズ税理士法人をご紹介します!
シーズ税理士法人は東京都中央区にある、2021年10月に大手税理士法人マネージャーの若手税理士4名が創設した税理士法人です。顧問サービスやコンサルティング業務だけでなく、起業サポートや国際税務、事業承継・資産承継サポートのほか、「バチャコモ」という個人事業主等の顧問税理士を求めていない方に対するオンラインのサブスクリプション型の税理士サービスも提供しています。また、個人事業主から外資系企業まで幅広く対応しているので、税務のみならず幅広く今後活躍できる知識を得ることができます。
ご紹介したような幅広い業務を展開しているのがシーズ税理士法人の特徴で、税理士としてのスキルの幅を広げることができます。また、税理士業界歴10年以上の税理士のもとで働くことができ、教育体制も充実していますので、経験に自信がないという方でも成長できる環境といえます。
シーズ税理士法人について、詳しい情報を確認されたい方は、以下より事務所様のサイトをご覧ください。
シーズ税理士法人│HP
本記事では転職において税理士資格が有利に働く理由や活かしきれないケース、税理士の転職先について解説しました。
もちろん、全ての転職活動において税理士資格を活かせるとは言い切れませんが、税理士の需要は依然として高いので、資格を活かしにくいケースとご自身のキャリアプランに当てはまっていなければ気にする必要はありません。
また、活かしにくいケースに当てはまっているとしても、追加で必要なスキルや知識を持っておけば解決するケースがほとんどです。
税理士で転職を検討中の方やこれから税理士を目指して勉強中の方は、税理士資格を取ったからといってそこに安座せず、広く必要とされる人材となるべく、常に実務経験と専門知識を積み上げておくことが大切です。