税理士資格があれば転職に有利になるのは言うまでもなく、そのメリットについては広く知られているのでもはや説明不要ともいえます。しかし「税理士資格さえあれば無条件に転職に有利なのか?」というと、少し事情が変わってきます。そこで今回は税理士資格があっても転職で有利にならない場合について解説していきます。
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「税理士に将来性はないのかも…」と懸念して転職しようか迷っている方も中にはいるのではないでしょうか?しかし実際は、そんなことありません。将来性よりも、税理士業界において現在問題になっているのは、税理士の登録者数が増加傾向にあるものの、税理士試験の受験者数は減少していることです。では税理士の合格率が上がったのかといえばそんなこともありません。背景としては、大学院税法科の修士課程修了者、税務署OBなどの「試験免除者」、公認会計士、弁護士の有資格者による登録が登録数の増加を支えています。そして、税理士の業務内容は税制が年々更新・複雑化されたりとこの流れについていける人の需要が高まっています。
税理士の需要が高まっているとはいえ、長く続く不景気によって企業から税理士有資格者採用の数も多くはないのが現実です。近年では、人工知能の進化で、AIや機械にとられるのではないかという懸念もあるでしょう。よってただ資格があることをアピールするのではなく、「税理士資格を持っている上で何ができるのか」といった部分が重要になってきます。
税理士資格を持つことは、転職や就職に有利に働くことが多いです。しかし、その理由について5つにまとめました。
企業にとっては、税理士は税金や会計の専門家であり、その知識やスキルを持つ人材は非常に重要です。また、税務や会計の問題が発生した際には迅速かつ正確な対応が求められるため、税理士資格を持つ人材は労働市場において重宝されるのです。
税理士は、税金や会計に関する知識だけでなく、経営管理や法務の観点からも幅広い知識を持っていることが期待されます。そのため、企業内でのビジネス全般に関するアドバイスや意見を求められやすい立場にあります。また、企業の経営戦略に沿った会計システムを設計したり、法的な問題に対処したりすることが求められることもあります。
税理士は法律に基づいた専門家であるため、企業にとっては法的リスクを回避する上でも重要な存在です。税務や会計に関する問題が発生した場合には、税理士が適切な解決策を提供することができます。さらに、法律や規制の変更に対しても、適切なアドバイスを提供することが求められます。
税理士は、会計や税務に関する知識を持つだけでなく、コミュニケーション能力や説明力も求められるため、幅広い業種・職種での活躍が期待されます。たとえば、企業の財務担当者や経理担当者、あるいは行政や法務関係の職種などで活躍できます。
また、業務の専門性以外にも税理士資格の取得を根拠として、正確な計算力、論理的な記述力が必要となるため、基本的な能力の高さもアピールできます。また、合格のために長期にわたって、目標に向かって粘り強く努力を重ねることができるといった点も十分アピールできるポイントでしょう。
税理士は、自身の業務に対する責任感が強く、職業倫理に基づいた行動をすることが求められます。そのため、企業にとっては法令遵守や社会的責任に基づく経営が求められる現代社会において、税理士との協力が不可欠であると言えます。
税理士に資格登録するためには、税理士試験に合格するのみならず下記のような一定の実務経験を2年以上満たす必要があります。
例えば、一般企業の経理部に勤めながら勉強して税理士試験に合格した場合があるとします。この場合は勤め先での仕事を通じて必要な実務経験を満たしていれば税理士資格に登録することが可能です。
しかしこのようなケースの場合、勤め先企業独自の経理や税務処理については実務経験の強みがあるかもしれませんが、それが社外でも役に立つかどうかは不透明となります。
他にも、会計事務所によっては記帳や経理代行や申告書作成の補助など単調な仕事ばかりをスタッフに割り振るところもあります。このような場合は限定した仕事しかしていないため、実務要件を満たしても税理士資格者として一人前とは言い難いです。
転職となれば全く違う仕事に就くため、汎用性の高い能力が求められてきます。
したがって、このような特殊な環境や限定した仕事のみで実務経験を積んで税理士資格を取得した場合は、転職にあたって税理士資格が有利になりにくくなります。
公認会計士・弁護士・税務署などに勤めて一定条件を満たした者は、手続きをすることで税理士資格を登録できます。
この場合、税理士資格を保有はできますが、実務経験という意味では一般的な税理士からややかけ離れたものです
このように他資格の保有者が登録制度を経由して税理士資格を登録した場合は、資格と実務経験が直結していないと考えられるため、よほど特殊な経歴か企業側のニーズが無い限り転職に有利になりにくくなります。
転職においては、年齢が上がるほどそれまでの実務経験がシビアに問われるようになります。それは税理士資格があったとしても同じことで、たとえ税理士資格を保有していても年齢が高い場合は資格に加えて過去にどのような仕事に取り組んできたか、経験や実績がより一層求められます。
特に転職市場では30代後半から40代以上になるとその傾向が顕著になります。
若い世代なら実績や実務経験の少なさを大目に見てもらえるケースもありますが、その年齢に相応しい実務経験や実績が乏しい場合は、年齢が上がるほど転職において税理士資格は有利になりにくくなります。
たとえ税理士としての経験が十分にあって実績も申し分無いとしても、全くの異業種に転職する場合は税理士資格が有利にとはいえないケースもあります。
例えば、会計事務所の勤務税理士から一般企業に転職する場合があるとします。
こうした場合、企業によっては自社の業界に深い見識を持っていたり特殊な税務に精通している税理士を求めていたりします。このように一般企業への転職は、税理士資格のみならずこういった企業側の独自のニーズを満たすプラスアルファの条件が求められることも多いため、税理士資格は有利になりにくくなります。
税理士法人や会計事務所は、税務に関する専門知識を持った人材を必要としており、税理士の転職先として最も一般的な選択肢となっています。税務申告や監査業務など、税務に関する業務に従事することが多く、税務に関する幅広い知識を身に付けることができます。また、経理や財務に関する業務も多岐にわたり、税務以外の業務にも携わることができます。
国際的な税務ルールに精通した税理士は、外資系企業のグローバルなビジネス展開において重要な役割を担うことができます。国内外の税務に詳しく、異文化に対する理解も求められます。海外出張や駐在の機会があり、グローバルなキャリアを築くことができます。
銀行や証券会社などの金融機関において、税務に関するアドバイザーとして活躍することができます。金融商品の税務処理や顧客への税務アドバイスを行い、顧客からの信頼を得ることができます。金融商品の知識が求められるため、金融業界での経験があると有利です。
企業内経理部門には、会計や税務に関する業務を担当する人材が必要です。税理士は、企業内での税務申告や税務リスクの管理など、税務に関する業務を担当することができます。また、財務分析や予算管理など、経理業務全般に携わることができます。
コンサルティングファームは専門性が分かれていますが、税理士の資格を有していてキャリアが活かせる分野としては、一般的な財務・会計や、企業再生系(事業継承、組織再編、事業再生、M&A)があります。
また、中小企業では近年、社長の高齢化により、事業承継の問題が深刻化していてM&Aに注目が集まるようになりました。よって、組織再編税制についての知識や判断力だけでなく、いかに円滑に物事を進めれるかの力が試させられます。
最近では税理士としてベンチャー企業に転職する方もいます。理由としては、スタートアップのために税務のみではなく、経理や財務など幅広い業務を任されたり、CFOや経理部長として、直接経営に参画できる場合もあります。また、会社が成長していくほどやりがいも感じやすいでしょう。
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本記事では転職において税理士資格があっても有利にならない場合についてご説明しました。
改めて整理すると以下のような場合となります。
・実務経験が特殊または乏しい
・他資格から税理士資格に登録した
・年齢が高い
・異業種に転職する
ただし、今回ご紹介したケースはあくまで税理士資格が転職で有利に「なりにくい場合」とご理解ください。
税理士は会計税務関連の資格の中でも公認会計士と並ぶ最難関の資格です。どんな仕事でも必ず会計税務は必要となるため、税理士の活躍の場は広くたくさんあります。従って、その専門家の証である税理士資格や税理士科目を保有していること自体は総じて転職において有利といえるでしょう。
大事なことは税理士資格を取ったうえでどのようなキャリアを積んでいるかという点です。
税理士で転職を検討中の方やこれから税理士を目指して勉強中の方は、税理士資格を取ったからといってそこに安座することなく、広く必要とされる人材となるべく常に実務経験と専門知識を積み上げておくことが大切です。