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人事制度設計の目的とは?具体的にどのように設計すれば良い?

HUPRO 編集部
人事制度設計の目的とは?具体的にどのように設計すれば良い?

「これからの時代は、より実態にフィットした人事制度が必要だ」と良く言われます。しかし、人事制度の設計は具体的にどのようにすれば良いか悩ましいものです。本記事では、人事制度の目的や設計について解説します。

人事制度とは

人事制度とは、経営資源である「人材」をどのように活用するかという事についての組織のルールです。
人事制度と一口に言っても、等級、評価、報酬、昇格・降格といったいわゆる社員への処遇をどうするかといった制度もあれば、有給休暇や産休や育休といった労務管理に関するものや、福利厚生や人材教育などもあります。

処遇に対する人事制度とは

社員の職掌を定め、その働きをどう評価するかという処遇に対する人事制度は大きく分けると以下の4つになります。いずれも社員が日々働く上でのモチベーションを高めたり引き下げたりする要因になるものです。

(1)等級

会社におけるランクのこと。例えば部長や課長、係長といった役職も等級です。会社によって様々な職位の呼び名があり、士業の事務所ではアシスタントやプロパー、パートナーなどカタカナ名の呼び名も多く使われます。
等級を定めるにあたり、等級ごとに求められる能力や職務、役割などについて別途定めます。

(2)評価

わかりやすいのは営業の契約が○件、契約金額が○円といったものです。良い評価を得ることにより等級が上がるという制度設計が成されます。
適切な評価制度を構築することにより、社員の目標達成へのモチベーションも高めることもできますが、不公平感のある評価体系であれば、組織に対しての不満もたまってしまいます。

(3)報酬

いわゆる「賃金体系」です。等級や評価によってどのように給与や賞与を定めるかというだけでなく、時間外勤務や退職金などについてもこちらのカテゴリに入ります。
従業員にとってはもちろん多い方がモチベーションが高まりますが、企業にとっては多いほど固定費が上がるということに。人材開発の上での「投資」として、経営サイドと従業員サイドの納得感のある報酬にする必要があります。近年は外資系が多額の報酬で優秀な人材を引き抜くという事例も頻発しており、他の従業員との公平感との差をどう埋めるかも悩ましい問題です。

(4)昇格・降格

社員をどう(2)評価して(1)等級を登らせるかという事を定めます。しかし、昇格しっ放しでその社員が何か不祥事を起こした際にもそのままということであれば、他の従業員への示しがつきませんので、降格(や懲戒)のルールについても定めておく必要があります。

人事制度設計は経営戦略制度に沿って立てる

企業における戦略とは「ヒト」「モノ」「カネ」をどう使うかというところに集約されますが、人事制度設計も企業戦略に合わせて「ヒト」という資源をどのように活用するかというところから設計する必要があります。

例えば、営業部門を強化したいのに、管理部門の方が人員配置が多かったり、営業成績に対するインセンティブが少なかったり、評価の権限も低かったりすると、そもそも会社の意向に反して優秀な人材ほど管理部門に行きたいと思ってしまうでしょう。

かといって、営業の成績を余りにも重視した評価体系に偏りすぎると、今度は営業成績のためにコンプライアンス違反のような事をする社員が出てくるかもしれません。

つまり、会社としてどこを重視するかによって人員配置や評価体系を作るのはもちろん必要ですが、バランスが求められるということです。

コンプライアンスもそうですが、労基法や安衛法など法的に外せないラインがあります。その線引きを行った上で、どのように人材を配置し、育てていくかという人事制度設計には非常に高度なスキルが必要になるのです。

今まで人事部門は大企業であればあるほど「所詮は人事(ヒトゴト)」と揶揄されるようなこともありましたが、逆に考えると、人事のプロフェッショナルになることによって、企業により多くの利益をもたらすようになれれば、頭一つ以上抜きんでる人材になれるでしょう。
戦略人事については以下の記事でも解説しています。併せてぜひご一読ください。

《関連記事》

人事制度は企業の成長や社会情勢に伴う見直しが必要

人事制度は一度作ったらおしまいではありません。
例えばスタートアップで社員数が10名の時に設計した人事制度が、事業の成長に伴い社員数が100名になった時に同じような人事制度で良いかというと、そうではないのは感覚的にもおわかりでしょう。

より多くの人を雇用するということになると、今までは阿吽の呼吸で通じていたルールも明文化していく必要があります。従業員の雇用形態や職掌による権限や予算管理、評価制度などをしっかりと定めなくてはなりません。

また、ここ数年「働き方改革」で企業は人事制度の見直しを迫られています。
働き方改革は、出発点は素晴らしいですが、実運用面までしっかりとフォローしてさらに生産性を高めるというところまでは、多くの企業はまだたどり着けていません。
付け焼刃のように就労規則のみを法律に合うように変更している場合は、いずれほころびが出てしまって、改定を迫られるでしょう。

まとめ

人事規定とは、単なる決まり事を作るだけではありません。前述の通り企業戦略の一環としてとらえる必要があります。
多くの企業が、なんとか法律の抜け穴を探し出して従業員を働かせようとしているような状況です。しかしそれでは、もはや優秀な人材は確保できません。かつては日本のトップクラスの頭脳が集うと言われた霞が関の界隈も、離職者が多くなっているという状況がそれを如実に示しています。

しかし、逆にトップダウンで決定の早いスタートアップやベンチャー企業がもし本当に従業員のことを考えた人事制度を設計できれば、大企業にも打ち勝つアピールポイントになります。
人事制度を経営面から考えると、ついコストカットの方面に目がいきがちです。しかし自社がほしい人材はどのような人事制度なら採用できるのか?という視点でぜひ見直しされることをおすすめします。

この記事を書いたライター

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