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消費税の課税事業者とは?条件や届出など基本を解説

HUPRO 編集部
消費税の課税事業者とは?条件や届出など基本を解説

私たちが買い物などで支払う消費税。消費税は、給与天引きされる所得税とは異なり、事業者を通じて間接的に納税する仕組みとなっています。受け取った消費税を納める事業者が「課税事業者」です。今回は、課税事業者について条件や届出など、基本的な事柄を解説します。

消費税の仕組みについて簡単におさらい

課税事業者とは、消費税を国に納める義務が発生する事業者のことです

そこでまず「消費税」の仕組みについて簡単におさらいしましょう。
消費税は、日本国内において事業者が事業として対価を得て行う取引のほとんどが課税対象となります。例えば、資産の譲渡・貸付、商品の販売・運送、サービスの提供などです。外国から商品を輸入する際も、輸入のときに課税されます。

出典:財務省 もっと知りたい税のこと 令和元年10月 「消費税」を知ろう

消費税は、生産、流通などの各取引段階でそれぞれ課税され、価格に上乗せされた消費税を最終的に消費者が負担する仕組みです。消費者が支払の際に負担した消費税は、納税義務者である事業者が納めます。

ただし、事業者もその生産・流通工程において消費税を支払っています。そこで、課税売上げに係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を控除して納付することで、重複して消費税を支払わない仕組みとなっているのです。仕入にかかる消費税が売上よりも多い場合、消費税は還付されます。

消費税の課税事業者とは

消費税の納税義務者は、製造、卸、小売、サービスなどの各段階の事業者と、保税地域からの外国貨物の引取者となっています。原則、事業を営む法人、個人は消費税を納付しなければなりません。

しかし、課税売上高や資本金の金額によって、消費税の納税を免除されている事業者もいます。これを「免除事業者」といいます。これに対し、免除事業者ではない事業者は、消費税を納める義務がある「課税事業者」と呼ばれているのです。

課税事業者の基準は、以下の2つ。

・その課税期間(個人事業者は暦年、法人は事業年度)の基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超える

・基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合

これらの場合は、当課税期間においては課税事業者となります。

基準を超えた場合は、課税事業者になる義務がありますが、免除事業者は課税事業者も選択することが可能です。例えば、消費税の還付を受けられるようであれば、売上にかかわらず課税事業者になった方が得な場合もあります。

基準期間とは

「基準期間」とは、個人事業者についてはその年の前々年、法人については、その事業年度の前々事業年度を差します。

例えば、2020年度の課税売上高が1,000万円を超える場合は、2022年度から課税事業者となります。

特定期間とは

特定期間とは、

・個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間
・法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間

のことです。
この間の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、当課税期間から課税事業者となります。

例えば、個人事業主が2021年の1~6月の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その年2021年から課税事業者となります。

課税売上高とは

「課税売上高」とは、消費税が課税される取引の売上金額と、輸出取引等の免税売上金額の合計額です。

これは、棚卸資産の販売代金や請負工事代金、サービス料のほか、機械の賃貸収入、棚卸資産以外の資産の譲渡代金(機械、建物等の事業用資産の売却代金)等も含みます。

個人事業者が法人成りによって法人を新設した場合は、個人事業主だった時の課税売上高は新法人の基準期間の課税売上高に含まれません。

基本的に、新たに開業した個人事業者や新設法人のように、まだ売上がない場合は、原則として納税義務が免除されます。しかし、相続財産や資本金、出資金額などがあらかじめ1,000万円を超えている場合は、設立当初から課税事業者となりますので注意してください。

どうやって課税事業者になるの?

資本金が1,000万円以上で、設立時から課税事業者である場合には、税務署に「法人設立届出書」を提出していれば特に届出は必要ありません。

しかし、途中から課税事業者の要件に当てはまるようになった場合、事業者が課税対象基準を超えたとしても、税務署は自動的に判定しません。課税事業者になるためには、事業者自身で「消費税課税事業者届出手続」を届出する必要があります

届出は課税事業者になる条件を満たした場合は速やかに提出するよう定められていますので、急に売上が伸びた場合などは要注意です。

・消費税課税事業者届出手続(基準期間用)

・消費税課税事業者届出手続(特定期間用)

課税事業者から免税事業者に戻る場合

いったん課税事業者になった後、売上の下落などにより課税売上高が、基準期間もしくは特定期間で1,000万円を下回る場合、免税事業者に戻ることができます

この時、免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日の前日までに「消費税課税事業者選択不適用届出手続」の提出が必要です。

ただし、事業廃止の場合を除き、原則として、課税選択によって納税義務者となった最初の課税期間を含めた2年間は免税事業者に戻ることはできません。
例えば、2021年度に調査対象固定資産の課税仕入を行ったとすると、免除事業者に戻れるのは2023年度からです。

また、調査対象固定資産の課税仕入を行った日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ免税事業者に戻ることはできません。
例えば、2021年度に調査対象固定資産の課税仕入を行ったとすると、免除事業者に戻れるのは2024年度からです。

関連記事:調整対象固定資産って?消費税の納税・還付に影響

課税事業者が消費税を納付する方法

消費税は、受け取った消費税から、実際に支払った消費税を控除して納税する「原則課税」と、計算が煩雑なため「簡易課税」という2つの納付方法があります。

原則課税制度

基準期間の課税売上が5000万円超の企業は「原則課税制度」をとらなくてはなりません。
原則通り、受け取った消費税から、実際に支払った消費税を控除して納税額を算定する方法です。
つまり、以下の式の通りになります。
納付する消費税額=課税売上げに係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額

原則課税制度では、全ての売上と費用の消費税を帳簿につけ、差し引いて計算する必要があるため、経理事務の工程が大変というデメリットがあります。
しかし、大きな設備投資など、費用にかかる消費税がかかる仕入(課税仕入高)が多い場合は、消費税が還付されやすくなる点がメリットです。

簡易課税制度

原則課税制度に対し、受け取った消費税に一定の割合を乗じて納税額を算定することができるのが「簡易課税制度」です。

受け取った消費税の金額を確認するだけで納税額が計算できますので、経理の工程を短縮できます。
ただし、簡易課税制度を選択すると、2事業年度間は変更することができません。課税仕入高が大きくなっても還付が受けられないことがあるので、事業計画など注意が必要です。

簡易課税制度は、基準期間の課税売上が5,000万円以下の場合に認められます。事業年度が始まる前までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出します。

・消費税簡易課税制度選択届出手続

まとめ

消費税は、事業者が受け取った金額から支払った金額を控除して納付するものです。その事務手続きや計算は煩雑なため、課税事業者は資本金・課税売上高1,000万円超という基準が設けられています。しかし、基準を超えたり、課税事業者になりたい場合は、自らで確認・届出が必要です。基準期間と届出についてはしっかりと把握し、届出もれ・納付漏れがないようにしましょう。

この記事を書いたライター

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