税務会計は当該期の課税所得を計算して納税額を報告するための会計方式です。税金のプロである税理士が主に担当する分野といえるでしょう。税務会計をメインに担当する方には、キャリアプランにいくつかの選択肢が考えられます。今回は税務会計担当者のキャリアプランについて解説していきます。
企業会計は、どのような目的で会計情報を利用するのかによって、財務会計と税務会計と管理会計の3タイプに大きく分類されます。まずこの3つについて、少し説明します。
財務会計は、当該期の自社の経営成績や財務状態を、外部の関係者に対して報告・開示することを目的とした会計です。外部の関係者には、投資家や株主、銀行、債権者、各取引先などがあります。
企業サイドとしては外部関係者に対して業績を好調に見せたいところではありますが、各文書は会計基準などの厳格なルールに則って作成されます。これらの文書をもとに、投資家や株主が投資判断を下したり、銀行が融資判断をしたりするからです。
税務会計は、国や地方公共団体に対して当該期の課税所得や納税額などを申告することを目的とした会計です。外部関係者が国や地方公共団体になった場合の財務会計であるとも考えられます。
ただし、財務会計では利益を大目に見せたいところだったのに対して、税務会計では納税額を減らすため、利益をなるべく少なめに見せたいという違いがあります。このため、同じ会社の同期の会計でも、財務会計と税務会計で利益などの数値が異なることもあります。
大企業が税効果会計を適用しているところが多いのに対し、日本企業の大半を占める中小企業においては税務会計が会計の中心となっています。税務申告に関わるため、税務署がとくに目を光らせている会計方式になります。
管理会計は、企業の経営層や部門長といった内部関係者向けに経営の実態をわかりやすく報告することを目的とした、内部報告向けの会計です。
原価計算やキャッシュフロー分析などで自社業績の現状を把握し、マネジメント層が意思決定や経営戦略の策定などを行うために用いられます。
外部向けでなく企業の内部で用いられる会計情報なので、厳しい会計基準に必ずしも従うことなく、その企業の独自のルールで作成できます。
3つの会計基準についてみてきました。さてここからは、税務会計をメインに担当している方のキャリアプランで、会計事務所勤務や独立以外の選択肢を2つご紹介します。
会計事務所での仕事は、決算報告書や税務申告書を作成することやチェックすることが中心になります。つまり、経営の結果について監査するという、過去を向いた業務といえます。
これに対して税務・会計コンサルタントでは、未来を向いた業務になります。コンサルタントとして業務フローの改善やコスト削減によって利益率の改善を目指したり、M&Aや事業再生、IPOや海外進出の支援などを行うことになります。
単純な会計処理作業領域から次第にAI(人工知能)によって代替されていくことが、まさに今進行しています。そんな中、税務関連の専門知識に加え、人間ならではの発想力やコミュニケーションスキルなどを活かす道として、コンサルティングファームへの転職は有力な選択肢のひとつといえるでしょう。
税務会計の知識や経験は、一般企業で活かすこともできます。とくに税務会計に対するニーズが高い業種としては、銀行や証券、保険などの金融系の企業が考えられます。グローバル企業や外資系企業では、国際会計や語学力などが必要になります。
一般企業に勤務することになりますので、税務会計だけではなく、財務会計や管理会計の分野にもある程度精通しておくことが求められる可能性があります。一般企業では人事異動が頻繁に行われますし、3つの会計方式について幅広く経験できる可能性が高いともいえるでしょう。
大手金融機関では、中小企業向けに事業再生や事業承継などの支援としてのコンサルティングを行う業務を担うこともあります。信託銀行には富裕層の相続対策や遺産分割関連での仕事が多くあります。
一般企業への転職につきましては、以下の記事が参考になります。
参考:税理士の一般企業への転職|キャリアや年収は会計事務所とどう違う?
税務会計のキャリアプランについて解説してきました。
以下がこの記事のまとめです。
・財務会計は経営状況を外部関係者に報告するための会計
・税務会計は課税所得や納税額を計算するための会計
・管理会計は会計情報を企業内部で活用するための会計
・税務会計のキャリアプランとしては、コンサルティングファームや一般会社がある
税務会計担当者のキャリアプランにはいくつかの選択肢が考えられます。ご自身の得意分野や個性、実現したいキャリアやライフプランなどに沿って判断されるとよいでしょう。
この記事が少しでもご参考になりましたなら幸いです。