税金をちゃんと納めなかった場合には、ペナルティが課されます。その中でも一番重いのが意図して隠蔽や仮装を行ったと見なされる場合の「重加算税」。いわゆる「脱税」と見なされ、行政処分になることも。本記事では、重加算税とは何か、どのようなケースで適用されるかについて解説します。
重加算税というのは、国税のうち加算税の一つです。税金の申告漏れのペナルティとしての可算税は以下の3パターンがあります。
・過少申告:税金を少なく申告した
・無申告:税金を申告しなかった
・不納付:源泉徴収した所得税を期限内に納付しなかった
いずれも「うっかりしていた」「確認したら確かに誤っていた」など、意図せぬ誤りであった場合とそうでない場合では扱いが異なります。
全てのケースにおいて、意図的に隠蔽したり仮装した場合にかかるのが「重加算税」。悪質なケースとして税率も35~40%と重く課せられてしまうのです。
重加算税の中で最も重いのは「無申告」。税金を一切申告しなかった場合です。
いったん重加算税が課せられて要注意の企業と認定された場合は、税務調査の期間が5年→7年に延長され、その頻度も3年に1度くらいとなる可能性があります。いわゆる「マーク」された状況になるのです。
また、5年以内に「無申告加算」もしくは「重加算税」を課せられた人が再度重加算税を指摘された場合は「重加算税の加重」となります。より多くの税金が課せられるのです。
重加算税は単純に「お金を払えば良い」わけではありません。脱税行為は社会的な信頼を失墜させてしまいますし、士業の方などであれば、場合によっては廃業に追い込まれることもあるでしょう。常日頃から実態をありのままに申告し、適正な金額を納税する必要があります。
ここで、重加算税の法律を見てみましょう。
過少申告加算税が課される場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を仮装・隠蔽し、その仮装・隠蔽したところに基づいて納税申告書を提出していたときは、過少申告加算税の基礎となる税額の35%に相当する重加算税が課せられる。
→仮に200万円支払うべきであった税金を100万円しか納めなかった場合、その差額は100万円。その35%がプラスされ、135万円を新たに納める必要があります。
無申告加算税が課される場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を仮装・隠蔽し、その仮装・隠蔽したところに基づいて期限内申告書の提出をせず又は期限後申告書を提出したときは、無申告加算税の基礎となる税額の40%に相当する重加算税が課せられる。
→仮に200万円支払うべきであった税金を100万円しか納めなかった場合、その差額は100万円。その40%がプラスされ、140万円を新たに納める必要があります。
不納付加算税が課される場合において、納税者が事実の全部又は一部を仮装・隠蔽し、その仮装・隠蔽したところに基づいてその国税を法定納期限までに納付しなかったときは、不納付加算税の基礎となった税額の35%に相当する重加算税を徴収される。
→仮に200万円支払うべきであった税金を100万円しか納めなかった場合、その差額は100万円。その35%がプラスされ、135万円を新たに納める必要があります。
過去5年以内に無申告加算税又は重加算税を課されたことがある場合において、再び仮装隠蔽があったときは、10%加重された重加算税(45%、50%)が課せられる
→(無申告加算税)加重の場合、仮に200万円支払うべきであった税金を100万円しか納めなかった場合、その差額は100万円。その45%(35%+10%)がプラスされ、145万円を新たに納める必要があります。
→(重加算税)加重の場合、仮に200万円支払うべきであった税金を100万円しか納めなかった場合、その差額は100万円。その50%(40%+10%)がプラスされ、150万円を新たに納める必要があります。
重加算税の条文の中に「仮装・隠蔽」という言葉が出てきましたが、「仮装・隠蔽」とは具体的にどのような内容なのでしょうか。
いわゆる裏帳簿・二重帳簿とは、利益を小さく計上した(あるいは全く計上しない)外部公開用の帳簿を作るとともに、本来の会計帳簿を秘密裏に作って管理することです。
例えば、領収書などの証憑類、財務諸表や棚卸し表などを、隠したり、破棄したり、偽造したりすることが該当します。架空の名義を使ったり、売上や営業外などの収入を記載しなかったりすることも含まれます。
売上の計上漏れで指摘されることは多いのですが、基本的にうっかり売上の計上が漏れてしまっていたとしてもほぼ間違いなく重加算税が認定されます。
これは、売上の計上というのは企業にとって最も大事なものであり、これが抜けてしまうというのは基本的にあり得ないという判断からくるものです。
税額控除とは、所得税額から、一定の金額を控除できるものです。個人にとって身近なものだと寄付金控除や住宅ローン減税などがあります。企業の場合も、中小企業が経営設備を取得した場合の所得税税額控除など様々な種類があります。
その控除を虚偽の申請などにより受けようとした場合、該当します。
税務調査で実際に聞かれた時に嘘の内容を答えることです。
重加算税は最大40%の税率を別途支払わなければならないため、できれば認定されたくはないものです。とはいえ、税務調査が始まってからではもう遅く、職員との交渉次第で重加算税ではならなくなるという話ではありません。税務署職員は上司に虚偽の報告はできませんのでありのままを伝えれば重加算税との判断が下されるでしょう。
では、当日までにどのようにしたら良いでしょうか。まず、間違いなく売上の期ずれや除外がないかはチェックされます。製造業であれば工程表や在庫と照らし合わせることで期ずれや計上除外されている売上がないかチェックされます。また、通帳や請求書から除外されている場合は基本的に指摘されます。
よって、売上については毎年確定申告まで漏れなく記帳することが必要です。
2021年においても新型コロナウイルス感染症の影響で、確定申告期限が4月に延長されました。2020年は持続化給付金や家賃補助給付金、さらにGoToによる一時所得など、例年にはなかった収入があった方も多いのではないでしょうか。給付金・補助金・助成金などは、その支給要件によって、課税対象だったり非課税対象だったりと扱いが異なります。
また、重加算税を課されるケースで意外と多いのが、相続・贈与です。税の知識のない一般の方のケースであることも影響しているのかもしれません。
不安な方は税理士に相談し、早めに申告の手続きを進めましょう。期限後であっても、早めに修正・申告・納付しておくことでペナルティを低く抑えることができます。
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重加算税には単なる重い税金のみならず、税務調査に入られやすくなるという大きなデメリットがあります。調査に入られてからでは対策するのは遅いので、常日頃から漏れや間違いがないかを自らチェックするとともに、顧問税理士に適切にチェックしてもらうように依頼することが大切です。