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簿記1級と社労士、どちらの資格が役に立つ?難易度からも考察

HUPRO 編集部
簿記1級と社労士、どちらの資格が役に立つ?難易度からも考察

「私はこういう仕事がしたい!」とハッキリしていない場合「仕事に役立つ資格を取りたい」と思うのは当然です。どちらも難関資格で知られる簿記1級と社労士は、別分野にも関わらず、こんな時によく比較されます。果たして、簿記1級と社労士はどちらが有利なのでしょうか。ダブルライセンスのメリットも併せて解説します。

どうして簿記1級と社労士が比較されるの?

どちらも難関の資格として知られる簿記1級と社会保険労務士(社労士)。なぜかこの2つの資格はよく比較されます。

簿記1級は経理部の方でもなかなか持っていないレア資格。どちらかというと税理士や公認会計士を目指す人が前哨戦として取得するイメージが強い資格です。対して社労士は人事労務の専門家。バックオフィスという共通点はありますが、同じ分野ではありません。それなのになぜでしょうか?主に2つの理由が関係しています。

試験のための所要勉強時間が同じくらいだから

簿記検定1級と社会保険労務士。実はこの2つの資格、合格のために必要とされる勉強時間が1000時間といわれています。勉強できる時間が限られている社会人は「どのくらいの勉強時間で取得できるか」と考えた際に比較に上りやすいのです。

難易度が同じくらいと思われているから

大学を受験する際に、志望校をまずは偏差値から選んだ方もいるのではないでしょうか。膨大な数がある資格の中で、簿記検定1級と社会保険労務士は難易度が同じくらいと考えられています。
難易度や勉強時間から「どの資格を取得できるか」と考えた際に、同じランクだと思われているため比較のテーブルにのせられやすいのです。

とはいえ、試験合格率は、簿記検定1級が10%前後、社労士が5%前後。国家資格であるぶん、受験資格も含めて社労士の方が難易度がずいぶん高いのです。

簿記1級と社労士をいろいろな面から比較してみよう

それでは、簿記検定1級と社会保険労務士について、様々な面から比較してみましょう。

国家資格/民間資格

簿記検定1級は、有名な資格ではありますが、公的な資格ではありません。日本商工会議所が試験を実施する民間資格です。簿記検定の最高峰として、プロフェッショナルの証明になります。
また、国家資格である税理士や公認会計士を目指す方が前哨戦として受験することも多いです。

対して社会保険労務士(社労士)は国家資格という違いがあります。労務関連の専門家として、独占業務で士業事務所の開業も可能です。

受験資格

簿記検定については、何級でも受験資格は特にありません。誰でも、未成年でも受験が可能です。1級を受けるためには2級が必要と言うこともなく、いきなり簿記1級受験も可能です。

それに対して、社労士試験の受験資格は、学歴による受験資格、資格による受験資格、実務経験による受験資格など、細かい受験資格をクリアしないとそもそも受験ができません

社労士試験の受験資格について、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご確認ください。

受験日程

簿記1級については、年に2回受験が可能です。試験は6月と11月に行われます。
(2020年度はコロナで6月試験が中止になったため、特別に2月にも実施されました)
受験料は7,850円(税込)、試験時間はトータルで180分です。

参考:日本商工会議所 2021年度試験日程カレンダー

参考:簿記1級・試験科目・注意事項

社労士試験は、年に1回、毎年8月に試験が行われます。日程も含めた詳細はは3~4月に案内されます。受験手数料は9,000円(払込手数料203円は、受験申込者の負担)です。

10:00開始で試験時間はトータル290分(80分+210分)。昼食を挟んで16:50まで行われます。5時間弱という長い試験です。

参考:第52回社会保険労務士試験 受験案内

合格率

簿記1級と社労士、ふたつの資格が比較される元となっている難易度を見てみましょう。
まずは簿記1級です。

引用:簿記1級・受験者データ

2017年に5.9%という低い合格率になっていますが、全体を見ると10%前後で推移しているのがわかります。

次に社労士です。

出典:厚生労働省 社会保険労務士試験の結果について

こちらは一覧になっているものはありませんでしたが、厚生労働省が報道関係者向けに出しているプレスリリースから作成しました。2020年(令和2)の合格率は6.4%、その前は6.6%と平均6%前後で推移していることがわかります。なお、2015年度(平成27)には合格率2.6%という脅威の低さです。

転職のしやすさ

どのようなところに転職したいかにもよりますが、簿記はどこでも必要なスキルなので汎用性が高く、転職しやすいと言うことになると簿記に軍配が上がるでしょう。

社労士はどうでしょうか。人事部門において社労士を社内で雇うとなると、大企業や上場企業であっても社労士が社内にいるというケースは少ないため、オーバースキルになりやすいです。
ただし、独立開業できるという強みがあります。

また、どちらも資格<経験という評価をされやすいです。新卒や20代のうちでないと資格そのものよりも実務経験がないと、転職という意味では厳しいところがあります。

独立開業について

専門家として独立開業できるのは、国家資格で独占業務ができる社労士のみなので、ここは社労士に軍配があがるでしょう。

「社労士事務所は儲からない」という話もありますが、マイナンバー制度の導入やストレスチェックの義務化などにより、社会保険労務士事務所のニーズは高まっています。

また、資格を生かして書籍やWEB記事などのライティングやセミナー講師を行ったりなど、その活躍の場を個人の才覚で広げている方も多いです。専門家として副業であっても単価が高い仕事ができるのが社労士の大きなメリットではないでしょうか。

簿記1級と社労士試験のダブルライセンスのメリット

何かと比較されやすい簿記1級と社労士ですが、両方の資格を取得しダブルライセンスとなることで互いの業務を補い合えるメリットがあります。

多くの企業はバックオフィス部門が分かれておらずに一緒になっていることも多いので、簿記と人事労務の専門としてマルチに活躍もできるでしょう。

例えば、社労士資格は人事や労務管理の専門知識を持っていることを証明してくれます。労務管理の仕事では、年金や社会保険など経理スキルが求められる分野がありますので、簿記の知識が仕事を助けてくれるでしょう。

また、簿記検定1級を取得することで、財務諸表を読む力や経営管理・分析する能力を身につけることができます。会社の経営に関わるコスト意識を持つと、自ずと人件費の点にも目が行くようになるでしょう。社労士の勉強をすることで従業員の労務管理だけでなく、必要な賃金制度や福利厚生も織り込んだ、適切な視点を持つことができます。

前段で、経験がないとオーバースキルになりやすいと書きましたが、中小企業の場合はダブルライセンスであれば話が変わります。
というのも、給与計算と経理業務を同じ人が兼任しているケースが多いからです。社会保険や給与については社労士資格で、経理業務については簿記で勉強していること、つまり広範な業務をこなせると言うことはアピールポイントとなります。

両方の資格を就職・転職のために取ろうと考えている方は、まずはニーズの高い簿記から勉強をはじめるのが良いでしょう。

この記事を書いたライター

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カテゴリ:資格試験

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