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上場とは?概要から上場する目的とリスクもあわせて解説!

HUPRO 編集部
上場とは?概要から上場する目的とリスクもあわせて解説!

上場とは「株式市場に自社の株式を公開すること」を意味する言葉。上場することで多くの投資家が上場した企業の発行している株式を取引できるようになります。

もっとも、投機対象になることによって資金調達の幅が増えると同時に、「上場企業」としての社会的責任ないしは法的責任も大きくなるという側面も。

そこで、この記事では、上場とはどのようなものなのか、メリット・デメリットに触れつつ分かりやすく解説します。企業成長の選択肢の1つとして上場を検討している経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

上場とは

上場とは、株式市場で自社の株式を公開して、一般投資家が取引できるようにすることです。

日本の株式市場は2013年(平成25年)1月に、東京証券取引所と大阪証券取引所が経営統合して「日本取引所グループ」が発足。同年7月から、大証の現物株式市場が東証に集約されました。

これによって上場企業数約3423社、株式時価総額世界第3位の市場がスタートし、日本取引所が国際競争力を持って、アジアを中心とする新興国とともに成長することが期待されています。

こうした株式市場に上場する目的は、知名度の向上や市場価値を高めて新たに優秀な人材を確保する、または資金調達の円滑化・多様化を狙うなど、企業によってさまざまです。

ただし、上場するには

・投資者から得た資金を有効に活用して安定的に利益を生み出す状況にあるか
・法令遵守をはじめとした適切な事業運営を行える体制が整備されているか
・投資者が適時適切に投資判断を行えるよう適時開示や決算が行える体制にあるか

など、投資者保護の観点から一定の適格性が求められます。

ここで、上場と合わせて耳にしたことがある「一部上場」についても確認しておきましょう。

一部上場とは

一部上場とは、取引所の市場第一部に上場をしたことを指します。

例えば、日本を代表する日本取引所グループが運営している以下2つの取引所には、市場第一部と市場第二部のように区分で分けられています。

・東京証券取引所
・名古屋証券取引所

通常、初めて上場する場合、市場第二部に指定されます。そして、その後、株式の分布状況や売買高といった市場第一部が指定する基準に適合することで、一部へ上場するわけです。

つまり、一部上場したということは、上場後の市場第二部という区分から、厳しい基準をクリアしたことで市場第一部という区分に認められたことを指します。このように、各証券取引所には上場区分が決められています。

それでは、上場区分についても確認しておきましょう。

上場区分とは

上場区分とは、それぞれに定められた明確な基準によって分けられた証券取引所のことです。例えば、東京証券取引所(東証)なら以下のような上場区分があります。

・東証一部
・東証二部
・東証マザーズ
・JASDAQスタンダード
・JASDAQグロース
・Tokyo Pro Market

日本では、東京証券取引所の取引市場が、名古屋や札幌と比べて規模が大きくなっていることから区分が多いです。それぞれの上場区分で基準が決められているため、どこに上場するのかで方針が変わってくるでしょう。

それぞれ区分の詳細や基準について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

企業が「上場」する目的

では、上場について基礎知識を深めたところで、「各企業が上場する目的」をみていきましょう。企業が上場する代表的な目的としては、以下のようなものが一般的です。

・資金調達の円滑化・多様化
・企業の知名度の向上
・社内管理体制の充実と従業員の士気向上

これらを把握することは、上場を検討する際には必ず役立ちますので、ぜひ参考にしてください。

資金調達の円滑化・多様化

上場することで、資金調達の円滑化や多様化を狙う動きがあります。

保有している株式の売却、または新規で発行した株式を売却することで、直接金融(不特定多数の投資家から資金を集めること)が可能になるためです。

・公募による直発行増資
・新株予約権
・新株予約権付社債の発行

など、単純な株式の売買のほかにも、株式市場には多数の資金調達を行う方法があります。

銀行からの融資や利益からの投資に限らず、直接金融によって資金調達の円滑化や多様化は、企業の成長をさらに進める選択肢となります。

企業の知名度の向上

上場会社となることで、株式市況欄や新聞報道などの露出を増やし、企業の知名度を向上できるのも1つの理由です。

例えば、上日本企業は400万社以上あり、そのなかで一部上場すると、上場企業数約3400社に含まれることで信頼度が高くなります。

さらに、厳しい上場区分の条件を満たしていることから、金融機関の信頼度も高くなることで資金調達がしやすくなるでしょう。

その他、事業を有利に進められるほか、優秀な人材の確保なども実現します。

一言に上場による知名度の向上とはいえ、見逃せないメリットが享受できることがわかります。

社内管理体制の充実と従業員の士気向上

上場することで、社内管理体制の充実と、従業員の士気向上を狙う動きも可能です。

なぜなら、企業情報の開示を行うこととなり、投資者をはじめとした第三者のチェックを受けることから、組織的な企業運営がなされ、会社の内部管理体制の充実が図られるためです。

また、株式公開会社となることにより、大手企業で働いているといった役員・従業員のモチベーションが向上することにもなります。

管理体制は上場を維持するためにも続けていく必要がありますので、長期的に会社を成長させていくときにも役立ちます。

こうした理由で上場を目指す会社があるなか、実際に動き出そうと考えたら知っておきたいのがリスクです。

次項で、上場にともなうリスクについて解説します。

「上場」にともなうリスク

企業が上場することにおいて、以下のようなリスクについては十分に留意すべきです。

・上場の維持に売り上げ・利益が必要
・株式売買による買収のリスク
・株主総会による経営方針の決定

それぞれ、なぜリスクとなり得るのか、どのような側面を持っているのかを説明しますので参考にしてください。

上場の維持に売上・利益が必要

株式上場の審査が完了し、上場を果たした後は上場を維持するためにコストがかかります。そのため、上場の維持に必要となる費用を支払えるほど、売上・利益を常に確保し続ける必要があります

たとえば、規模の小さい中堅会社なら上場の維持に必要な費用は5,000〜1億円ほどです。規模が大きくなるほど、維持に必要な費用は増える傾向があります。

・年間上場料
・証券会社・監査法人に支払う費用
・証券代行機関に対する手数料
・株式事務代行手数料
・上場コンサルティング費用
・弁護士への顧問料
・株主名簿管理料

これらは、上場の維持に必要な費用がかかる項目の例です。上場の準備から引き続きかかる費用もあることから、一定した売上・利益を出し続けることになります。

株式の売買による買収のリスク

上場することで公開株式の売買が行われるため、他企業による買収のリスクがあります。なぜなら、不特定多数が株式を購入できるようになるため、株式の買い占めが起きる可能性は捨てきれないからです。

原則として、株式が買い占められ、持株が50%以上となると経営権を失います。つまり、常に安定した株主数を確保しながらも、買収によるリスクを抑えた動きを求められます。

上場によって株式を自由に売買できることは、事業をさらに成長させられる可能性がある反面、買収によるリスクがあることを覚えておきましょう。

株主総会による経営方針の決定

株主総会による経営方針の決定も、時にはデメリットとして挙げられることがあります。これは、コスト増加や会社運営を株主・投資家などから常にチェックされるといった一面があるからです。

上場会社は、東証を例にすると決算短信、金融証券取引法により有価証券報告書の提出が義務付けられています。有価証券報告書は、公認会計士の監査報告書が必要である以上、監査コストも必要となるでしょう。また、もし大きな赤字を計上してしまうと、株主から代表訴訟によって責任を追及されるリスクも併せて考えられます。

そして、経営者が行っていた経営方針の決定に対する責任は、株主総会からの監督を受けるものです。多くの株主から意見を聞き、それに答えていくことで直接的に思いを反映させるのが難しくなる側面も持ち合わせていることから、圧力や業績に囚われることもあるわけです。

また、リスクの問題とあわせて、他には様々な理由から上場廃止の要件に該当し、上場後に上場廃止となる企業も中にはあります。詳しくはこちらをご覧ください。

上場するための要件

上場するためには、日本取引所自主規制法人(以下「JPX-R」)の審査を受けて基準を満たす必要があります。具体的には、投資者の信頼性確保の観点から、上場の適格性を上場審査基準に基づき審査を受けるということです。

会社が発行する株式が上場すると、その株式は金融商品取引所で売買されることとなり、不特定多数の投資者が自由に取引を行うことができるようになります。

しかし、売買の対象となる株式の発行者である上場会社には、投資者からの信頼を確保できる体制であることが大前提です。そうでないと、投資家が安心して株式取引を行なうことはできません。

したがって、上場するには審査基準を満たせるように準備をする必要があるわけです。

2種類ある上場審査基準

上場審査基準には「形式基準」と呼ばれる基準と「実質基準」と呼ばれる基準があります。

形式基準について

形式基準は、客観的に算出された数値または一定の事実の有無によって形式的に上場しても大丈夫か否かを判断します。

例えば、以下のような項目で数値や事実の提示が求められるでしょう。

・上場時株主数や流通株式数
・時価総額や事業継続年数
・純資産や利益の額
・虚偽記載又は不適正意見の有無
・上場会社監査事務所による監査
・株式事務代行機関の設置
・株券の種類
・株式の譲渡制限の有無
・指定保管振替機関の取扱同意
・上場前の公募
・売出し規制

形式的に行われる審査のため、準備に用意できる項目が多いです。

実質基準について

しかし、実質基準は、明確に定量化されておらず、尺度がないことから以下のような項目を提示して相応しい会社であることを伝えなければなりません。

・継続性
・収益性
・健全性
・内部管理体制の有効性
・内容等開示の適正性
・投資者保護の信頼性確保の観点

そして、2種類いずれの基準も上場するためにはクリアしなければならないわけです。

また、審査の基準は市場によって異なりますので注意してください。

証券会社と監査法人の指導の重要性

企業は、上場申請に向けた準備段階において、様々な外部機関と契約を結び指導などを受けることになります。そのなかでも、主幹事となる証券会社と監査法人からの指導などはとても重要です。

まず、主幹事証券会社の公開引受部といったコンサルティング部門より、上場申請準備段階に資本政策や社内体制整備のアドバイスまで受けます。

こうして上場に必要な一通り準備が整った段階で、コンサルティング部門とは別の審査部門が客観的な立場でさらに指導を受けます。

例えば、主幹事証券会社が取引所に対して上場を申請しようとする会社の推薦書作成のための審査や、公募・売出し等を引受けるための会社内容の審査(引受審査)などです。

そして、監査法人は、取引所が定める有価証券上場規程に基づき提出される財務諸表等について監査意見を表明するとともに、申請希望会社の会計処理及び内部管理体制などの改善すべき点の指摘も行います。

こうした外部機関の指摘を受け、準備を進めていくことで上場の準備がようやく揃うことになります。
審査の基準は市場によって異なることもあり、指導は上場の助けとなるでしょう。

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では、ここからはイメージしやすいように上場までの流れを紹介します。

株式上場までの流れ

上場を希望する会社は上場申請前に収益基盤の確立・強化や社内管理体制の整備など、上場後、上場会社として果たすべき役割を行える会社となるための準備を行います。準備を進めるに当たっての主体は、あくまで上場希望会社です。

しかし、実際には上場申請の提出書類である推薦書を作成する主幹事証券会社や、財務諸表等の監査を行う公認会計士(監査法人)の指導・指摘を受けながら進めることがほとんど。

こうした背景を踏まえて、株式上場までには以下の3つの流れがあります。

①株式上場方針決定時期
②株式上場準備時期
③株式上場直前時期

順調に業績を伸ばし、株式上場を目標としてから上場まで約3年かかるといわれています。上場審査には一期分の決算に対して監査法人からの監査意見を必要とするからです。

その前の期から任意監査に入っていなければ、一期分の決算に対して監査証明を出すのは難しくなります。

そして、上場準備企業の組織を株式上場に相応しい体制へと変えていく実務作業に約1年を要します。資本政策に基づく株主の整備や、内部統制の準備を進めるために必要な規程類の整理などが必要になるわけです。

こうして上場直前時期になると、監査法人が適正意見を出せると判断できた場合に最終的な上場準備となります。

上場審査は多岐にわたるため、審査項目のポイントを押さえておきましょう。
上場の流れや詳細な審査項目のポイントについて詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

まとめ

企業は、株式市場に上場することで多種多様な資金調達を行なうことができるようになります。

また、多くの投資家が自社の株式を引き受けてくれれば、それだけ資金調達額も大きくなり、多額の資金を事業のために活用することができるようになります。

さらに、上場することで会社の知名度があがり、多くの人が自社を知ってくれるようになるといったメリットも享受でき、優秀な人材を確保できる可能性が高くなりますし、新規の取引先も自社製品を安心して取り扱ってくれるようになります。

当然、上場することはメリットばかりではなく、デメリットもありますが、上場することでしか得られないものも多くあるでしょう。

この記事を参考にし、メリットとデメリット、そして今の会社の状態まで考えながら上場を視野に入れて考えてみてください。

この記事を書いたライター

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