毎日数多くの請求書を処理し、月締め業務は多忙を極め、決算期には残業が当たり前の激務の経理ですが、実はその仕事量に反して年収が低い傾向にあります。そこで、この記事では、経理の年収が低い原因を解説しつつ、経理の年収を上げる方法を紹介します。自分のスキルと収入の不一致に悩む経理の方はぜひご参考ください!
「経理の年収は低い」とよく言われますが、それは本当でしょうか。営業やエンジニアと比べて、経理職は年収が伸びにくいと言われがちです。しかし、実際の平均年収や市場価値を見てみると、必ずしも経理職の年収が“低い”とは言えません。
例えば、厚生労働省によると、経理職の平均年収はおおよそ450万〜550万円前後。これは日本の全職種平均より高めの水準です。20代で350万円前後、30代で450万円、40代以上で600万円近くになるなど、年齢や経験とともに着実に伸びる傾向があります。特に、上場企業や外資系企業では年収600万円以上のポジションも珍しくありません。
また、女性経理の平均年収も400万円台と、全職種の女性平均年収(約350万円)より高いことが分かります。
ちなみに…男性との給与差が生じている一因として、女性は派遣社員など非正規で働く割合が高いことが指摘されています。
裏を返せば、女性経理でも正社員として経験を積めば十分に高年収を狙えるということです。
これらを踏まえてもなお、「経理=年収が低い」というイメージが広まっています。それではなぜそのように言われるのか、次で理由を見ていきましょう。
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出典:厚生労働省:令和6年賃金構造基本統計調
「年収が低い」と感じる人の多くは、専門のスキルを必要としている割に「年収が上がりにくい」と考えています。
平均水準では高めとはいえ、「経理は年収が上がりにくい」「昇給しづらい」と感じる人も多いでしょう。その背景には、経理職の仕事内容や評価のされ方、業界の構造的な事情が関係しています。経理の年収が上がりにくい主な理由として、以下のような点が挙げられます。
経理は会社の財務管理という重要な役割ですが、直接的に利益を生み出す仕事ではありません。営業職であれば契約件数や売上額という形で成果が数字に表れ、その成果が会社の利益につながります。
一方、経理がどれだけ正確に業務をこなしても売上が増えるわけではなく、経営者目線ではインセンティブや昇給を大きくしづらい傾向があります。いわばコスト部門と見なされがちなため、他部門より給与予算が抑えられることが多いのです。
経理業務は成果が数値化しづらく、社内で評価軸があいまいになりがちです。営業なら「〇〇万円の売上達成」のように可視化できますが、経理ではミスなく帳簿を締めても「それが当たり前」と思われてしまいます。
周囲から成果を認識されにくく、「専門知識を駆使して正確に仕事をしているのに正当に評価されない」と感じる経理担当者も少なくありません。評価制度が明確でない企業も多く、目立った功績を挙げにくい職種ゆえに昇給につながりにくいのです。
多くの企業では、経理の給与テーブルは勤続年数や社内での序列に沿って上がるケースが一般的です。経理は高度な知識が必要ですが、新人のうちは即戦力になりづらいため、スタート時点の給与水準は一般事務職と大差ないこともあります。
そこからコツコツ経験を積んで社内評価が上がり、役職に就いてようやく大幅な昇給に繋がるというスローペースなキャリアになりがちです。若手のうちはなかなか給与が上がらず、「勤め続けても報われる実感が湧きにくい」と感じてしまう要因です。
経理の仕事には専門知識が不可欠な一方で、日々の仕訳入力や帳簿作成など定型的な作業も多く含まれます。近年は会計ソフトやRPAの導入で業務の自動化が進み、昔は手作業だった決算書作成もソフトが自動計算してくれるようになりました。
その結果、「誰がやっても大差ない仕事」と見なされ、人件費をかけて大幅昇給させる必要性が低いと判断される面もあります。
※もちろん高度な判断業務は人間にしかできませんが、定型業務だけをこなしていると評価が頭打ちになりやすいということです。
以上のような理由から、経理は成果を出しても給料に反映されにくい構造になりがちです。そのため「平均年収自体は低くなくても、自分の年収はなかなか上がらない」というジレンマを感じやすいと言えるでしょう。
経理として働く中で、「なんだか自分は報われていない…」と感じる瞬間はありませんか?専門知識を駆使して会社を支えているにもかかわらず、評価や待遇が見合わない場面があるとモチベーションも下がってしまいます。ここでは、経理担当者が「経理は報われない」と感じがちなシーンをいくつか紹介します。
経理の仕事は正確さが命。裏を返せば、100%ミスなくやっても「当たり前」と受け止められがちです。誰も気づかないくらい完璧に締め処理を終えても褒められることは少なく、逆にごく小さなミスがあると強く指摘される…という経験に心当たりはないでしょうか。成果よりミスの有無ばかり注目されると、「頑張りが報われない」と感じてしまいます。
経理部門の貢献は社内ではなかなか表立って見えません。営業が大口契約を取れば社内表彰されたりしますが、経理が月次決算を無事に締めても社長から感謝状が出るわけではありません。実際には会社運営の要の業務であっても、他部署から「お金の管理をしてくれて助かっています!」と感謝される機会は少ないでしょう。縁の下の力持ち的な存在ゆえに、影の貢献になりがちな点で報われなさを感じる人も多いようです。
四半期決算や年度末決算の時期など、経理には繁忙期があります。残業や休日出勤で乗り切っても、それに見合う特別な手当が出るわけでもなく通常業務の延長として扱われる場合、「これだけ頑張っても給料は変わらないのか…」と虚しくなることも。特に同世代の友人が残業代やインセンティブで収入を増やしているのを見ると、経理の自分は忙しい割に報われないと感じてしまうかもしれません。
簿記や会計の知識を駆使して会社の財務を支えているのに、その専門性が給与に反映されていないように思える瞬間です。他部署では資格手当があったりするのに、経理では「持っていて当然」で手当なしというケースもあります。また、自分なりに効率化提案やコスト削減に貢献しても評価につながらないと、「努力しても給料が変わらないならモチベーションが上がらない」と感じることもあるでしょう。
こうした思い当たる場面はないでしょうか。実際、「経理は専門知識と正確性が求められるのに正しく評価されていない」と感じる経理担当者は少なくありません。
しかし裏を返せば、評価されづらい経理の仕事でも年収を上げていくことは可能です。次の章では、特に20~30代の若手や女性の経理担当者が年収アップを実現するための具体的な方法を見ていきましょう
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出典:シンカキャリア
この図から、経理職で年収を向上させるためには、経理経験や英語力といった専門スキルに加え、転職経験が二度以上ある人材が重視される傾向にあることが読み取れます。
その理由は、転職を経験することで多様な業務や企業に携わる機会を得ており、応用力、柔軟性、そして広い視野を持つと期待されるからです。
さらに、積極的にキャリアを重ねてきたことから、成長意欲も感じられ、将来的に企業にとって有益な人材となる可能性が高いと見込まれるためでしょう。
ただし、転職理由が否定的に捉えられてしまうと、これらの利点は認められないため、注意が必要です。
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「このまま経理を続けていて年収は上がるのだろうか?」と不安に思う若手の方もいるでしょう。また、平均を見ると女性経理は男性より低めとはいえ、キャリアの積み方次第で収入アップは充分可能です。若手や女性の経理担当者が年収を上げるためのポイントを整理すると、主に以下のような方法があります。
資格は経理にとって武器になります。代表的なのは日商簿記で、最低でも2級以上を持っていれば転職市場で有利です。簿記3級は基礎レベルですが、2級取得者には資格手当を出す企業もあるなど評価されます。
さらに上を目指すなら税理士や公認会計士の資格取得も選択肢です。取得には数年の勉強が必要ですが、その分資格保有者は専門職として別格の待遇を得られます。実際、税理士や会計士資格を取って事業会社の経理からキャリアアップ転職し、年収が大幅に上がった例もあります。若いうちに難関資格に挑戦しておけば、将来的に経理以外の道(独立開業やコンサル転身など)も開け、結果的に収入アップにつながるでしょう。
同じ会社で年収を上げる王道は、やはり昇進して管理職になることです。一般的に管理職に就けば基本給が上がり役職手当も付与されるため、年収アップが見込めます。経理部内で主任・係長・課長…とステップアップしていけば、その段階に応じて平均以上の収入が得られるでしょう。
ただし管理職ポストには限りがあり、希望すれば誰でもなれるわけではありません。またマネジメントにはプレッシャーも伴うため、自身の適性も考える必要があります。とはいえ若手のうちからリーダーシップを発揮し、責任ある仕事に積極的に取り組めば昇進のチャンスは巡ってきます。特に女性の方も遠慮せず管理職に挑戦しましょう。近年はダイバーシティ推進で女性管理職登用も増えており、実力次第でキャリアアップできる環境が整いつつあります。
手っ取り早く年収を上げるには、今より待遇の良い会社へ転職するのが効果的です。経理はどの企業にも必要な職種ですから、視野を広げれば高待遇の求人が見つかります。
たとえば大手企業やメーカーの経理は給与水準が高めで、若手でも年収400~500万円程度からスタートできるケースが多いようです。反対に中小企業では300万円台が中心になるなど、企業規模によって収入には差があります。実際、統計でも従業員1,000人以上の大企業では経理の平均年収が約526万円なのに対し、従業員100人未満の企業では422万円程度と100万円以上の開きがあります。
このように会社規模や業種による年収差は大きいため、現在勤める企業で昇給が見込めない場合は思い切って環境を変えるのも賢明です。特に外資系企業やIT・通信業界の経理は実力次第で高年収を狙えます。外資は年功序列ではなく実績評価の文化なので成果に応じて報酬が上がりやすく、IT業界は経理にも高度なスキルを求める分報酬も高い傾向があります。転職により、自分の実力を正当に評価してくれる場に身を置くことも大きな年収アップにつながるでしょう。
現在派遣社員・契約社員として経理を担当している方は、正社員ポジションへの切り替えを目指すことで年収アップできる可能性があります。前述の通り女性経理の平均年収が低めなのは派遣が多いからという背景があります。派遣の場合ボーナスがなかったり時給制だったりするため、どうしても年収が伸びにくい傾向です。もし正社員登用の道が会社にあるなら積極的にチャレンジしてみましょう。また転職市場でも、派遣で培った経験をアピールして直接雇用の求人に応募するのも一つの手です。正社員になれば各種手当や昇給のチャンスも増え、長期的な収入向上が期待できます。
以上のような施策を組み合わせていけば、若手や女性の経理であっても「年収が頭打ち」と嘆く状況から抜け出せるはずです。ポイントは受け身で現状を我慢せず、主体的にスキルアップとキャリア選択を行うことです。資格取得や転職によって実績を積んだり自分の市場価値を高めたりすれば、30代で大企業の管理職に抜擢されたり、専門スキルを武器に高収入ポジションに転身したりする道も開けます。ぜひ長期的なキャリア設計を描きながら、できるところから行動してみてください。
「経理の仕事で年収1000万円を稼ぐことはできるのか?」——若手の方には遠い先の話かもしれませんが、キャリアの目標として気になるところでしょう。結論から言えば、経理で年収1000万円超えは可能です。ただし誰もが到達できるわけではなく、相応のポジションやスキルが要求されます。
事実、転職市場の求人を見ても年収1000万円以上を提示している経理ポジションは存在します。それらの多くは部長クラス以上の管理職や、財務・IRなどを統括する責任者クラスの求人です。ある調査では「年収1000万円以上」の経理求人の条件として、「経理経験10年以上」「英語力あり」「IFRS対応やIRの責任者経験」といった要件が挙げられています。実際に採用されている人材の例を見ると、40~50代で経理畑一筋、転職経験も複数回といったベテランが多いようです。
このことからも、経理で1000万クラスの収入を得るには相応の経験年数と管理職としての実績が必要であることがわかります。とはいえ、中には30代で年収1000万円近くに到達するケースもあります。例えばコンサルティング業界での経験を活かして20~30代で事業会社の経営企画や財務責任者にハイキャリア転職するような人は、比較的若くして高年収を実現しているようです。
これはかなりレアケースではありますが、経理のスキルに加えて経営視点や高度な専門知識を持つ人材であれば、企業も破格の待遇で迎え入れるという一例でしょう。一般的には、経理として1000万円を目指す王道ルートは「大手企業で経験を積みCFO(最高財務責任者)クラスまで昇進する」ことだと考えられます。実際、上場企業のCFOや財務部長クラスになれば年収1000万円を超えるケースは珍しくありません。
また、公認会計士・税理士の資格を持って経理部長兼任で社内専門家のようなポジションについたり、外資系企業のシニアマネージャーとしてヘッドハントされたりすれば、そのクラスの年収帯に届く可能性が高まります。要するに経理+αの価値を発揮できる人材になることが重要です。財務戦略やグローバル対応、M&AやIR対応など、単なる経理実務を超えて会社経営に直結するスキルを持てば、企業も高額報酬を出してでも確保したい人材となるでしょう。
まとめると、経理で年収1000万円は簡単ではありませんが不可能ではありません。現時点で20~30代の方も、長期的にキャリアを積んでいけば将来そのラインに手が届くチャンスがあります。重要なのは「自分には無理」と決めつけず、高収入を得ている経理の先輩たちに共通する経験や資格を意識しながらキャリアを歩むことです。その一歩として、次に紹介するような転職サービスを上手に活用し、より高い報酬が得られるポジションを狙ってみるのも有効でしょう。
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「今の年収に満足できない」「昇給の見込みがなく将来が不安」という経理の方は、ぜひ積極的に行動を起こしてみましょう。社内での昇進を待つだけでなく、転職による年収アップも選択肢に入れることが大切です。その際に心強いのが、経理・会計分野に特化した転職支援サービスである「ヒュープロ」の活用です。
ヒュープロ(Hupro)は士業や管理部門に特化した求人メディア兼エージェントで、経理や税務分野の求人数では業界最大級を誇ります。扱っている求人は多彩で、働きやすい中小企業からBIG4監査法人、プライム上場企業まで幅広く掲載されています。経理職専門のキャリアアドバイザーが在籍しているため、あなたの経験やスキル、希望にマッチした求人を提案してもらえるのが強みです。
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20代後半女性(事業会社経理経験3年)
転職前:地方中小企業 経理事務(年収約300万円)
転職後:都内ITベンチャー 経理スタッフ(年収約380万円、約80万円アップ)
年収変動:転職前300万円 → 転職後約380万円(約80万円アップ)
【事例内容】
地方の中小企業にて3年間、経理事務として日々の伝票処理や入出金管理などを担当。業務内容はルーティンワークが中心で、給与水準も都心と比較して低いと感じていた。自身のスキルアップと給与アップを目指し、成長著しい都内のITベンチャーへの転職を決意。
転職活動では、これまでの経理経験に加え、独学で習得した簿記検定2級の資格と、Excelスキルをアピール。地方での勤務経験だけでなく、都心での新しい環境で積極的に挑戦したいという意欲も伝えた。
転職後は、スピード感のあるIT業界で、月次決算や請求書発行、経費精算など幅広い経理業務を担当。前職と比較して業務の幅も広がり、給与も大幅にアップ。刺激的な環境で自身の成長を実感している。
20代前半男性(事業会社経理経験1年半、簿記検定2級取得)
転職前:小規模小売業 経理担当(年収約280万円)
転職後:中堅Webサービス企業 経理アシスタント(年収約350万円、約70万円アップ)
年収変動:転職前280万円 → 転職後約350万円(約70万円アップ)
【事例内容】
小規模な小売業で1年半、経理担当として仕訳入力や売上管理などを担当。給与がなかなか上がらず、将来への不安を感じていた。簿記検定2級を取得したことを機に、より待遇の良い企業への転職を決意。
転職活動では、簿記の資格と、限られた環境ながらも経理業務に真摯に取り組んできた経験をアピール。Webサービス業界への興味と、新しい知識を積極的に吸収したいという意欲も伝えた。
転職後は、中堅Webサービス企業で経理アシスタントとして、先輩社員の指導を受けながら、月次決算の補助やデータ入力、資料作成などを担当。前職と比較して給与が大幅にアップし、福利厚生も充実。より専門的な知識を身につけ、キャリアアップを目指せる環境に満足している。
20代後半女性(税理士事務所勤務経験4年)
転職前:地域密着型税理士事務所 会計事務(年収約350万円)
転職後:都内コンサルティング会社 経理(年収約440万円、約90万円アップ)
年収変動:転職前350万円 → 転職後約440万円(約90万円アップ)
【事例内容】
地域の税理士事務所で4年間、会計ソフトへの入力や税務申告書の作成補助などを担当。業務内容は多岐にわたるものの、給与水準が都心と比較して低いと感じていた。より高い給与と、事業会社での経理経験を積みたいと考え、都内のコンサルティング会社へ転職を決意。
転職活動では、税理士事務所で培った会計・税務の知識と、コミュニケーション能力をアピール。事業会社での経理業務への強い意欲と、新しい環境で積極的に貢献したいという姿勢を伝えた。
転職後は、コンサルティング会社の経理として、月次・年次決算、予算管理、税務申告など幅広い業務を担当。税理士事務所での経験を活かしつつ、事業会社ならではの視点も学びながら、給与も大幅にアップ。専門性を高めながら、より責任のある仕事に挑戦できることにやりがいを感じている。
経理の平均年収は全職種平均より高いものの、「仕事量に対して年収が低い」と感じる人もいます。これは、売上に直結しない、成果が評価されにくい、年功序列、業務の自動化などが理由です。
しかし、若手や女性でも資格取得、管理職への昇進、高年収企業への転職、雇用形態の見直しによって年収アップは可能です。年収1000万円超えも不可能ではありませんが、高度なスキルや経験が求められます。
現状に不満があるなら、転職支援サービス「ヒュープロ」を活用し、積極的に行動することが重要です。自身のスキルアップとキャリア選択を通じて、納得のいく年収を目指しましょう。