毎日数多くの請求書を処理し、月締め業務は多忙を極め、決算期には残業が当たり前の激務の経理ですが、実はその仕事量に反して年収が低い傾向にあります。そこで、この記事では、経理の年収が低い原因を解説しつつ、経理の年収を上げる方法を紹介します。自分のスキルと収入の不一致に悩む経理の方はぜひご参考ください!
実際の経理の平均年収について紹介します。
経理職の平均年収は、一般的に400万円から600万円であると言われています。同じ経理の中でも、仕事内容によって年収は変わってきます。仕訳の作成や経費精算など、簡単な月次作業を行なっている担当者は年収が300万円から450万円程度です。一方、年次決算の担当者や子会社決の算担当者など、経理として経験が長くないとできない業務を行なっている人は500万円から600万円であると言われています。
それに加えて、管理職かどうかも経理内で年収を分けるポイントの一つ。部や課のマネジメントや決算を取りまとめることができるなど、人をマネジメントすることができる人ほど高年収を得られる傾向にあります。
経理の年収についてはこちらのコラムでも詳しく紹介しています。あわせてご参照ください!
企業規模や組織形態、在職年数に応じてかなりの差が生じるので、おおよそのイメージとご理解ください。
【経理財務】約350万円
【人事】約450万円
【法務】約500万円
【経営企画】約600万円
【ITエンジニア系】約450万円~560万円
【営業職】約460万円~600万円
転職賃金相場2018年(一般社団法人人材サービス産業協議会)
このように、仕事が忙しいイメージが強い経理部門ですが、会社の他の部門に比べると平均年収が低い傾向が見て取れます。
経理の年収を年代別に見ると、以下のようになります。
各年代別の経理の年収は、他の職種と比べると多少低い傾向にはあるものの、大きな差はありません。30代・40代で年収の伸びが極端に鈍くなるというほどではなく、年齢に応じた年収が得られているようです。
男性経理職の平均年収約470万円程度に対し、女性経理職の平均年収は約430万円程度です。他の職種と比較すると、男女の年収の差は少ないと言えるでしょう。経理では男性と女性で行う業務に大きな差がないことが理由のひとつです。
また、女性の場合は、パート・アルバイトとして働くケースも多いです。こちらも女性経理職の平均年収が低くなっている利用といえます。
外資系・大企業の経理の年収は、平均年収より高いです。
中小企業であれば、正社員の人数が少なく、パートやアルバイトの割合が高いこともあります。他の職種と兼務するケースも多いです。
一方、外資系・大企業の経理職の年収は500~800万となっています。企業規模が大きくなるほど業務に対する責任は重くなり、仕事の幅が広がったり、専門的に知識を身に付けたりする必要もあるでしょう。同じ経理職でも、外資系・大企業であれば高い年収が期待できるようです。
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では、なぜ経理の年収は低いのでしょうか?経理は会社の日々の経営収支状況を正確に把握するという重要な責任を負う仕事のはずです。にもかかわらず、他の業務担当者に比べて年収が低いのは、以下の原因によると考えられます。
経理は企業の財政状況を客観的に把握する仕事です。毎日のお金の出入りから年単位の収支動向まで正確に管理し、企業活動の経営指標は経理が算出した経営データに基づいて決定されると言っても過言ではありません。
ただ、ここで注意しなければいけないのは、経理がどれだけ正確に仕事を果たしたとしても、会社の利益増加には直結しないという点です。経理はあくまでも会社の財布を管理するだけで、営利企業である一般事業会社の収益面に直接関わることはありません。
他方、営業職や経営企画部門、エンジニア人材は、企業の商品サービスを展開する部門で、これらの部門が成果を上げれば上げるほど、会社の収益が増加するという関係にあります。つまり、会社経営者の立場から考えると、経理のような「当たり前の仕事」を担当する人材に高年収を支払うよりも、より企業の利益に直結する営業職などの人材に高年収を払って仕事への情熱を駆り立てる方が適切だと判断されてしまうのです。
経理はどれだけ仕事を頑張っても正確な人事評価を受けにくい仕事です。
例えば、営業職であれば、契約獲得件数や売上げ額、ノルマ達成率などの客観的な数値に基づいて、社員一人ひとりの仕事を評価することができます。好成績を残すほど人事評価にもしっかりと反映されるので、結果として年収増加に繋がりやすくなります。
しかし、経理の仕事は営業職のように簡単にはいきません。毎日の記帳代行や仕訳の正確性、領収書の処理などにノルマが課されているはずもなく、むしろこれらの仕事は期限までに達成して当たり前の仕事とみなされがちです。決算書類をどれだけ正確に用意できたとしても、その事実が人事評価に直結することはありません。
つまり、経理の仕事には年収を増加させるだけの客観的な指標が存在しないので、結果として年収が低いままになってしまうという実情に追いやられてしまいます。
簿記や財務諸表に関する知識など、ある程度のスキルが求められる経理の仕事ですが、実は経理の仕事は代替可能な側面が強いので、経理担当者個人の能力などが正確に評価されにくいというデメリットがあります。
例えば、営業職について言えば、営業スキルやクライアントとの関係性など、営業担当者それぞれの個性に依存して仕事が組み立てられていくという側面が強いという特色があります。他方、経理の仕事は、一定のスキルをもった人材であれば、誰でも担当することができてしまいます。
今後は経理ソフトや経理業務委託などの積極的な導入によって、企業はより安価に自社の経理業務を処理するようになると考えられます。したがって、経理担当者は自ら積極的な年収増加方策を採らなければ、いつまでも他の部門を担当する社員と比べて低い年収を強いられることになってしまいます。
以上のように、経理は、その仕事の特殊性が原因で低い年収での労働を強いられるという現状があります。ただ、以下のような方策をとれば今よりも年収を上げることが可能です。経理に携わってきて一定の経験を積んだ今、自分の能力を適切な形で給料に反映したいと考える方は、ぜひご参考ください!
経理だけに限った話ではありませんが、今の会社でそのまま勤続年数を増やせば、必然的に年収は上がります。
たいていの会社では、勤続年数に応じて基本給が段階的に増えるシステムが採用されているので、時間はかかるものの年収は上がります。場合によっては役職に就くこともあるでしょうから、その時期までぐっとこらえるのも一つの方法です。
所属する会社の方針にもよりますが、特に経理の場合には、簿記3級、簿記2級、証券アナリスト検定、ファイナンシャルプランナーなどの資格を保有していれば、一定の資格手当を受け取れることがあります。また、これらの資格を保有していれば、経理の仕事をする中でも重要な役割(経理財務や管理職)を任せてもらえやすくなるので、昇進による年収アップも期待できるでしょう。
また、経理担当者に求められるのは、簿記などの経理に直結した資格だけではありません。英語力(TOEICなど)や司法書士資格など、各社独自の基準を設けているので、年収アップに直結するようなスキル獲得を目指してください。
経理に役立つ資格についてはこちらのコラムでも紹介しています。あわせてご参照ください!
今の会社の年収ベースの低さに我慢できず、また、資格手当や今後の昇給事情を考慮しても満足できないという人は、年収ベースの高い企業に転職するのがおすすめです。
ただし、経理担当者が転職でキャリアアップを目指すのであれば、自分自身に転職市場で求められる資格やスキルがなければいけません。先程紹介したような簿記等の資格だけにとどまらず、税理士試験や公認会計士試験への積極的なチャレンジも含め、転職市場でライバルと差別化できるようなスキルを保有するのが重要です。
また、英語力や法律・知財に関する知識を証明する資格など、経理以外でアピールできるポイントも、転職市場で自分の価値を高めるのに役立ちます。
一般事業会社の経理職に就きながらスキルアップを目指している人の中には、より高度な専門性を求める結果、税理士試験や公認会計士試験にチャレンジするという人も少なくありません。自社内での昇進、転職市場でのスキルアップを目指している中で、いつの間にか税理士資格や公認会計士資格の合格が手の届く範囲にやってくるということもあるでしょう。
税理士や公認会計士として活躍することができれば、一般事業会社の社員として雇用されるよりもはるかに好待遇で仕事ができますし、自ら会計事務所や税理士事務所を開設することも可能です。将来的な可能性がぐっと広がるので、余力とやる気がある方はぜひご検討ください。
経理の年収をアップさせる方法についてはこちらのコラムでも紹介しています。あわせてご参照ください!
経理の平均年収が低いのは事実です。ただ、自分自身のスキルアップに力を注ぐことさえできれば、自社内での昇進、ハイクラス企業への転職、専門士業への転向など、いろいろな選択肢の中で年収を上げる道は残されています。
毎日追われる経理の仕事の煩雑さ、それに見合わない給料に辟易としてしまう結果、年収を上げるための努力さえしなくなってしまうという負のサイクルにだけは陥ってはいけません。
これからどのように努力して自ら描いたキャリアプランを歩んでいくかは、あなたの自由です。ぜひ積極的にいろいろな資格に挑戦して、経理としての自分の付加価値を高めましょう!