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監査法人への転職市場とは?未経験からの転職は難しい?わかりやすく解説します!

ヒュープロ編集部 川辺
監査法人への転職市場とは?未経験からの転職は難しい?わかりやすく解説します!

監査法人は、一般の会社ではしていないことを業務として行うことができるので、珍しい経験ができる職場です。そのため、監査法人に転職したいという人も数多くいます。しかし専門性の高さから異職種からの転職はハードルが高いと思われがちです。この記事ではそんな監査法人への転職事情について、わかりやすく解説します。

監査法人とは

監査法人は公認会計士法に基づき、会計監査を行う法人のことを言い、公認会計士が5人以上在籍していることが設立の条件となります。
監査法人の業務内容は監査業務とそれ以外の非監査業務に分けることが一般的です。

監査業務

監査業務とはいわゆる会計監査のことを指し公認会計士が第三者の立場として企業の財務諸表の内容に謝りがないかチェックを行うことです。
事業会社から独立した立場である監査法人が行うことで、その企業の財務諸表の信頼性が上がり、金融機関や投資家などが投資を行うための指標ともなります。

非監査業務

非監査業務とは監査法人が行う監査業務以外の業務を指し、IFRS導入支援サービスIPO(株式公開)支援サービスをはじめ不正対策・係争サポートサービス、財務会計アドバイザリーサービスなど幅広い事業を行っています。

監査法人への転職市場

監査法人は、大手・中小に関わらず積極的に採用を行っています
公認会計士法第一条において、公認会計士は「国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする」と定められています。多くの公認会計士が所属する監査法人は、飛躍的にグローバル化、デジタル化する企業等の事業環境への対応が重要な経営課題となるなかで、先駆的な取組みを通じて信頼を高めることが求められています

しかしその一方で、2014年にイギリスで発表され話題になった論文によると、監査業務は近い将来AIに取って代わられる可能性が高い業務とされています。ですので、監査業務だけができる公認会計士はいずれ職を失うリスクもはらんでいるのです。

そんな状況となっている監査法人へ転職を目指す人に求められているのは高い専門性です。監査法人は、多くの規模の大きい会社と関わっています。したがって、監査法人のアドバイザリーサービスで求められるのは、自社では賄いきれない専門性の高い業務です。そういった難しいテーマについて、監査法人で働く他の人々と協力しながらチームで課題を解決していくことが求められます。そのための中途採用ということになるので、監査法人への転職を考えている人は、高い専門性や協調しながらの課題解決能力をアピールできるように実績を積んでおく必要があります。

監査法人における「BIG4」とは?

監査法人への転職を志すにあたってほぼ確実に目にするであろう言葉が「BIG4」です。監査法人におけるBIG4は、通常以下の4つを指します。

・有限責任あずさ監査法人
・EY新日本有限責任監査法人
・有限責任監査法人トーマツ
・PwCあらた有限責任監査法人

BIG4監査法人は転職市場で非常に人気の転職先です。大手ならでは福利厚生の充実さや働きやすさに加え、大企業や海外展開しているクライアントが多く、BIG4でしか積めない業務経験ができるのが魅力となっています。BIG4監査法人についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。4つの監査法人ごとの社風や規模感、年収についても比較して紹介しています。

監査法人の年収

監査法人では実際どのくらい年収が稼げるのでしょうか?基本的には公認会計士試験に合格していることが就職の前提になる監査法人がほとんどなので、ここからは公認会計士の年収を年齢別、職階別に紹介していきます。

公認会計士の年代・職階別年収

もちろん、所属する監査法人や公認会計士としての経験年数、任される仕事の責任に応じて変動はありますが、おおよそ以下のような年収イメージで差支えありません。

【公認会計士の年収1】スタッフ

スタッフの公認会計士の年収は大体550万円~600万円程度です。同年代のサラリーマンよりもかなり稼げると言えるでしょう。
スタッフは、主に現場で決められた監査手続を黙々とこなしていきます。決められた監査手続とは言っても、クライアント企業の監査に関わる重要なものなので正確さが求められます

【公認会計士の年収2】シニアスタッフ

シニアスタッフの公認会計士の年収は大体600万円~800万円くらいです。
シニアスタッフになるとインチャージ(現場責任者)と呼ばれる業務に就くのが一般的です。担当企業の会計処理の検討の他、スタッフの進捗管理やクライアントとの折衷、マネージャーへの報告など、毎日やることが多く、監査法人の職階の中で一番大変な時期ともいわれます。
シニアスタッフはいわば中間管理職のようなポジションなので、残業も多く発生するでしょう。もちろん残業代をつけることは可能ですが、決算期などはかなりハードに仕事をこなさなければいけません。ただ、収入面については民間企業に就職した同年代よりも稼ぐことができるので、そこが心の支えになる人も少なくはありません。

【公認会計士の年収3】マネージャー、シニアマネージャー

マネージャーで大体800万円~1000万円、シニアマネージャーで大体1000万円~1200万円です。
シニアスタッフやスタッフは残業代がつきますが、マネージャー以上は管理職という位置づけになるので残業代はつきません。複数のクライアントを担当し、仕事量もかなり多いです。シニアスタッフからマネージャーへの昇格はかなり狭き門ではありますが、その分高年収が期待できます。

【公認会計士の年収4】パートナー

これまでの努力が評価され、晴れてパートナーまで昇進することができれば、パートナーになりたての頃でも1,200万円から1,500万円くらいです。大手の有名企業を担当するようになれば2,000万円を超えることもあり得ます。

未経験から監査法人に転職できる?

監査法人での実務未経験で転職ができないわけではありません。ただし、適切なタイミングや選考への対策をする必要があります。

監査法人への転職活動をすべきタイミングはいつ?

監査法人に未経験で転職する場合、基本的には公認会計士試験に合格している必要があります
公認会計士試験のスケジュールに合わせて監査法人の定期採用も行われるので、スケジュールはしっかりとチェックしておきましょう。

<監査法人の就活スケジュールイメージ>
11月中旬      公認会計士試験 合格発表
11月中旬      説明会の予約開始
11月末       面接等の予約開始
11月末~12月初旬  1次面接
11月末~12月初旬  2次面接
12月初旬      内定

未経験は面接に向けて何をすればいい?

前述のように、監査法人への就職はいかに短い期間できちんと書類の作成や面接対策を行えるかということに懸かっています。監査法人への就職を考えているのであれば、試験の合格発表よりも前から、事前にエントリーシートの作成や志望動機を固めておくことをおすすめします。
特に、志望動機を固める上で大切なのが、数ある監査法人の中からなぜその監査法人を選んだのかということです。
監査法人にはBIG4系や独立系などさまざまな形態があります。それぞれの特徴をきちんと把握した上で、自分がなぜその監査法人に入りたいのかということを考えておきましょう。また、志望動機や自己PR以前に社会人としてのマナーもきちんとチェックしておきましょう。服装や、話し方、言葉遣い、表情など、基本的な事項も徹底しておく必要があります。

監査法人への転職は何歳まで?

監査法人が採用のメインターゲットとしているのは、20~30代です。先述した通り、公認会計士試験の合格発表に合わせて各社採用活動をしていくわけですが、その合格者のほとんどが20~30代であることがメインターゲットの年代に影響しています。

実際、2023年11月17日に発表された最新の公認会計士試験の結果は下図の通りとなっており、全体の98%以上が30代以下でした。

年代 合格者数 合格者構成比
20代以下 1,356人 87.8%
30代 160人 10.4%
40代 25人 1.6%
50代以上 3人 0.2%

ただし、40代以上からの転職が全くできないわけではありません監査法人やFAS業界、会計事務所などで公認会計士の知識を活かして監査業務などを行った経験がある場合は、むしろ即戦力マネージャーポジションの補充ができるため、重宝されるのです。そのような方に対しては、公認会計士試験の合格発表の時期とは関係なく、通年採用枠を設けている監査法人が多いので、職場の仕事との兼ね合いなどを見て転職活動を始めていくのが良いでしょう。
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監査法人への転職後のキャリアプラン

監査法人に転職したら、もちろん最後までそこでキャリアを積む人もいます。一方で、特に20代かで入社した場合は、その後のキャリアについて様々な選択肢を検討していくことになるでしょう。ここでは監査法人でのキャリアを活かして働ける主な職場を紹介していきます。

一般事業会社の財務部門

監査法人出身者は一般企業の財務職として働く選択肢もあります。公認会計士を持っていれば企業内会計士として活躍することができます。
所属企業の財務諸表作成や税務申告が主な仕事で、税制や会計基準が複雑化するのに対応し、企業の財務健全性を維持するためのアドバイスを提供します。
働き方を重視したい人や幅広い事業内容から興味ある業種を選びたい人に人気の転職先です。

他の監査法人

監査法人から別の監査法人への転職で多いのは、BIG4以外からBIG4への転職です。先ほど紹介した通り、BIG4は監査業務の経験を積める職場の中でも特に魅力が多く、他の監査法人でのキャリアを活かして転職する方が多いようです。

その一方で、中小規模の監査法人でクライアントに寄り添ったり幅広い業務を積みたいという、BIG4監査法人や大手監査法人出身者もおり、BIG4の経験者が中小監査法人へ転職するケースもあります。

M&Aアドバイザリー会社

M&Aアドバイザリー会社は、M&Aの売り手企業や買い手企業に対してM&A業務のサポートを行います。M&A業界は監査法人とは離れた業界に感じられるかも知れませんが、会計や監査の専門的な知識を必要とする業務も多く監査法人出身者のニーズが高い業界なのです。詳しくは下記の関連記事をご覧ください。
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独立開業

公認会計士の登録をしている場合は、企業や事務所に所属せずに独立するのも選択肢の一つです。公認会計士事務所として開業し、監査業務を請け負ったり、税理士としての登録して税務コンサルを行うのがよくある独立のケースです。公認会計士の独立について、詳しくは以下の関連記事にてご紹介しております。
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まとめ: 慎重に考えて転職しよう!

監査法人への転職活動では自身のキャリアをきちんと考えてから転職することが大切です。キャリアを考えずに転職してしまうと、自分の能力を十分に活かすことができなくなってしまいます。監査法人へ転職する場合には、自身の専門性の高さを活かすことができる業務ができるかをまずは考えなければなりません。
事前にキャリアコンサルタントなどに相談して、慎重に自身のキャリアについて考えから転職をすることが大切です。

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINE編集部の川辺です。転職エージェントとして多くのご登録者様からご相談をいただく際に伺った転職に際しての悩みや不安、疑問を解消する記事をご覧いただけるよう、日々奮闘中です!ご相談はヒュープロ公式Xまでどうぞ!
カテゴリ:転職・業界動向

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