投資や株に興味のある人の中には、新聞やニュースで上場廃止という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?一言に上場廃止といっても、上場廃止するすべての会社が倒産や経営破綻するわけではなく、経営方針の一環として上場廃止という手段を選択することもあります。
今回は、上場廃止した会社の株はどうなるのかについて解説していきます。
そもそも上場廃止とはどんなことを指すのかよく分からないという方は、下記のコラムで詳しく解説していますので、ご覧ください。
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上場廃止と聞くと経営状態が悪化して倒産するのかと思われる方が多いですが、会社が上場廃止となる場合にはいくつかのケースがあり、ネガティブな理由でないこともあります。具体的には以下の3つのケースがあげられます。
東証一部などの各証券取引所は投資家保護の観点から上場廃止基準というものを設定しています。上場廃止基準は各取引所によって違いますが、例えば東証一部では有価証券報告書に虚偽記載がある場合や債務超過に陥っている会社などが該当します。この場合は不特定多数の投資家が売買するのにふさわしくないと取引所に判断されるわけですから、ネガティブなケースとなります。
合併や完全子会社化は事業規模の拡大や経営の効率化といった経営方針の一環として行われるため、これに付随して発生する上場廃止は好意的にとらえられる場合もあります。合併することに対する市場の評価は株価の変動ではかることができます。合併のメリットが市場で評価されれば株価は上がりますし、合併後に評価されなければ株価は下がることになります。
また、経営陣が自社株を買い占めることにより自主的に上場廃止を行うことをMBO(マネジメントバイアウト)といいます。経営陣が株式を買い取ることによって経営の主導権を握り、短期的な利益を期待する株主の意向に左右されない長期的な成長を目指した経営を行うことができます。さらに、上場を維持するには決算の開示やIR活動などの必要性や監査法人への監査報酬の支払いがかさむなど少なくないコストがかかりますから、これを上場のメリットと天秤にかけて上場廃止を選ぶケースもあります。
これがみなさんが一番イメージしやすいケースかと思います。経営不振により倒産、それにともなう上場廃止ですので、こちらはもちろんネガティブなケースとなります。
では上場廃止となる会社の株はどうなってしまうのでしょうか?場合によっては株式の価値がゼロになってしまうこともありますから、上場廃止が決まっている会社の株を保有している人は理解しておく必要があります。以下でケース別にわかりやすく解説します。
上場廃止になる会社の株は、上場廃止になった経緯によって価値が上がる場合と下がる場合に分かれてきます。それでは以下の3つのケースについて解説していきます。
上場廃止基準に該当する場合は先ほども説明した通り、投資家が売買するにはふさわしくないと各取引所から判断されたネガティブなケースです。上場廃止基準に該当しそうな会社の株はまず監理銘柄への指定が行われます、監理銘柄に指定された段階では通常通り市場での売買は可能です。その後、正式に上場廃止が決定すれば整理銘柄に指定されます。整理銘柄に指定されてからも通常1か月間は市場で取引することができますが、上場廃止基準に該当して上場廃止が決まっている株ですので、高い株価での取引は期待できません。
合併、完全子会社化などにより買収される場合も株は整理銘柄に指定されて通常1か月間は市場での取引が可能になります。さらにこのケースでは買収する企業が行う、既存の株主から株を買い取るTOB(株式公開買付)に応じることで、高値で売却できることがあります。また、TOB価格が発表されると市場価格もそれに近づく傾向があるので、市場で売却することも可能です。
倒産する場合も整理銘柄に指定されてから通常1か月間は市場での取引が可能になります。しかし、1か月後には株式としての価値がなくなってしまいますので、株価は最低価格の1円に向けて暴落していく傾向があります。少しでも損失を少なくするためには早期に売却することが賢明でしょう。
今回は上場廃止の3つのケースとそれに伴って株はどうなるのかについて解説してきましたが、いかかでしたでしょうか?上場廃止といっても全ての会社が倒産するわけではなく、なかには経営戦略の一環としてポジティブな影響を及ぼすものもあるということを覚えておいてください。