士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

役員の有給休暇取り扱いはどうなる?使用人兼務役員との違いについても解説します

HUPRO 編集部
役員の有給休暇取り扱いはどうなる?使用人兼務役員との違いについても解説します

会社の経営に携わる「役員」という立場は社員とは異なります。ただし「役員」といっても法律や会社との契約で「労働者」と見なされる場合もあるのです。本記事では「役員」という立場を法的に確認した上で、有給休暇の取り扱い方について、役員と使用人兼務役員について就任・退任時のケース別に解説します。

会社法と税法で異なる「役員」

「役員」と一口に言っても、「代表取締役」「専務取締役」「監査役」「執行役員」……さまざまな名称があり、一般社員からは一緒に見えるので混乱してしまいますよね。

しかも「役員」は、会社法と税法ではその範囲が異なります。

会社法329条によると「役員」は、取締役・会計参与・監査役を指します。会社法の施行規則では、執行役までも含めていますので、この役職までが「役員」です。
つまり執行役員は「執行役」と名前が似ていて「役員」と名前がついていますが役員ではありません。
しかし、税法上では名称に拘らず実質的にその会社の経営に関与しているかどうかで「役員」であるかどうかを判断しています。

このように「役員」といっても名称や実態で解釈が異なる事があるのです。

役員の有給休暇に関連するのは雇用契約があるかどうか

名称によって「役員」かどうか見分けがつかないとなれば、どうやって有給休暇について判断するかというと、決め手は雇用関係があるかどうかです。

役員は雇用契約ではなく委任契約

法人の役員の場合、会社と役員は「雇用関係」ではなく「委任契約」を結んでいます。
有給休暇を定めている「労働基準法」は雇用されている労働者に適用されるものです。

実際の有給休暇日数は、労働基準を最低限として、勤務時間や休日などを定めた各企業の「就業規則」に沿って適用されます。
委任契約を結んでいる役員は、そもそも会社に雇用されていませんので、労働基準法も就業規則も対象外になるのです。
そのかわり役員には「役員規程」「取締役規則」といったようなという社内規定がもうけられています。

 なかには雇用契約を結んでいる「使用人兼務役員」もいる

なかには雇用契約を結んでいる「使用人兼務役員」もいる

ただし、役員の中には「使用人兼務役員」という立場の人たちもいます。
「使用人兼務役員」とは、役員の中でも「取締役営業部長」とか「取締役工場長」といったように、役員でありつつも部長などの職制上の地位があって、その職務に従事している人たちです。

さらにややこしいのですが、使用人兼務役員は雇用契約としての従業員と、委任契約としての取締役との契約が混在します。
そのため、各種規定や報酬も従業員分と役員分で決めていたりするので、両方の規定が役割を果たしている分適用されるのです。

役員に就任したら有給休暇は付与されない

さて、役員になったら有給休暇はどうなるのでしょうか。

有給休暇制度は労働基準法上の制度です。そのため労働基準法が適用されない役員は対象外。有給休暇は役員に付与されないのが原則です。

役員には従業員向けの「就業規則」も適用されません。就業規則による勤務時間の定めもありませんので「定時」や「残業」という概念もないのです。会社の状況によって、いつ働いても、いつ休んでも良いのことになります。

ただし、経営を委任されている以上、24時間体制で業務にあたることも。もちろん残業代は出ません。

もちろん、不眠不休で働かなくてはならないということではありませんが、会社の経営責任を持つという立場である以上、会社に何かが起これば時間関係なく動くことが求められてきます。

「使用人兼務役員」の有給休暇は労働実態で付与を判断

役員には有給休暇がありませんが、役員であっても従業員の役職を兼務する 「使用人兼務役員」の場合はどうでしょうか。

実は、使用人兼務役員の有給休暇の取り扱いについて労働基準法では規定されていません。 ただし、昭和23年3月17日基発461号によって、以下のような通達があります。

「法人の重役で、業務執行権又は代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、 その限りにおいて法(労働基準法)第9条に規定する労働者である。」

つまり、使用人兼務役員であっても、取締役部長や取締役工場長など労働者性が強い場合は「労働者」とみなせることになります。

労働者とみなされれば、雇用契約が一部適用されるため、労働基準法が適用。さらに就業規則が適用され、有給休暇も発生します。
ただし、労働者性が強いかどうかについては、他の管理職社員と同様に会社から指揮命令を受けて業務に従事しているという勤務実態があるかどうかで判断しますので注意が必要です。

役員を退任して社員になった場合は有給休暇が付与

会社の事情で役員から社員になる場合はどうでしょうか。
社員になると労働基準法適用になりますので、就業規則も適用され有給が付与されることになります。
この場合、役員であった期間の年数を勤続年数とするかどうかと言う判断で悩むところですが、労働基準法に沿ってさえいれば付与日数については多い分には問題はありません。

社内の状況と本人のモチベーションなどを考慮して会社で規定してください。
役員就任勤務期間を通算するかどうかは、あらかじめ人事規定を作っておくと良いでしょう。

使用人兼務役員→社員になった場合

使用人兼務役員の場合は、役員となっていた期間も事実上、勤務形態は労働者です。
そのため、使用人兼務役員→社員人なった場合は、役員であった期間も勤続年数に含めてカウントする必要があります。

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:コラム・学び

おすすめの記事