税理士試験は独学で合格することができるのか、これから目指すことを考えている人の多くが気になるポイントでしょう。そこで今回は、独学で目指す際の受験科目の選択や市販のテキストの選び方、勉強方法のポイントまで詳しく解説していきます。
結論から述べれば、独学で税理士試験に合格することは可能です。ただし、かなり困難な道であるということを理解しておく必要があります。
まずはじめに税理士試験の概要と難易度を把握してから、独学による合格の可能性を見ていきましょう。
税理士試験は科目合格制で、必修を含む5科目に合格すると試験合格(官報合格)となります。
その5科目は、必修科目・選択必須科目・選択科目の3つから成り立っています。
〈参考記事〉
試験の難易度を表すものとして代表的なのは、合格率です。まずは最新の税理士試験(2024年度)の結果から見ていきましょう。
全科目を税理士試験の合格によって取得した方を官報合格者と呼びますが、その人数は受験者数から見るとかなり少ないことが分かるでしょう。税理士資格は国家資格の中でも難易度が高く、難関国家資格の一つともされています。
もちろん、独学以外の手段で勉強してきた受験生も含めての合格率が上記の数値となります。
【2024年の税理士試験結果についての特集記事】
上述の通り、税理士試験には5科目に合格する必要がある一方、その合格率は低く、その中でも独学での合格者の割合は10%以下と言われています。つまり、受験生全体の中では1%にも満たないということですので、独学での合格は難しいといわれることが多いです。
また、独学での合格が難しいといわれている理由として、以下の3つも挙げられます。
予備校では、独自に作られた最新の教材で勉強を進めることができます。しかし、独学の場合は自分で教材の収集を行わなければならず、一般に販売されている参考書の使用がメインとなるため、使う教材に限りがあります。特に、酒税法や事業税などのマイナーな科目については、教材の量も限られているため、これらの科目を独学でカバーすることは難しいと言われています。
また、独学用のテキストは一般的に1~2年前の税法を基に作られたものが多いため、最新の税制改正への対応や傾向分析も自分で行う必要があります。
税理士試験は、必修も含む11科目で構成されています。全ての科目の知識が必要ではないものの、それぞれの専門性が高く独学では理解が難しいという特徴があり、最低でも学習に2~3000時間かかるほど広範囲です。
さらに、それぞれの科目により必要な学習時間が異なる中、試験内容を効率よく勉強する方法を自分で導き出すことは、なかなか難しいでしょう。中長期的なスケジュールの管理や学習方法は、予備校や専門学校で教えてもらえることが多いです。
〈参考記事〉
税理士試験は1回での合格が難しいため、一般的に取得までに数年をかける場合が多いです。そのため、長期間モチベーションを維持しながら学習する必要がありますが、独学の場合、予備校と違い近くに同じ目標を目指す仲間がいないため、モチベーションを保ちにくいことがあります。日々の学習進捗だけでなく、長期にわたる目標達成に向けてモチベーションも管理することが求められる中、いろんな不安や疑問を一人で抱えるのは辛いでしょう。
ここまで説明してきたように、税理士試験に独学で合格することは非常に難しい道のりであると言えます。一般的に必要な勉強時間よりも多くかかることもあるでしょう。
ただ、独学での合格は困難であるものの、不可能ではありません。
できるだけ効率的に確実に効果が出る方法で勉強を進めていく必要がありますが、いくつかのポイントをおさえることで、独学での合格を目指すことができるでしょう。
ここからは、独学で合格を目指す場合に重要となるポイントについて6つご紹介します。
税理士試験では、一部自分で科目を選択することができます。
各科目の合格点は60点以上と定められているものの、実際のところは合格率が12%となるように合格点が調整される相対評価の試験であるため、科目によって難易度や合格ラインが異なります。
そのため、比較的難易度が高くないと言われる科目もあるため、そうした科目を受験するのも合格のための一つの方法でしょう。
具体的には、法人税法や所得税法、消費税法など出題範囲が広く難解な科目は、ライバルが少ないため相対的に合格しやすい可能性があります。
また、法人税法や所得税法では、問題の論点や構造で似ている部分が多いため、効率的に学習を進めることもできるでしょう。
税理士試験は合格までの平均として3~5年以上かかるのが一般的と言われています。1年に1~2科目ずつ取得するケースが多いですが、働きながら合格を目指す場合と勉強に専念する場合によって、スケジュールの立て方は変わります。
働きながら合格を目指す場合、勉強時間の確保がとにかく重要となります。社会人の場合、1日3時間の勉強でも3年以上はかかる計算です。
仕事と両立しながら勉強時間を確保する必要があるため、通勤時間などのすきま時間の活用はもちろん、出勤前の時間や、退勤後の時間なども勉強時間に充てることが求められるでしょう。
また、限られた時間で効率よく勉強を進めることも重要であるため、苦手なポイントの重点的な復習など、工夫して勉強を進めましょう。
税理士試験は科目合格制のため、1科目ずつ合格を目指すことで学生生活とも両立することが可能です。
また、令和4年度の税理士法改正により、受験資格要件が変更されたことで、会計学に属する科目は高校生や大学生でも受験できるようになりました。そのため、従来より早い段階で受験対策を行うことで、独学での合格の可能性が増すでしょう。
独学で税理士試験を突破するに、まず重要なことは最新の試験動向をきちんと事前に調べるということです。
税理士試験はどの科目も非常に広範囲を勉強しなければなりません。したがって、過去問をきちんと手に入れて、試験の動向をきちんと分析しなければなりません。
税理士試験を作成しているのは、主に大学の教員もしくは現在税理士として活躍している先生であるため、試験委員によって作問に偏りがあることがあります。
最近では、試験委員対策用の問題集も発売されるようになっており、YouTubeなどのメディアでも試験委員対策講座が無料で視聴できることがあります。そうした情報源をきちんと活用して、最新の試験動向を理解しながら、勉強を進めていくことが大切です。
独学で勉強している場合、どのテキスト・問題集を選ぶかは非常に重要です。
自分に合ったものを選ぶというのが、基本的な考え方であるものの、税理士試験対策用に作られているテキスト・問題集はそれほど種類があるというわけではありません。したがって、まずは大手の資格予備校が出版している税理士試験対策の本を購入するのがおすすめです。
テキストについては、大手の資格予備校が出しているものを1冊購入しておけば十分です。しかし、問題集については違います。
大手の資格予備校が出版している問題集と言えども、全ての試験範囲を網羅しているかどうかはわかりません。税理士試験では、問題集を通じて解法をパターン化してきちんと論点を理解していく必要があります。したがって、できるだけ様々な問題に触れて実際の試験でどのような問題が出題されても対応できるような状態にしておくことが重要なため、複数冊購入して漏れがないようにしておくことが大切です。
〈参考記事〉
独学で税理士試験突破を目指す人と、予備校に通って税理士試験突破を目指す人で何が違うのかと言えば、間違いなく、アウトプットの量が異なっています。
予備校に通って税理士試験突破を目指す人は、予備校のプログラムのなかに答練(解答練習という演習の時間)が組み込まれているので、強制的にアウトプット中心の勉強となっています。しかし、独学で税理士試験突破を目指す人の場合、予備校のように答練を受けることができず、アウトプットの量が圧倒的に不足してしまいます。
さらに、予備校に通って税理士試験突破を目指す人が受ける答練は、予備校の教員が時間をかけて過去問を分析して作られた良問となっているので、かなりの学習効果が期待できます。しかし、独学で税理士試験突破を目指す人は、市販の問題集を通じてアウトプットをするしかありません。
したがって、独学で税理士試験突破を目指す人は可能な限り、様々な問題を手に入れて問題演習中心(アウトプット中心)の勉強方法に意識的にしていく必要があります。また、税理士試験は暗記しなければならないことも多いものの、記述式の問題となるので、正しく解答を記述することができるかどうか、その能力を高めることも非常に重要です。そのため、問題演習を重ねて学習論点を理解し、解答テクニックも手に入れましょう。
独学で税理士試験突破を目指す場合、勉強のためのモチベーションを高めるのは本当に大変です。授業などで半強制的に勉強をしなければいけない環境もなく、またモチベーションを高めあえる勉強仲間や講師もいないため、モチベーションが下がってしまいがちです。
独学で税理士試験突破を目指す人がモチベーションを高めるためには、きちんと事前に計画を立てて勉強を進めていくことが大切です。多少無理をしてでも、スケジュール通りにきちんと勉強を進めていく努力をしましょう。そうでないと、日々の勉強をサボってしまって、勉強を進めることができなくなり、時間切れとなって試験を迎えるということになりかねません。時間に余裕がある時期は、きちんとスケジュールを組んで、そのスケジュールのなかに休みを組み込んでおくのも一つの方法です。
〈参考記事〉
ここまで、独学で税理士試験の合格を目指すことについて、その難しさと成功のコツについて解説してきました。
独学で合格を目指すことの難しさ・デメリットとしては、独学向けのテキストの少なさや、勉強方法やスケジュール、モチベーションについて、自分で考えて管理する必要があるという点が挙げられました。
ここからは、税理士試験を独学で目指される方向けに、独学のメリットをご紹介していきます。
税理士試験の予備校や専門学校、通信講座にかかる学費や受講料はかなり高額です。
一般的に5科目合計の専門学校などの学費は80万円以上、通信講座は20万円以上はかかると言われています。
独学で受験する一番大きなメリットは上記のような費用をかけずに済むということでしょう。最近は、使いやすい参考書や実際に予備校で使われているようなテキストもフリマサイトや中古などで安価で手に入れることができます。うまく活用すれば、費用をかけずとも勉強することができます。
二つ目は、時間の融通が利きやすいということです。
特に働きながら勉強をする場合、予備校のように決められた授業時間で学習するということが難しい方もいるでしょう。独学であれば、自分の都合の良い時間に合わせて勉強スケジュールを組み、自分のペースで勉強を進めることができます。
税理士試験について、合格に最低でも2年、一般的には3~5年かかると言われています。ただ、予備校に通って5年以上かかって合格にいたる人もいれば、10年以上かかって合格にいたる人もいるように、独学でも3~5年で合格するケースもあれば、10年以上かかるケースもあります。
とにかく、合格までのスピードを決めるのは、勉強時間の確保と効率よい勉強法です。長時間の勉強を強いられる場合があることについてもきちんと理解しつつ、勉強方法を工夫しながら自身にあったスケジュールで学習を進めましょう。
税理士試験を独学で突破することは可能です。
しかし、すでに説明したように、税理士試験を独学で突破するためには、信頼できるテキスト・問題集を使って勉強しながら、最新の試験動向の分析も怠らずに勉強することが大切です。また、独学でもきちんと高いモチベーションを保ちながら、きちんとスケジュールを考えて、1年間で確実に1つずつ合格を積み重ねていきましょう。