士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

独学で税理士試験に合格することは可能? 合格のために最適な方法とは?

ヒュープロ編集部 川辺
独学で税理士試験に合格することは可能? 合格のために最適な方法とは?

税理士試験は独学で突破することができるのか、これから目指すことを考えている人の多くが気になるポイントでしょう。そこで今回は、税理士試験の概要から独学で目指す難易度やメリットやデメリット、合格後に活躍できる職場まで、詳しく解説していきます。

税理士試験の試験内容と難易度

まずはじめに税理士試験の概要と難易度を把握してから、独学による合格の可能性を見ていきましょう。

税理士試験の概要

税理士試験は必修科目選択必須科目選択科目の3つから成り立っています。
必須科目である「簿記論」「財務諸表論」を除き、決められた選択肢の中から受験科目を選べる科目選択制のしくみを採用しています。

選択必修科目は「所得税法」「法人税法」の2つとなり、どちらか一方で合格することが税理士試験を突破するための最低条件となります。

残る選択科目に関しては、「酒税法または消費税法」「固定資産税」「相続税法」「国税徴収法」「事業税または住民税」のうち2科目に合格しなければなりません。

上記に挙げた11科目のうち最低5科目に合格しないことには、税理士試験の突破ができないのです。
ただし、必ずしも1回の試験で5科目全ての合格をしなくてはならないわけではありません。なぜなら、税理士試験は合格した科目の失効する期限の無い、科目合格制を適用しているからです。
ですので、1年に1回のペースで1科目ずつ受験しても問題はありません。科目合格制のしくみを駆使しながら数年をかけて税理士試験合格を目指す人がほとんどです。

税理士試験の難易度

試験の難易度を表すものとして代表的なのは、合格率です。まずは最新の税理士試験(2023年度)の結果から見ていきましょう。

受験者数:32,893人
総合格者数:7,125人
うち、一部科目合格者数:6,525人
うち、全科目合格者数:600人
合格率(一部科目含む):22%
合格率(全科目):8.4%

全科目を税理士試験の合格によって取得した方を官報合格者と呼びますが、その人数は受験者数から見るとかなり少ないことが分かるでしょう。税理士資格は国家資格の中でも難易度が高く、難関国家資格の一つともされています。

もちろん、独学以外の手段で勉強してきた受験生も含めての合格率が上記の数値となります。

【2023年の税理士試験結果についての特集記事】

独学で税理士試験合格は可能?

結論から述べれば、独学で税理士試験に合格することは可能です。ただし、かなり困難な道であるということを理解しておく必要があります。

先ほど紹介した官報合格者の中で、独学での合格者の割合は10%以下と言われています。つまり、受験生全体の中では1%にも満たないということですので、独学での合格の難しさがお分かりいただけるのではないでしょうか。

税理士試験は1年、2年の勉強で合格できる試験では必ずしもありません。3年以上かかって合格にいたる人もいれば、10年以上かかって合格にいたる人もあります。したがって、長時間の勉強を強いられることをきちんと理解しておく必要があります。

独学で税理士試験合格を目指すメリット

予備校の受講代などがかからない

税理士試験の予備校や専門学校、通信講座にかかる学費や受講料はかなり高額です。一般的に5科目合計の専門学校などの学費は80万円以上、通信講座は20万円以上はかかると言われています。独学で受験する一番大きなメリットは上記のような費用をかけずに済むということでしょう。最近は、使いやすい参考書や実際に予備校で使われているようなテキストもフリマサイトや中古などで安価で手に入れることができます。うまく活用すれば、費用をかけずとも勉強することができます

自分の予定に合わせて勉強スケジュールを立てられる

二つ目は、時間の融通が利きやすいということです。特に働きながら勉強をする場合、予備校のように決められた授業時間で学習するということが難しい方もいるでしょう。独学であれば、自分の都合の良い時間に合わせて勉強スケジュールを組み、自分のペースで勉強を進めることができます

独学で税理士試験合格を目指すデメリット

先述した通り、独学で税理士を目指すとその合格率は下がります。その理由が独学での合格を目指すデメリットと言えるので、解説していきます。

効率的な勉強方法を教えてもらえない

税理士試験は、初めにご紹介した11科目で構成されています。全ての科目の知識が必要ではないものの、それぞれの専門性が高く独学では理解が難しいという特徴があり、最低でも学習に2~3000時間かかるほど広範囲です。

そんな試験内容を効率よく勉強する方法を自分で導き出すことは、なかなか難しいでしょう。中長期的なスケジュールの管理学習方法は、予備校や専門学校で教えてもらえることが多いです。

使用できる教材が限られる

予備校では、独自に作られた最新の教材で勉強を進めることができます。しかし、独学の場合は自分で教材の収集を行わなければならず、一般に販売されている参考書の使用がメインとなるため、使う教材に限りがあります。
そのため、最新の税制改正への対応や傾向分析も自分で行う必要があります。

その感覚を養うためには各専門学校が提供する答案練習(通称:答練)を解く必要があります。答練には本番と同様に必ず正答すべき問題と、捨てるべき問題が混ざっているため最適な実践演習となります。
また論文式試験の場合、答練を解き第三者に採点してもらって初めて自分の答案の良否を判断することができますが、独学では自身の採点しか当てにできないのです。

モチベーションを保つのが難しい

独学の場合、予備校と違い近くに同じ目標を目指す仲間がいないため、モチベーションを保ちにくいことがあります。複数年かかるのが一般的な税理士試験勉強において、いろんな不安や疑問を一人で抱えるのは辛いでしょう。

独学で税理士試験を突破するポイント

独学で勉強する場合、できるだけ効率的に確実に効果が出る方法で勉強を進めていく必要があります。以下では、独学で勉強する誰もが押さえておきたいポイントについて説明します。

最新の試験動向をきちんと調べる!

独学で税理士試験を突破するに、まず重要なことは最新の試験動向をきちんと事前に調べるということです。税理士試験はどの科目も非常に広範囲を勉強しなければなりません。したがって、過去問をきちんと手に入れて、試験の動向をきちんと分析しなければなりません。以下でも説明するように、試験委員によって作問に偏りがあることがあります。したがって、きちんと過去問から解法のパターンをきちんと理解して勉強を進めていくことが大切です。

信頼できるテキスト・問題集を選ぶ!

独学で勉強している場合、どのテキスト・問題集を選ぶかは非常に重要です。自分に合ったものを選ぶというのが、基本的な考え方であるものの、税理士試験対策用に作られているテキスト・問題集はそれほど種類があるというわけではありません。したがって、まずは大手の資格予備校が出版している税理士試験対策の本を購入するのがおすすめです。ただし、旧年度のテキスト・問題集を使用すると税法などの改正が反映されていない可能性があるため注意が必要です。まずは、きちんと最新の改正が反映されているかどうかをチェックしてテキスト・問題集を購入しなければなりません。

テキストについては、大手の資格予備校が出しているものを1冊購入しておけば十分です。しかし、問題集については違います。大手の資格予備校が出版している問題集と言えども、全ての試験範囲を網羅しているかどうかはわかりません。税理士試験では、問題集を通じて解法をパターン化してきちんと論点を理解していく必要があります。したがって、できるだけ様々な問題に触れて実際の試験でどのような問題が出題されても対応できるような状態にしておかなければなりません。試験範囲をできるだけ網羅した問題集を購入しようとしても、なかなかそのようなものを見つけることは難しいので、複数冊購入して漏れがないようにしておくことが大切 です。

試験委員対策を怠らない

試験を作成しているのは、主に大学の教員もしくは現在税理士として活躍している先生です。試験委員によって、作問には偏りが出るものなので、その傾向をきちんと分析する必要があります。最近では、試験委員対策用の問題集も発売されるようになっており、YouTubeなどのメディアでも試験委員対策講座が無料で視聴できることがあります。そうした情報源をきちんと活用して、時間を効率的に活用することが大切です。

独学でモチベーションを保つには?

独学で税理士試験突破を目指す場合、勉強のためのモチベーションを高めるのは本当に大変です。授業などがある場合には、時間割が決まっているので、半強制的に勉強しないといけない状態に自分を追い込むことができます。予備校に通って税理士試験突破を目指す人は、モチベーションが下がっても、周りに勉強を頑張っている仲間もいますし、アドバイザーや講師が相談に乗ってくれます。しかし、独学で税理士試験突破を目指す人には、そのような人がいないので、モチベーションが下がってしまいがちです。

税理士試験は長期戦であるので1年かけて勉強していかなければなりません。一時的にやる気に満ちていても、他のところでモチベーションが下がっていては、継続的に勉強を続けることはできません。独学で税理士試験突破を目指す人がモチベーションを高めるためには、きちんと事前に計画を立てて勉強を進めていくことが大切です。多少無理をしてでも、スケジュール通りにきちんと勉強を進めていく努力をしましょう。そうでないと、日々の勉強をサボってしまって、勉強を進めることができなくなり、時間切れとなって試験を迎えるということになりかねません。独学で税理士試験突破を目指す人にとって、勉強のモチベーションを保つというのは非常に難しいものの、非常に重要なことです。

試験の時間が差し迫ってくれば、勉強しなければならないという気持ちも芽生えてきますが、試験まで時間があるとなかなか勉強できないという人も少なくないはずです。時間に余裕がある時期は、きちんとスケジュールを組んで、そのスケジュールのなかに休みを組み込んでおく必要があります。

アウトプット中心の勉強法で!

独学で税理士試験突破を目指す人と、予備校に通って税理士試験突破を目指す人で何が違うのかと言えば、間違いなく、アウトプットの量が異なっています。予備校に通って税理士試験突破を目指す人は、予備校のプログラムのなかに答練(解答練習という演習の時間)が組み込まれているので、強制的にアウトプット中心の勉強となっています。しかし、独学で税理士試験突破を目指す人の場合、予備校のように答練を受けることができず、アウトプットの量が圧倒的に不足してしまいます。

予備校に通って税理士試験突破を目指す人が受ける答練は、予備校の教員が時間をかけて過去問を分析して作られた良問となっているので、かなりの学習効果が期待できます。しかし、独学で税理士試験突破を目指す人は、市販の問題集を通じてアウトプットをするしかありません。したがって、独学で税理士試験突破を目指す人は可能な限り、様々な問題を手に入れて問題演習中心(アウトプット中心)の勉強方法に意識的にしていく必要があります。そうでないと、予備校に通って税理士試験突破を目指す人にアウトプットの量で圧倒的に負けてしまいます。

税理士試験は暗記しなければならないことも多いものの、記述式の問題となるので、正しく解答を記述することができるかどうか、その能力を高めることも非常に重要です。この能力は、問題演習を通じてしか養うことができません。独学で税理士試験突破を目指す人は、問題演習をするにしても、市販されている問題集が限られているので、きちんと問題集を幅広く手に入れて勉強する必要があります。

問題集1冊を中心に勉強することは間違いではありませんが、それでは問題の解答パターンを網羅することはできませんし、論点を網羅的に整理しておくことはできません。したがって、信頼できる一冊の本を中心としながらも、その1冊が網羅していない問題などは適宜別の問題集を使って補わなければなりません。アウトプット中心の勉強が、独学で税理士試験突破を目指す人にとって最も重要な勉強法です。

税理士として活躍できる!主な就職先

税理士になると、転職市場での市場価値はとても高くなります。その中でも特に税理士資格を活かせる就職先を、最後にご紹介します。

会計事務所(税理士事務所や税理士法人)

税理士の就職先の選択肢はある程度多いものの、多くの税理士が会計事務所に就職します試験勉強で得た知識を最も活かせることや、独立開業を目指す人にとって経験値として有利になることが要因です。試験勉強中から会計事務所で働いているという方も少なくありません。

一般企業の管理部門

一般企業の経理部や税務部に就職する税理士も多くいます。そもそも一定数の人が、一般企業で働きながら時間をかけて税理士試験に合格しています。経理部や税務部に所属していながらキャリアアップのために税理士の資格をとるという人も少なからずいます。

コンサルティングファーム

税理士という名前を聞くと、多くの方は税務申告や税務相談などといった業務を請け負う人をイメージする人が多いかもしれません。しかし、税務コンサルティング業務を行える税理士に関しては、コンサルティングファームでクライアントの課題解決を行えるため、ニーズが高い職種となっています。

M&AアドバイザリーやM&A仲介会社

M&AアドバイザリーやM&A仲介会社は、M&A(企業の買収や合併)における売り手企業や買い手企業に対して、M&A業務のサポートを行います。M&A業界は税理士との関わりが薄いように感じるかもしれませんが、会計や税務の専門的な知識やアドバイスを必要とする業務も多く、ニーズの高い業界なのです。
〈関連記事〉

まとめ: 独学での税理士試験突破は可能!

税理士試験を独学で突破することは可能です。しかし、すでに説明したように、税理士試験を独学で突破するためには、信頼できる最新の法令がきちんと反映されたテキスト・問題集を使って勉強することが大切です。効率的に勉強をするためには、最新の試験動向を過去問を使ってきちんと分析し、試験委員の対策も怠らないようにしなければなりません。

しかも、独学でもきちんと高いモチベーションを保って勉強を継続する必要があります。税理士試験は長丁場ですので、きちんとスケジュールを考えて、1年間で確実に1つずつ合格を積み重ねていくことが大切です。いかに自分を律して効率的に時間を使えるかが、独学で税理士試験を突破するためポイントとなります。

勉強方法に関わらず、税理士になると幅広いキャリアプランから自分の希望に合ったものを選べるようになります。難易度は高いですが、取得するメリットはかなり大きいのです。

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINE編集部の川辺です。転職エージェントとして多くのご登録者様からご相談をいただく際に伺った転職に際しての悩みや不安、疑問を解消する記事をご覧いただけるよう、日々奮闘中です!ご相談はヒュープロ公式Xまでどうぞ!
カテゴリ:コラム・学び

おすすめの記事