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あなたの勤務先は大丈夫?残業が多い会計事務所は〇〇な特徴があります!

岡山 由佳
あなたの勤務先は大丈夫?残業が多い会計事務所は〇〇な特徴があります!

「会計事務所は残業が多い」といわれますが全ての会計事務所がそうであるとは限りません。会計事務所の特色によるもの、原因が顧客にあるもの、職員自身にあるもの、と現状は様々です。
今回はどのような会計事務所や職員に残業が多いのか、残業時間の削減にはどのような方法があるのかについて解説していきます。

会計事務所は残業が多い?

会計事務所は残業が多いのでしょうか。会計事務所の特徴のひとつである様々な業種の顧客に顧問契約を結んだ会計事務所が対応しなくてはならないことが、残業が多いといわれる要因のひとつともいえます。

例えば一般の顧客がスーパーで買い物をしたいと考えた際、そのスーパーが営業時間終了後であれば、その買い物をすることを諦めるか、又は違うスーパーで買い物をしようとします。

しかし会計事務所に顧客が依頼していることは、急ぎの要件だからといって他の会計事務所に簡単に依頼をすることが出来ません。
スーパーで購入したいと考えていたものが営業時間終了後で購入することが出来なかった場合は、一般の顧客は類似品を容易く他所で手に入れることが出来ます。

一方で会計事務所では、顧客が融資を受けるために早急に試算表が必要になった際、その試算表の作成元となる会計データを所有しているのは顧問契約を行っている会計事務所であり、他の事務所に依頼をしたところで直ぐには試算表を手に入れることが出来ません
 
またスーパーで買い物を諦めても、それが一般の顧客の多額の金銭的な損失になることは殆どありません。

一方で会計事務所では、顧客は試算表が期日までに手に入らなければ融資を受けることが出来ず、融資を受けられないことによる金銭的な損失は顧客にとって大きなものであり、試算表の提出を強く要求します。銀行に提出すべき試算表の期日が最も重要であり、会計事務所が営業時間外であっても連絡をしなくてはなりません。

このように他の業種よりも営業時間に関わらず顧客に求められることが多いことから、残業が多いと考えることが出来ます。

残業が多い会計事務所の傾向

全ての会計事務所が残業が多いというものではありません。残業が多い会計事務所の傾向をご紹介致します。

職員の年齢層が低い事務所

採用をしている職員の年齢層が低い場合は、あらかじめ会計事務所が採用の際にある程度の残業を行うことを期待していることがあります。

年齢層が低いということは、社会人経験が浅く会計事務所が求めることには素直に応じる傾向にある、独身者が多く家庭状況に配慮をする必要が少なく、生活を労働に多く充てられる人が多いということから、会計事務所に残業をすることを期待されやすいものです。

また職員自身も、生活時間のうち仕事に関わる時間を多く持ちたい、多く働いて成長をしたいと考える人は、年齢層が低い人に多いです。

零細会計事務所

会計事務所の約9割は従業員数が5人以下の零細会計事務所だといわれています。零細会計事務所ではその人員の少なさから、入力作業を有資格者が担当し、アシスタント職を活用することが出来ていない、ITの導入をすることが出来ない等の作業の効率化が図れていないことから、残業が多くなる傾向にあります。

また資金力が少なく適切な人員配置が出来ない、就業環境が整っていない等も零細会計事務所の残業が多くなる原因のひとつです。

残業が発生しやすい時期

残業の原因が業務量のみであると考える場合には、下記の繁忙期と呼ばれる時期が残業が発生しやすい時期であるといえます。

決算期

顧客が法人である場合の決算書の申告期限は原則として期末日から2ヶ月以内です。決算とは1会計期間の収入や費用から利益を算定し、その利益から法人税等を算定、納付をする業務です。

期末日を3月末日にしている法人が多いことから、決算作業が集中し、5月は残業時間が多くなる傾向にあります。また5月はゴールデンウィークがあり、会計事務所の営業日が少ないことも、残業が多くなる原因のひとつです。

確定申告時期

顧客が個人である場合の所得税の申告期限は3月15日、消費税の申告期限は3月31日です。確定申告とは1年間の収入や経費から所得を算定し、算定された所得を基に所得税を算定、納付する業務です。

事業所得や不動産所得等があり、青色申告をする顧客を多く抱えている会計事務所では、確定申告に対応するための2月から3月が最も1年間で忙しく、同時に残業が多くなる傾向があります。

年末調整時期

顧客が法人、個人に関わらず従業員を雇用している場合には年末調整を行わなくてはいけません。年末調整とは各従業員の年間の所得税の精算と、それに伴う会社の源泉所得税納付額の算定です。

従業員が多い会社の各従業員の給与の集計、資料の確認は時間を要する作業であり、かつ作業すべき期間が短いため、年末調整の対応をするための12月から1月は残業が多くなる傾向にあります。

会計事務所の残業が多い人とはこんな人!

職場の環境や時期に起因する残業では無く、個人の仕事内容に起因する残業の発生もあります。残業が多い人は下記に該当をする人です。

顧客訪問が多い人

月次監査で毎月顧問先を訪れなくてはならない顧客を担当として多く抱えている、顧客に懇意にされていて会合が頻繁にある場合等は、事務所を空ける時間が必然的に増加し、事務作業が滞ってしまい残業が必要な傾向にあります。

また飲食店や小売業等、営業時間中は社長や経理担当者も店頭にいる必要があり会計事務所との対応がとれない顧客は、顧客の営業時間前後の会計事務所の営業時間外の訪問を希望することもあります。
このように訪問時間の時間が多い人は、残業が発生しやすいといえます。

顧客訪問が多い人

担当顧客の事業規模が大きい人

事業規模が大きい顧客は、早急な対応を会計事務所に期待をしたり、株価算定や相続税の試算等、会社の決算業務に直接関わらない付帯業務を依頼したり、多くのサービスを会計事務所に求める傾向があります。

このように多くのサービスを会計事務所に求める顧客を担当するということはその担当者の業務が突発的に増加することになり、残業が発生しやすいといえます。

管理職の立場にある人

会計事務所内の管理職の立場にある人は、会計事務所の運営のために人事評価等の、一般職員が不在の時を選んで行いたい仕事があります。

一般職員が事務所の不在時とは多くの場合は会計事務所の営業時間外になってしまうため、残業が発生しやすいといえます。

無理な要求に応えてしまう人

会計事務所の営業時間内では到底完遂出来そうもない仕事を担当の顧客に依頼された際にそれを引き受けてしまう人、担当外の別の職員がすべき仕事を引き受けてしまう人等、会計事務所内では使い勝手の良い人と評価をされますが、残業が発生しやすいといえます。

作業スピードが遅い人

会計知識が浅い人や経験年数の少ない人は、会計処理を行うに至る判断をするために処理方法を調べる時間が多い、会計処理を行った後も作業に自身が持てずに見直しに時間が掛かってしまう等、作業スピードが遅い傾向にあります。

また会計知識や経験年数によらず、作業確認を必要以上に行ってしまう、気軽に他人に業務の相談が出来ない等、個人の性格が会計事務所の求める作業スピードに追い付いていないこともあります。
このような作業スピードが遅い人は、残業が発生しやすいといえます。

残業はするべき?

残業は基本的にはするべきでは無いという社会の風潮、ワークライフバランスという言葉がもてはやされている世の中ですが、残業をすることを評価対象としている会計事務所があることも事実です。

零細会計事務所の事務所内の風潮や評価基準は人数が少ないことから、社会全体の価値観よりも所長個人の価値観に依存してしまう傾向にあります。

よって残業はすべきであり、残業時間が長い人ほど事務所に貢献をしていると考える事務所も少なくありません。
残業代を稼ぎたいと考える人、その所長個人の方針に寄り添うことが出来る人であれば、残業をしても良いでしょう。

しかしワークライフバランスという考え方に基づけば、必要以上の残業はすべきでは無いと考えられます。

特に会計事務所では、税理士試験や会計士試験の受験生活と並行して勤務している人が多くいます。残業が多いあまりに受験生活が疎かになり、合格までに何年も掛かってしまうのは税理士や会計士を目指すにあたり得策とはいえません。

残業の是非は個人の思考によるものが大きいですが、下記では残業を望まない人に向けて対処法をご紹介していきます。
 

望まない残業への対処法

望まない残業が続くと、疲弊をしてしまい長く勤めることが難しくなってしまいます。残業時間を削減したいと考える際には下記の対処法を検討してみましょう。

作業効率の見直し

残業時間の削減は作業効率を見直すことで可能となる場合が多くあります。手計算で行っていた作業をExcelを導入し機械で行う、必要以上の自身での見直し作業は行わず上司にチェックを依頼する、会計ソフトをネット銀行と連動させ仕訳入力数を減らす等、様々な方法が考えられます。

作業効率の見直しは、自身だけで行えるものもあれば、事務所全体としてIT化を進める等周りを巻き込んで行うべきものもあります。

まずは自身や事務所の作業がどのようなものかを把握し、どのような手法によって効率化が図れるのかを学んで、提案していけるようにしましょう

担当顧客変更の打診

作業効率の見直しを行っても残業時間が削減しきれず、残業の発生原因が顧客訪問の時間が多いことや担当顧客の規模が大きいこと等、顧客にも要因があるものであれば、担当顧客の変更を打診することで残業時間は削減することが出来ます。

しかし担当顧客を変更することは容易なことではありません。次期担当者への引継ぎや、担当を外れる代わりに新たに担当する顧客の引継ぎ等、一時的に現状以上の業務が発生をします。また新たに担当する顧客が現状の担当している顧客よりも業務量が少ないとはいいきれません。新たに担当する顧客する顧客が変更時には業務量が少なくても、後日事業発展により結果として業務が多くなる可能性もあります。

また担当顧客の変更の打診により上司からの評価が低下することも考えられます。担当顧客の打診は慎重に行うようにしましょう。

転職

会計事務所内で残業時間の削減問題を解決することが出来なくなった場合には、転職を考える必要があります。

望まない残業時間によって体力や精神をすり減らし続けるのは良いことではありません。残業時間が少ない会計事務所に転職を希望する場合には、会計事務所に特化した転職エージェントを利用するとアドバイスが受けやすく転職が成功しやすくなります

まとめ

残業が多い会計事務所や職員の特徴や残業時間削減の方法についてご紹介致しました。会計事務所の転職にご不明な点がございましたら、HUPROをはじめとするエージェントにご相談されることをお勧め致します

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
カテゴリ:コラム・学び

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