キャリアラダーとは「キャリア(経験)」と「ラダー(はしご)」を組み合わせた言葉であり、職位ごとに求められる能力や技能をわかりやすく示すことで、キャリアアップの道のりを明確にする仕組みです。今回は最近注目されている「キャリアラダー」について、わかりやすく解説します。
キャリアラダーはもともとアメリカで生まれた仕組みです。
アメリカでは、正規雇用につけない労働者たちが、スキルがないために「デッドエンド・ジョブ(dead-end jobs)」と呼ばれる低賃金の労働につかざるを得ない……という状況が続き、格差の広がりが急速に進行しました。
しかし社会の安定には、高所得者と低所得者の間にある「中間層」が増えることが必要となります。そこで生まれたのが、段階を踏んでキャリアアップを目指すためのプラン、つまり「キャリアラダー」の仕組みです。
キャリアラダー制度では、職務をこなすために必要な経験やスキルを満たすと、次の段階に上ることができるというキャリアの道筋を可視化することで、正規雇用への道のりをわかりやすくしたものです。
キャリアラダーと間違われやすい言葉として「キャリアパス」があります。
どちらかというと、キャリアパスの方がメジャーな単語ですね。この2つの単語は、企業内でのキャリアアップを目指すということでは同じです。しかし、その内容は大きく異なります。
キャリアラダーは基本的に専門職向けです。より難易度が高い業務に就けるように、現在の段階でのスキルや技能の習得を目指すことが、次のステップへ進む目安となります。
これに対して、キャリアパスは、最終的に目指す地位のために、営業職や企画職、場合によっては別会社へ出向や転勤といった、異動も含めた職務経験をどう積むのかというルートのことです。
ざっくり分けると、キャリアラダーは専門職向け、キャリアパスは総合職向けというとわかりやすいでしょうか。
キャリアラダーがむく職種は、同一職種内でスキルアップすることによって、専門性を高めていける職種です。
実際にキャリアラダーを導入している職種ですと、アメリカでは、アパレル業界のGAPがキャリアラダーの先駆者として知られ、日本では医療・看護の分野において幅広く導入されています。(看護職ではクリニカルラダーという形で使われていることも)
横浜市の福祉保健事業における社会福祉職・保健師など、若年層の育成指標としても取り入れられました。
専門職の場合、求められる能力や技能が各階層ごとにハッキリさせることができるので、キャリアラダーは公平性が高い人事制度として機能しているのです。
キャリアラダーの制度を整備することは、従業員だけでなく企業にとって多くのメリットがあります。
キャリアラダーを作ることで、職務に必要な経験やスキルの段階が明確に可視化されます。従業員はキャリアラダーを見ることで、現在の自分のスキルや行動がどのようなレベルかはっきりとわかります。
それだけでなく、今後のステップアップのために何を身につければ良いかということも成長していきたいかということが明確になります。
キャリアラダーを人事評価の基準として使うことで、より具体的に評価をしやすくなります。キャリアラダーは客観的な評価なので、評価する管理職による好き嫌いなどをメインとしたバラつきがなくなり、公平感・納得感をもった人事考課を行うことが可能です。
評価した理由、しなかった理由についても、従業員に話しやすくなり、人事面談もスムーズにおこなうことができるようになるでしょう。
(もちろん、これはキャリアラダーをしっかりと具体的に定めることが前提です)
また、キャリアラダーを人材採用時の評価基準に利用することもできます。キャリアラダーでどの段階にあるか、入社後にはどのように成長していってほしいかを明示することで、企業も就職・転職希望者も入社後のズレを避けやすくなるのです。
専門職向けのキャリアップの手法「キャリアラダー」について解説しました。
作成・導入・運用コストがかかるなど、キャリアラダーにデメリットがないわけではありません。しかし、評価のばらつきを防ぎ、従業員のモチベーションアップについて大変に有効な手段といえます。
社員数が増えるにしたがって人材教育や人事考課に悩む、成長過程にある企業であれば、これからの導入は一考に値するでしょう。