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のれんの減損処理とは?税理士がわかりやすく解説します!

税理士 井上幹康
減損会計におけるのれんの減損処理

のれんとは、同業他社と比べた超過収益力の源泉をいい、例えば、企業結合(取得)におけるパーチェス法適用時に取得原価が引き継いだ資産と負債に配分された純額を超過する部分として把握されます。のれんは無形固定資産に資産計上され減損会計の対象になります。今回は、のれんの減損処理について順を追って解説します。

のれんの帳簿価額の分割

のれんを認識した取引において取得された事業の単位が複数である場合には、のれんの帳簿価額を合理的な基準に基づき分割することとされています(固定資産の減損に係る会計基準二8)。

のれんの帳簿価額を分割し、帰属させる事業の単位は、取得の対価が概ね独立して決定され、かつ、取得後も内部管理上独立した業績報告が行われる単位とすることとされています(固定資産の減損に係る会計基準注解(注9))。

また、のれんの帳簿価額の分割は、のれんが認識された取引において取得された事業の取得時における時価の比率に基づいて行う方法その他合理的な方法によることとされています(固定資産の減損に係る会計基準注解(注10))。

したがって、のれんを認識した合併や営業譲渡等により複数の事業を取得しているような場合には、上記ののれんの帳簿価額の分割の検討が必要になりますが、1つの事業しか取得していない場合にはのれんの帳簿価額の分割の検討は不要となります。

のれんの減損処理の2つの方法

のれんの帳簿価額を各事業の単位に分割した後に、のれんの減損処理を行う方法としては、以下2つの方法があります(固定資産の減損に係る会計基準二8)。

① のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた、より大きな単位でグルーピングを行う方法(原則)
② のれんの帳簿価額を当該のれんが帰属する事業に関連する資産グループに合理的な基準で配分する方法(例外)

企業としては、①②のいずれかを選択して適用することになりますが、一度採用した方法の継続適用等のしばりがありますので、注意が必要です。

のれんの減損処理の2つの方法

より大きな単位でグルーピング行う方法(原則)

この方法を選択した場合には、以下記載の2段階のテスト(①ボトムアップテスト、②トップダウンテスト)を順次行い(固定資産の減損に係る会計基準注解(注7))、最後に③のれんを加えることによる減損損失増加額の配分を行います。

①ボトムアップテスト
まず、のれんを含まない各資産グループにおいて、減損の兆候の把握、減損損失の認識の判定、減損損失の測定を行います。
②トップダウンテスト
次に、のれんを含むより大きな単位で、減損の兆候の把握、減損損失の認識の判定、減損損失の測定を行います。 のれんは、それ単独で減損の兆候が生じているか判断できないので、のれんを含むより大きな単位で減損の兆候の把握を行います。

また、減損損失を認識するかどうかを判定するために将来キャッシュ・フローを見積る期間は、原則として、のれんの残存償却年数(のれんが複数ある場合には、のれん全体の帳簿価額のうち、その帳簿価額が大きな割合を占めるのれんの残存償却年数)と20年のいずれか短い方とすることとされています。

さらに、その場合に、使用価値の算定のために将来キャッシュ・フローを見積る期間は、原則として、のれんの残存償却年数(のれんが複数ある場合には、のれん全体の帳簿価額のうち、その帳簿価額が大きな割合を占めるのれんの残存償却年数)とすることとされています(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針37(4))。

③のれんを加えることによる減損損失増加額の配分
最後に、トップダウンテストで測定された減損損失の金額が、ボトムアップテストで測定された減損損失の金額を超える部分をのれんを加えることによる減損損失増加額につき、のれんの超過収益力の減少とみて、のれんの帳簿価額を限度として のれんに負担させます。

もしも、のれんに配分された減損損失が、のれんの帳簿価額を超過する場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産グループに配分することとされています(固定資産の減損に係る会計基準注解(注11))。この場合の配分基準としては、各資産グループの帳簿価額の比率等が考えられます。

のれんの帳簿価額を各資産グループへ配分する方法(例外)

この方法を選択した場合には、以下の手順で減損処理を行います。

① のれんの帳簿価額を各資産グループへ配分する。
② のれん配分後の各資産グループについて、減損の兆候の把握、減損損失の認識の判定、減損損失の測定を行う。
③ のれん配分後の各資産グループで測定された減損損失は、のれんに優先的に配分し、残額は、帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法により、当該資産グループの各構成資産に配分する。

一般的に、①において、合理的な基準でのれんの配分が困難なため、この方法は例外として位置付けられています。

まとめ

のれんの減損処理について、原則と例外の2つの方法について解説しました。

特に、原則法において2段階のテスト(ボトムアップテスト、トップダウンテスト)を行う点が特徴的です。細かい部分の相違点はありますが、共用資産の減損処理ものれんと同じく2段階のテスト(ボトムアップテスト、トップダウンテスト)を行う点が特徴的ですので、併せて確認すると良いでしょう。

この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:コラム・学び

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