のれんとは、同業他社と比べた超過収益力の源泉をいい、例えば、企業結合(取得)におけるパーチェス法適用時に取得原価が引き継いだ資産と負債に配分された純額を超過する部分として把握されます。のれんは無形固定資産に資産計上され減損会計の対象になります。今回は、のれんの減損処理について順を追って解説します。
のれんを認識した取引において取得された事業の単位が複数である場合には、のれんの帳簿価額を合理的な基準に基づき分割することとされています(固定資産の減損に係る会計基準二8)。
のれんの帳簿価額を分割し、帰属させる事業の単位は、取得の対価が概ね独立して決定され、かつ、取得後も内部管理上独立した業績報告が行われる単位とすることとされています(固定資産の減損に係る会計基準注解(注9))。
また、のれんの帳簿価額の分割は、のれんが認識された取引において取得された事業の取得時における時価の比率に基づいて行う方法その他合理的な方法によることとされています(固定資産の減損に係る会計基準注解(注10))。
したがって、のれんを認識した合併や営業譲渡等により複数の事業を取得しているような場合には、上記ののれんの帳簿価額の分割の検討が必要になりますが、1つの事業しか取得していない場合にはのれんの帳簿価額の分割の検討は不要となります。
のれんの帳簿価額を各事業の単位に分割した後に、のれんの減損処理を行う方法としては、以下2つの方法があります(固定資産の減損に係る会計基準二8)。
企業としては、①②のいずれかを選択して適用することになりますが、一度採用した方法の継続適用等のしばりがありますので、注意が必要です。
この方法を選択した場合には、以下記載の2段階のテスト(①ボトムアップテスト、②トップダウンテスト)を順次行い(固定資産の減損に係る会計基準注解(注7))、最後に③のれんを加えることによる減損損失増加額の配分を行います。
また、減損損失を認識するかどうかを判定するために将来キャッシュ・フローを見積る期間は、原則として、のれんの残存償却年数(のれんが複数ある場合には、のれん全体の帳簿価額のうち、その帳簿価額が大きな割合を占めるのれんの残存償却年数)と20年のいずれか短い方とすることとされています。
さらに、その場合に、使用価値の算定のために将来キャッシュ・フローを見積る期間は、原則として、のれんの残存償却年数(のれんが複数ある場合には、のれん全体の帳簿価額のうち、その帳簿価額が大きな割合を占めるのれんの残存償却年数)とすることとされています(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針37(4))。
もしも、のれんに配分された減損損失が、のれんの帳簿価額を超過する場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産グループに配分することとされています(固定資産の減損に係る会計基準注解(注11))。この場合の配分基準としては、各資産グループの帳簿価額の比率等が考えられます。
この方法を選択した場合には、以下の手順で減損処理を行います。
一般的に、①において、合理的な基準でのれんの配分が困難なため、この方法は例外として位置付けられています。
のれんの減損処理について、原則と例外の2つの方法について解説しました。
特に、原則法において2段階のテスト(ボトムアップテスト、トップダウンテスト)を行う点が特徴的です。細かい部分の相違点はありますが、共用資産の減損処理ものれんと同じく2段階のテスト(ボトムアップテスト、トップダウンテスト)を行う点が特徴的ですので、併せて確認すると良いでしょう。