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身元確認とは大違い!リファレンスチェックを知ってミスマッチを減らす

HUPRO 編集部
身元確認とは大違い!リファレンスチェックを知ってミスマッチを減らす

国内外を問わず、多くの企業が採用活動において最大の課題とするのが「ミスマッチ」です。求職者が採用側の従業員と融和性があるか、どのような仕事が適正か、前職の人との関わり方はどうだったか等々を客観的視点から情報が得られれば、採用活動も効率的です。今回は単なる身元確認ではない、リファレンスチェックについて解説していきます。

リファレンスチェックって何?

中途採用をする過程で、採用側が求職者の職歴上の勤務状況や人物像等について関係各所に問い合わせることを指します。リファレンス(reference)は「参照」と訳され、リファレンスチェックは「チェックを受ける内定者について他の人の話を参照すること」と定義とされています。

経歴照会、推薦とも解釈されており、外資企業では一般的に行われています。日本の企業でも幹部採用時を中心に実施する企業が増えています。

リファレンスチェックのパターン

採用側は求職者側に事前に実施することを伝えて了解を得ます。内緒で実施するケースは採用の場面ではほとんど見られません。求職者からの情報とリファレンスチェック時の内容が大きく異なる場合、内定や採用は取り消しになる可能性があります。

書類選考段階から内定後までその企業によって実施タイミングが違いますが、多くの場合は内定を出す前の最終判断時にチェック結果を使用します。
では、このチェックはいったい誰がやるのか…。以下の2つのパターンが想定されます。

1.求職者がリファレンス先を指定(紹介)

採用側はリファレンスチェック実施を話すタイミングでリファレンス先を紹介するよう求職者に求めます。リファレンス先は単に同一企業で働いていた人などではなく、多くの場合、その仕事内容がわかり評価できる上司や同僚を複数名擁立します。紹介後は求職者がチェックに関与することはほとんどありませんので、指定するリファレンス先の相手には十分説明して理解を求める必要があります。

2.採用側で探す

同業他社からの転職であれば、その業界ネットワークを利用して独自に調査する場合もありますが、大抵の場合、調査会社、金融機関、もしくは人材紹介会社等に調査を依頼するケースが一般的です。

求職者の職歴企業がリファレンスチェックについて理解のあることが前提になります。退職した人間とは言え、個人情報であり、社内規定で制限する企業もあり、協力が得られないケースも多々見られます。

リファレンスチェックのねらい

では、企業はなぜリファレンスチェックを行うのか。主なねらいは以下の3点です。

1.書面やミーティングでは不明な部分の確認

求職者側はそのつもりはなくても関連性のなさそうなことや都合が悪いことなどを伝えきれていない場合があります。記載しづらい、話しづらいこと、説明しずらいこと等をより明確にして、採用の判断材料とします。

2.ミスマッチ防止

例えば、採用側が求める職務遂行力なのか、必要とする言語は前職でもビジネス利用していたのか、などの求職者以外から見た求職者の見られ方を確認することによって、採用後のミスマッチを未然に防ぎます。

3.整合性

求職者からの情報とリファレンスチェックでの第三者証言が合致していることでその人となりを判断する材料とします。求職者も自身で申告した情報に虚偽がないことを確認してもらえるため、採用側との信頼関係が強くなります。

リファレンスチェックの実際の内容

実施は電話で行うケースが多いようですが、書面や直接対面で行う場合もあります。具体的にどんな情報が飛び交うのか、以下の3点で解説します。

勤務状況

・求職者の在籍期間
・役職や業務内容の確認
・勤務経歴(勤務歴やポジション等)
・退職理由等

勤務態度/コミュニケーション量

・遅刻や無断欠勤の有無
・コミュニケーション力、長所や短所、社内での関係性
・行動の特徴や人物像評価

職務能力

・主な実績
・対応能力(リーダーシップ、トラブル時の対応や課題解決力等)

リファレンスチェックの実際の内容

リファレンスチェックで気を付けること

提出されたレジメ(履歴書、職務経歴書等)の内容と違いはないか、求職者の働きぶりや人物像を調査するのがリファレンスチェックです。採用側だけでなく求職者側にも注意すべきことがあります。

求職者が気を付けること

レジュメや面接時の言動に偽りがなければ心配することではありませんが、退職した企業に連絡されるとなると変な緊張感やうしろめたさを感じるものです。そういった意味では「円満退社」は重要なポイントの一つかもしれません。

もしリファレンス先を紹介する状況なのであれば、指名した方々に転職先企業へ提出したレジメを共有して自分を後押ししてもらえるように依頼しておくこともポイントです。

採用担当者が気を付けること

採用側が注意すべき最大のポイントは「個人情報」です。2015年の法改正により求職者情報は「要配慮個人情報」の扱いになり、差別や偏見といった不利益が起きないような配慮が企業に求められます。本人の同意なしには取得できない情報であることを理解しましょう。

そして、昨今取りざたされる頻度が増えている「内定取り消し」も注意する点の一つです。リファレンスチェック後に虚偽が発覚し、内定を取り消す状況は往々にして想定されます。

内定」を出すということは始期付解約権留保付(*)の労働契約が成立したとみなされ、解約権が付いているにしろ、「事情(合理的な理由)によっては取り消しもできないことはない」レベルです。重大な経歴詐称でもなければ、むやみには取り消すことができません。社内規定や社会通念上の判断に加えて、法律に則った合理的な理由が必要となります。

※始期付解約権留保付;就業開始日までに雇用者は被雇用予定者との解約ができることを労働条件に付記することができること
参考:労働契約法|厚生労働省

リファレンスチェックの拒否

国内でも実施する企業が増えていますが、その仕組みを理解できていなかったり不利益を嫌がり拒否するケースは一定数見られます。

求職者が気を付けること

やましいことがなくてもリファレンスチェックを大歓迎する人は少ないでしょう。そもそもリファレンスチェックは強制されるものではありません。但し、断ると採用側からの印象が悪くなってしまうのは正直なところです。虚偽があったり、聞かれては困ることがあったり等を疑られてしまいます。

即不採用になるわけではありませんが、選考が不利になる可能性は少なからずありますので、やむを得ない事情があるのであれば採用側に正直にその理由を説明し、対応を依頼します。

採用担当者が気を付けること

求職者によっては取得できない可能性があることを認識しましょう。リスクマネジメントの観点でリファレンスチェックが必須である場合は不採用にするのが正当手段ですが、人的資源の不足感がある昨今、バッサリと切るわけにもいきません。

もし前職がダメなのであれば、前前職の職場の関係者から取得をしたり、webシステムを利用して煩わしさを軽減したチェック法を導入したり、ワークサンプルテスト実施などを検討して情報精査に努めましょう。求職者が在職中の時は細心の注意が必要です。

リファレンスチェックを行うことによる負担

「リファレンスチェックで気を付けること」でも触れていますが、事前に求職者本人の同意を取れれば、リファレンスチェックは違法ではありません。

求職者の負担

自分への周りの評価があからさまに表れ、自分自身の転職活動なのに自分自身ではどうにもならない部分でもあります。依頼するための手数と共に精神的な負担はあるものと認識してください。

採用担当者の負担

採用における重要な情報源であり、実施するメリットは大きいとされていますが、コンプライアンスのためのリーガルチェック、質問の設定、実調査(電話連絡、メール等)、結果の分析とまとめ等の作業工数が加わり、それを実施する担当者の負担は確実に増加します。

リファレンスチェックの意味すること(まとめ)

中途採用市場が賑わうとともに早期離職も盛んになります。早期離職の要因はひとえに「ミスマッチ」。つまり採用側と求職側の価値観の相違です。その隙間を埋める手段としてリファレンスチェックがあります。

日本の企業が特に新卒採用時に行う身元保証とは意味合いが大きく異なり、あくまで採用側のビジネス上のリスクを減らすために行われるものと捉えられます。よって、求職者側へのメリットは感じにくい傾向にあります。

この記事を書いたライター

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