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税効果会計を理解しよう!パート2!将来減算一時差異と将来加算一時差異とは?

HUPRO 編集部
税効果会計を理解しよう!パート2!将来減算一時差異と将来加算一時差異とは?

税効果会計のポイント(おさらい)

前回の記事で税効果会計とは何者かといったところを簡単に説明させて頂きました。今回はもう少し踏み込んで、仕訳やその結果である損益計算書及び貸借対照表において税効果会計がどのように現れるか、基本的な会計処理を確認していきたいと思います。
繰り返しになりますが、大まかな考え方は、「会計と税務は目的が違うため若干のズレがある⇒一時的なズレなら補正してあげる⇒会計上の利益と税金を整合させてあげる」という流れです。

将来減算一時差異と将来加算一時差異

冒頭から専門用語を持ち出してしまいましたが、税効果会計の適用範囲・分類を改めて整理しておきます。
以下の3つのステップで検討していきます。

まずQ1で、企業活動について会計上と税務上の処理でズレが生じるものかどうか確認します。概ね同じですが、会計と税務で目的が異なるため、一部差異が生じる、という点でしたね。
次にQ2として、その差異が将来解消するかどうか確認します。たとえば棚卸資産評価損は一般に解消するため該当、一定額を超える交際費は解消せず非該当、と判定されます。前者を一時差異、後者を永久差異と呼ぶ点は前回申し上げた通りです。このQ2で適用範囲は確定します。つまり「一時差異」が適用対象です。
そしてQ3として、この一時差異が会計上税金の前払いにつながっているどうか確認します。前払いであれば①「将来減算一時差異」、逆に後払いであれば②「将来加算一時差異」と分類されます。
このステップで一つずつ確認していくわけですが、実際には簿記や実務で税効果会計の適用対象となるものは概ねパターン化されています。

税効果会計の登場人物

ではこの一時差異を会計処理上どう表現するか、そのための勘定科目をご紹介します。

(1) 繰延税金資産
資産科目です。将来減算一時差異と紐づきです。前述の通り、将来減算一時差異は「税金の前払い」につながるものです。イメージしにくい名称ですが、前払費用、それも通常の経費ではなく税金の前払いとざっくり考えてもらえばよいかと思います。

(2)繰延税金負債
負債科目です。先ほどの繰延税金資産と正反対の内容です。

(3)法人税等調整額
上記繰延税金資産・負債の相手勘定となるものです。たとえば、

といった具合です。つまるところ、

と同じような形です。ただし、「法人税等」とは異なる勘定科目を用いることで、税効果会計による損益影響を区分させています。

仕訳と財務諸表でみる税効果

登場人物がそろったところで具体的な会計処理の流れをみていきたいと思います。
先に申し上げると、税効果会計適用の結果、「将来減算一時差異」であれば適用した期の利益を押し上げる効果があり、「将来加算一時差異」では下げる効果があります。
このうち将来減算一時差異を例に確認していきます。差異項目の内容としては、前回も触れた「棚卸資産評価損」を用います。(生産過剰の滞留在庫は一般に会計上「棚卸資産評価損」を計上する一方、税務上はモノに欠損等ない限り評価損の損金計上は基本的に認められません)
なお、将来加算一時差異は省略させて頂きます。というのも、将来加算一時差異は実務上ほとんどありませんし、処理の内容自体は将来減算一時差異と単に裏腹となるだけだからです。

(1)【FROM】税効果会計の適用なし

まずは、税効果会計なしの普通の財務諸表をインプットしておいてください。ハイライト箇所が後程変わるところです。
今回の棚卸資産評価損は単に以下の仕訳が計上されています。

(2)【TO】税効果会計の適用あり
では先ほどの財務諸表が税効果会計を用いるとどうなるか。こうなります。

あまり変わっていませんね。棚卸資産評価損の仕訳はこうなります。

要は通常の仕訳に税効果会計に関する仕訳が追加される形です。通常の仕訳は残しつつ、会計と税務のズレを最終損益目線で是正する仕訳を外科手術的に追加しているイメージです。

(3)FROM⇒TOの考え方
ポイントは最終損益目線で考えることです。
FROMでは会計上の税率45%[=90÷200]となっています。税務上の課税所得が300[=税引前利益200+一時差異の棚卸資産評価損100]だからですね。
これは将来減算一時差異(将来の棚卸資産を処分した際に解消)であるため、税効果会計を適用します。会計上の利益であれば税金は60[=200×30%]でよいところを、90払うこととしているため、税金の前払いと考えるわけです。この差分30[=90-60]を前払費用のように扱います。
最終損益目線で適用後のTOを確認すると、税金は60となり税率30%[=60÷200]となっています。税金費用が30減額されることで貸借対照表では利益剰余金が30増えるとともに、前払費用見合いの繰延税金資産30が計上されています。

(参考)一時差異解消年度の会計処理

参考までに、翌期の動きをご紹介します。将来減算一時差異が解消(通算して会計=税務)するタイミングを仮定します。

(1)前提
・前期評価損100計上済の棚卸資産(会計上は簿価0、税務上は100のまま)を全て廃棄
・それ以外の損益は前期と同値

(2)【FROM】税効果会計の適用なし

課税所得は100[=200-廃棄した棚卸資産の税務上の簿価100]のため、税金は30となります。前期とは反対に税率15%[=30÷200]と低くなってしまっています。

(3)【TO】税効果会計の適用あり

税効果会計を適用していた場合、差異発生要因である棚卸資産がなくなったことで、紐づく前払費用(繰延税金資産)も取り崩すことになります。税率は30%[=60÷200]となっていますね。
最終的な利益剰余金は同値となり、会計と税務のズレが解消しています。

避けては通れない税効果

以上が基本的な会計処理です。勉強を進めると、資産負債法と繰延法だの、繰延税金資産の回収可能性だの、ややこしい論点がどんどん出ていきますが、根本の考え方は変わりません。「会計と税務は目的が違うため若干のズレがある⇒一時的なズレなら補正してあげる⇒会計上の利益と税金を整合させてあげる」という流れです。
税効果会計はどの業種業態でも適用されます。1人前の経理パーソンになる上では避けて通れませんので、アレルギーを持たず徐々に馴染んでいってくださいね。

この記事を書いたライター

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