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税効果会計の基礎を学ぼう!パート1!

HUPRO 編集部
税効果会計の基礎を学ぼう!パート1!

税効果会計とは

税効果会計。名前だけ聞いてもよくわからない会計処理の一つです。そして多くの経理パーソンがつまずく項目の一つです。今回はここについて簡単に触れたいと思います。ただしこの税効果会計、企業会計と税務会計両方を理解しないと消化できない、非常に難しい項目です。以下、細かい点は端折っていますので、大まかな考え方だけでも持って帰って頂ければ幸いです。

会計と税務の狭間

名前から無理やり定義づけをすれば、「税金計算上の効果を会計処理に及ぼすための」項目です。すなわち、企業会計と税務(税金計算)は一致しないところがあり、その狭間を埋めるための勘定科目として、税効果会計があるのです。

会計の目的

正しい「利益」を算出する。

税務の目的

正しい「課税所得及びそれに基づく税金」を算出する。

収益・費用と益金・損金のズレ

繰り返しになりますが企業会計と税務は目的が異なるため、税引前利益と課税所得は一部異なります。

会計上は、税引前利益=収益-費用で計算されます。
一方、税務上の考え方は課税所得=益金-損金です。収益≒益金、費用≒損金なのですが、前述のように目的が異なるためそれぞれ若干違うわけです。

収益≠益金の例は・・・と念のため挙げてもよいのですが、実際には該当項目がそもそも少なくマイナーなものが多いため割愛します。費用≠損金の項目を抑える方が重要です。

費用≠損金の典型例は棚卸資産評価損です。単純なケースで申し上げます。

<例>
・税引前利益:200
・棚卸資産評価損:100(滞留在庫について評価損を計上)

生産過剰で滞留在庫がたくさんあるとして、今後売れる見込みも低そうであれば、多くの場合企業会計上は「棚卸資産評価損」を計上すると思われます。

しかし、税務上はモノに明らかな欠損等がない限り評価損の損金計上は基本的には認められません。先ほど2.にて強調したポイントの通り、所得を低くすることを防ぐ方向性です。安易な評価損計上により所得を引き下げ、恣意的に納税額を減らすといったことを防ぐわけです。この結果課税所得は、会計上の利益よりも棚卸資産評価損の分だけ大きくなります。

・課税所得:200+100=300

ざっくり数値例で見てみよう

では先ほど用いました評価損の数値例を、P/Lに落とし込んで考えてみたいと思います。
なんてことないP/Lですが、後半に現れる「法人税等調整額」がポイントです。

処理のステップは以下の3段階です。
① 税務上の課税所得(収益を益金、費用を損金に)に基づき法人税等が計算される
⇒(200+100)×30%=90
② 企業会計上の利益ベースでの法人税等の金額との差異を把握
⇒(200×30%)-①=△30
③ 上記②を「法人税等調整額」として計上し、会計上の法人税等の金額が、利益ベースの税金相当額になるように補正
⇒会計上の法人税等=90-30=60・・・・補正の結果、税率30%になる(60÷200)
考え方としては、会計上の税金(法人税等)として計上される金額が、会計上の利益と整合するように調整しているイメージです。上記数値例は不一致項目が棚卸資産評価損だけであったため辿りやすかったですが、実際には不一致項目は多数あります。極端なP/Lでは税引前利益はゼロなのに法人税等が100計上される、といったことも考えられます。
このように、利益と課税所得のズレによる企業会計上の不整合を防ぐため、「一定の条件の元で」期間損益を対応させるように法人税等調整額を計上する処理が税効果会計です。

すべてのズレを補正するわけではない

さて、上記4.の末尾にて「一定の条件の元で」とカッコ書きしました。というわけで、最後に税効果会計の適用対象について申し上げます。重要かつややこしいです。
結論的には、「利益と課税所得のズレのうち、将来解消するもの」を適用対象とします。会計用語的に言い換えれば「一時差異」と言われます。
先ほどの例でいえば、会計上の「棚卸資産評価損」は税務上損金計上が認められないと考えられますが、現に廃棄処分され「棚卸除却損」等として計上された場合は損金計上が認められます。この結果、廃棄処分されたタイミングまで通算すれば、利益と課税所得は一致しているわけです。このように、最終的に一致する一時的なズレの限りは、利益に応じた法人税等に補正して利益と税金のバランスをとることに問題はないと考えることはできますよね。
一方、対の概念として「永久差異」があります。永久差異は税効果会計の適用対象外です。なぜか。いつまでたっても会計と税務が一致しなくなってしまうからです。
この永久差異の典型例は交際費です。税務に片足突っ込んだ話ですが、交際費は科目の性質上損金計上の範囲が限定的になっています。広く損金計上を認めてしまうと、企業が不要な接待飲食など浪費を重ねて課税所得を意図的に減らし、税負担を減らそうとするおそれがあるためです。
上記のような趣旨で損金計上が認められず利益と課税所得がズレる内容のため、将来一致するものではなく税効果会計においても対象外となっているのです。

まとめ

参考文献

おまけとして、いきなり問題集から取り組むのは大変かな、ということで参考文献をご紹介します。
■書籍
すらすら税効果会計第2版(三林昭弘、中央経済社)
https://books.rakuten.co.jp/rb/12931879/

■インターネットサイト
わかりやすい解説シリーズ「税効果」(新日本有限責任監査法人ホームページ内)
https://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/commentary/tax-effect/2011-11-28-01.html

この記事を書いたライター

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