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企画業務型裁量労働制とは?導入の条件や手続き、注意点を解説

HUPRO 編集部
企画業務型裁量労働制とは?導入の条件や手続き、注意点を解説

企画業務型裁量労働制とは、実労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間分を働いたとみなす制度です。労働時間よりも質が重視される業務に適用可能な制度ですが、導入にあたっては厳格な要件が定められており、注意点も多くあります。今回は企画業務型裁量労働制について解説していきます。

企画業務型裁量労働制とは

企画業務型裁量労働制とは、労使委員会で定めた時間、働いたものとみなす制度です。

みなし労働時間制のうちの1種類

労働基準法では以下3つのみなし労働時間制が規定されています。企画業務型裁量労働制はその1つです。

・事業場外のみなし労働時間制(第38条の2)
・専門業務型裁量労働制(第38条の3)
・企画業務型裁量労働制(第38条の4)

みなし労働時間制とは、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間分を働いたものとみなす制度です。たとえば8時間をみなし労働時間に設定した場合、1日に5時間働いても10時間働いても、8時間働いたとみなします。

企画業務型裁量労働制を導入するための前提条件

本制度を導入するためには、前提として、3つの条件を満たす必要があります。

・対象業務であること
・対象業務が存在する事業場であること
・対象労働者であること

対象業務であること

対象業務とは、以下のすべてを満たす業務を指します。

・所属する事業場の事業運営に関する業務であること
・企画、立案、調査、分析の業務であること
・業務の性質に照らし、業務の遂行の方法を大幅に労働者にゆだねる必要があると、客観的に判断される業務であること
・業務の遂行の手段および時間配分の決定などに関し、使用者が具体的に指示をしないこととする業務であること

具体的には、次のような業務が対象となり得ます。

・本社の経営企画部における業務のうち、会社全体の事業戦略を策定する業務
・事業本部の人事・労務部における業務のうち、現行の人事制度の問題点やあり方について調査・分析をおこない、新しい人事制度を策定する業務 など

反対に、次のような業務は対象となりません。

・本社の経営企画部に所属しておこなう庶務などの業務
・事業本部の人事・労務部に所属しておこなう採用業務や給与計算の業務 など

単純にホワイトカラーであることをもって対象業務とすることはできないため注意が必要です。

対象業務が存在する事業場であること

制度を導入できるのは、本社や本店などの名称にかかわらず、対象業務が存在する事業場です。どのような事業場であっても導入できるわけではありません。

対象労働者であること

対象となる労働者は、対象業務に常態として従事しており、その業務を適切に遂行するための知識や経験を有している者です。たとえば対象業務にあたり得る業務に就かせる労働者であっても、大学を卒業したばかりの新入社員などは対象外です。少なくとも3~5年の職務経験が必要とされています。

対象労働者であること

企画業務型裁量労働制を導入するための手続き

3つの前提条件を満たしたうえで、さらに次の手続きを踏む必要があります。

・対象業務が存在する事業場で労使委員会を設置すること ・労使委員会の5分の4以上の多数による議決で必要な事項を定めること ・労使委員会で定めた事項を労働基準監督署へ届け出ること ・対象労働者の同意を得ること ・本制度を導入することについて就業規則または労働協約で定めること

労使委員会とは

労使委員会とは、賃金や労働時間その他の労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対して意見を述べることを目的とした委員会を指します。使用者および事業場の労働者を代表する者が構成員となります。

労使委員会で決める内容

労使委員会では次の項目をすべて定める必要があります(労働基準法第38条の4第1項各号)。

・対象業務の範囲
・対象労働者の範囲
・労働したものとみなす時間
・健康および福祉を確保するための措置
・苦情処理のための措置
・制度の適用についての労働者本人の同意、不同意の労働者への不利益取り扱いの禁止
・決議の有効期間
・制度の実施状況にかかる記録の保存

企画業務型裁量労働制を導入する際に気を付けるポイント

本制度は使用者の恣意的な運用によって、該当する労働者に長時間労働やサービス残業を強いることになりかねない制度です。ここまで解説したように導入にはかなり厳格な要件が定められていますが、加えて以下の点にも注意しましょう。

労働者の「個別の」同意をとりつけること

重要な点として、本制度の適用について労働者本人の同意が必要です。同意を得ていないのに勝手に適用とすることはできませんし、同意しないからといって解雇やその他の不利益な取り扱いをすることもできません。就業規則で定めても個別に同意したことにはなりませんので注意を要します。

みなし労働時間を超えれば残業代を支払う

労使委員会で定めた時間が法定労働時間(8時間)を超えた場合には、その分の残業代(割増賃金)が必要です。当然、36協定の締結および届出など、残業をさせる場合の通常の手続きも必要となります。

休憩、休日、深夜労働などの規定は除外されない

本制度はあくまでも労働時間をみなす制度なので、労働時間に関して労働基準法の適用を除外するものではありません。休憩、休日、深夜労働については、労働基準法の原則にしたがい、休憩をとってもらい、休日や深夜に働いた場合には実際に働いた分について割増賃金を支払う必要があります。

長時間労働に配慮すること

本制度は労働時間の管理を労働者自身がおこなう必要がありますが、健康管理の必要性などから、会社として勤務状況をしっかり把握しなくてはなりません。労使委員会で健康および福祉に関する措置を定める必要がありますが、出退勤時刻をチェックするなどの方法によって、オーバーワークにならないよう配慮してください

まとめ

企画業務型裁量労働制は、事業運営にかかわる重要な業務をおこなう労働者に適用される制度です。対象業務や対象労働者が限定されるだけでなく、労使委員会の設置や就業規則の改定など手続き要件もかなり細かく定められています。誤った運用にならないよう、導入の際には労使でよく話し合い、不明な点は行政や専門家へ問い合わせるようにしましょう。

この記事を書いたライター

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