企業の財政状態や経営成績を示す書類である財務諸表には、連結財務諸表と呼ばれるものと個別財務諸表と呼ばれるものがあります。今回はこれらのうち、個別財務諸表に着目してどういったものであるのか、また作成するうえでの留意点について解説していきます。
財務諸表とは、冒頭にも述べましたが、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状態を表す書類のことを指しており、財務諸表を第三者に対して開示することで企業の状況を外部へ公表いたします。企業は、会社法において計算書類を作成することが求められています。また、上場会社であればこのほか有価証券報告書(四半期においては四半期報告書)を作成することが求められており、そのなかで財務諸表を作成するので、企業は必ず財務諸表を作成することとなります。財務諸表には大きく分けて2つに区分することができます。1つは連結財務諸表と呼ばれるもので、もう1つは個別財務諸表と呼ばれるものです。
会社の体制によって作成する財務諸表は異なっていきますので、順に解説していきます。
企業が自身の企業だけでなく子会社や関連会社を有している場合においては、当該企業においては連結財務諸表と個別財務諸表の2つを作成することとなります。これに対して、企業が自身のみであり子会社などを有していない場合においては個別財務諸表を作成することとなります。従って、企業が存在している場合にあっては、個別財務諸表を作成することとなりますので個別財務諸表の作成対象となる会社は全ての会社となります。ここで注意していただきたいのは、連結財務諸表を作成する会社においても個別財務諸表を作成する必要があり、作成することを免除されるわけではないという点です。
ここでは主に連結財務諸表を作成する会社を対象にお話ししていきます。
有価証券報告書において、連結財務諸表作成会社は、個別財務諸表作成において注記に関して一部省略することが認められています。個別財務諸表において注記が省略できる背景は、連結財務諸表における注記で開示しているため、投資家に対する情報提供が十分であるといえることがあります。注記の省略については、注記項目によって様々ですので省略できるか否かについては個別に検討することをお勧めいたします。個別財務諸表において注記が省略できるものが該当すればその分だけ事務的な負担等が削減できますので、一度ご検討してみるのもいいですね。
有価証券報告書と計算書類とは、それぞれ要請される法令が異なるのでご注意ください。
有価証券報告書は金融商品取引法に基づいて作成が要請されており、有価証券報告書においては当期と前期との2期間を開示することが求められています。これは、投資家に対して比較情報を提供することが重要であると考えられているためです。一方、計算書類は会社法に基づく作成が要請されており、計算書類においては当期のみを開示することとなります。ゆえに、有価証券報告書のように前期における情報は開示することが求められていない点が大きな違いとなりますのでこの点に留意しましょう。また、上場会社は有価証券報告書と計算書類の双方を作成することについて注意してください。
ここでは、財務諸表を作成するうえで参考になるものを紹介いたします。
有価証券報告書における個別財務諸表を作成する場合において参考となるのは、宝印刷社やプロネクサス社が出版している有価証券報告書作成の手引きが非常に参考になりますので、おすすめとなります。有価証券報告書を作成する会社はこの2社のどちらかに開示チェックを実施してもらっているのが一般的です。また、新たな論点などが発生した場合や新たな基準を適用することとなった場合には、他社で同様の開示事例がないかを探して参考とすることも有用です。そこで他社の開示事例を検索する際に便利なのが開示ネットという検索機能サイトです。これは契約が必要ですが、検索条件が豊富でありますので契約することを検討してみてはいかがでしょうか。また計算書類を作成する際に参考になるのは、経団連のサイトで計算書類のひな形が公表されていますのでこちらを参考にすることが非常に参考になります。
その他、監査法人が出版している財務諸表作成の手引きといった著書も参考になります。
参考サイト:(手引書の掲載)「有価証券報告書作成の手引き(2019年版)」の掲載について|株式会社プロネクサス
参考サイト:決算開示支援 有価証券報告書 等 |宝印刷株式会社
この記事では、個別財務諸表とはどういったものか、個別財務諸表の作成対象となる会社や、留意点について解説しました。また、個別財務諸表を作成するうえで参考となる情報源についても紹介いたしました。財務諸表は企業の経営成績や財政状態を表すうえで非常に重要な書類となり、第三者に公表するものですので、これらの情報を整理して作成していただければと思います。