自分がやってきた仕事が認められて昇進するのは、とても嬉しいものです。
でもご存じでしたか?人の心は、悲しいことや辛いことだけでなく、喜ばしいことでもストレスを感じてしまうのです。
職場でのうつ病は広く知られるようになってきましたが、ハラスメントや仕事の失敗といったマイナスの影響だけではなく、昇進によって生じることがあります。今回はこの「昇進うつ」について解説します。
昇進うつとは、正式な医学用語ではありません。
しかし、職場で起こるうつ病の一種として、その原因が「昇進」にあるものをいいます。
昇進自体は、会社で働く人にとっては目標であったり、仕事を評価されての結果ですから、うつ病になる本人も「嬉しい」という気持ちを持っているのが普通です。
そのため「せっかく昇進したのだから!」と、うつ病になっていても本人は気がつかないことがあります。
症状としては、うつ病と同じく以下のようなものが見られます。
出典:知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト うつ病|厚生労働省
うつ病は、一般的に女性、若年者に多いとされていますが、日本では中高年でも頻度が高くなっているのが特徴です。
では、どのような事が昇進によってうつ病の引き金になるのでしょう。
例えば以下のようなことを考えてしまう方は注意が必要です。
・周りからの期待とプレッシャーを感じる
・せっかく昇進したのに自分が望んだ・想像したとおりの仕事内容ではない
・仕事内容が変わり、急に管理職目線を持てない
・部下に思うように仕事を振れず、自分で抱え込んでしまう
・自分一人が出世してしまって同期がどう思っているか気になる
・自分一人が出世に遅れてしまって、やっと昇進できた。同期はもっと上の仕事をやっているから早く追いつきたい
・部下との関係が良くない
昇進にともなう、理想と現実のギャップ。それは昇進に限らずどのような事にもつきものですが、期待が大きすぎて自分の理想を重要視しすぎると、現実がその通りに進まないことに対してストレスを感じるようになります。
また、昇進後に「せっかく昇進したのだから」と周りの期待に応えようと自分を追い込んでしまうタイプも要注意です。傍目から見ると「◯◯さん、昇進してからも働きぶりがすごいですね」と順調に見えるのですが、本人が気つかないうちに様々な疲労が心身ともにたまってしまうこともあります。
「最近眠れない、眠りが浅い」
「逆に寝過ぎて目が覚めない」
「疲れが取れない」
「仕事でミスが増えた」
「会社に行くと思うと頭痛がしたりお腹が痛くなったりする」
「ちょっとしたことでも自分を責めてしまう」
こんな風な症状が出てきたら要注意です。
昇進というのは、プラスの要因のため、本人も周りも気がつかないところでうつ病が進行してしまう場合があります。
上記のような症状が続くときは、一度心療内科を受診してみましょう。
「環境が変わったからストレスを感じるのは当然」という前提で、自分をいたわりながら過ごし、無理をしないことが肝要です。
むしろ「うつ病は心の弱い人間がかかる病気」というような旧来の考え方をして否定してしまうことこそ症状を悪化させます。
「うつっぽい?」と思うくらいの時期に、早めに病院に行ってちゃんとケアをすることで重症化することを防ぐことができるのです。
「最近ちょっと気分が滅入りがちかも・・・・・・」というあたりで進んで休暇を取ったりするなど、心身ともに休養を取りましょう。
本格的なうつ病になると、仕事どころではありません。
悪化すると何年も苦しむことになり、休職しても復帰できない場合は最終的に退職するしかなくなってしまうのです。
現在の職場は「働き方改革」や厳しいハラスメントへの対処、時間外労働に関する考え方の厳格化で、昔より仕事がしづらくなったという管理職は少なくありません。つまり、それまで部下を押さえつけて楽をしていたわけですが・・・・・・
ちょうど今管理職になるくらいの年代ですと、学校でまだ体罰が残っていたり、パワハラ=指導、セクハラは笑って流して一人前というような旧来の考え方が残っていたかもしれません。
この過渡期を生き抜いて昇進した人は、自分の部下は権利意識が高く要求ばかりしているように見えても、自分がされていたように部下に対応するわけにはいかず、上からの指示との板挟みになって苦しむことが多いのです。
全てを背負い込まずに、「完璧な上司」になろうとせず、自分の弱さや欠点を認めて他人に任せるといった鷹揚さがある方が、部下ものびのびと行動できます。
自分の性格はこうだから、と頑なにならず、自分の中の「働き方改革」をおこない、昇進に伴うストレスをコントロールできるように、考え方を見直してみてはいかがでしょうか。