雇用保険と聞いて最初に思い浮かべるのは、退職したときにお金がもらえる、「失業手当」ですよね。雇用保険に入っている労働者と会社が受けられるメリットは、実は山ほどあります。比較的簡単に入れて、保険料は安いし、何かあった時にはお金がもらえる。今回は、雇用保険に入る4つのメリットについて解説していきます。
会社を辞めた後にもらえる、いわゆる「失業手当」(正確には、「基本手当」といいます。)は、雇用保険から出るお金として、一番分かりやすく、誰もが知っているでしょう。しかし、雇用保険から出るお金は、この「基本手当」だけではありません。
例えば、労働者が子どもを育てるために長期間仕事を休む場合、「育児休業給付金」が出ます。もらえる金額は、いつものお給料よりも少し減りますが、育児で仕事ができず、お給料をもらえない間の生活を守るためのお金として、とっても助かる制度です。女性はもちろん、男性の育児休業に対しても支給されます。
「介護休業給付金」も、介護体制を整えるため仕事ができずお休みする期間の生活を支えてくれますし、「教育訓練給付金」は、労働者がキャリアアップのため資格などの勉強をする場合の助けとなります。他にも、ここには書ききれないくらい、給付金の種類があります。
労働者が毎月払う雇用保険料は、お給料の総額に、雇用保険料率をかけて計算します。
例えば、お給料が月20万円で、会社が建設業や農林水産業以外の会社の場合は
・お給料の総額:20万円・雇用保険料率:0.3%
お給料の総額×雇用保険料率=雇用保険料
⇒ 200,000円×0.003=600円
600円をお給料から控除
そう、ひと月たったの600円。これが、社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)であれば、そうはいきません。例えば、同じように月20万円のお給料の人だったら、健康保険料は月約1万円、厚生年金保険料は月約2万円弱で、合計月3万円近く、お給料から引かれます。雇用保険料は安いのに、失業などをしたときにもらえる金額はそんなに安くないし、年金のように年を取ってからしかもらえないというわけでもありません。おトクです。
こんなにおトクな雇用保険制度、ぜひ入っておきたいですよね。実は、雇用保険に入るのは、比較的簡単。週20時間以上働くことができれば、雇用保険に入れるのです。むしろ会社には、週20時間以上働く労働者であれば、雇用保険に加入させる義務があります。
週20時間以上ですから、毎日4時間×週5日勤務、毎日6時間×週4日勤務といった時短勤務でも対象になります。社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入の目安が、週30時間であるのに比べて、ずいぶん緩い条件だと思いませんか。
ここまで、労働者側のメリットをとりあげて解説してきました。今度は、会社側のメリットについて解説していきます。
経営者様、毎年「労働保険の年度更新」で少なくない雇用保険料を払っている、と感じていらっしゃいませんか?その雇用保険料には、実は、助成金のもとになるお金が含まれているのです。雇用保険に入っている会社でないと、助成金は出ません。
助成金とは、働き方改革などの国の指針にあう取り組みをしている会社に対して、雇用保険からお金を出す仕組みです。最近、コロナウイルスの流行による休業で注目を浴びている「雇用調整助成金」も、雇用保険からお金が出ています。コロナウイルスの影響で、労働者をお休みさせて休業手当を支払ったときに、その分を補ってくれる、という趣旨の助成金です。ただでさえ売上が落ち込んでいるのに、従業員の生活も守らなくてはいけない経営者様にとっては、とてもありがたい制度ですよね。
他にも様々な助成金があります。「キャリアアップ助成金」では、パートさんやアルバイトさんを正社員に転換したときにお金がもらえますし、「両立支援等助成金」では、育児休業等をした労働者を会社が支援しているときにお金がもらえます。
とってもおトクな助成金ですが、申請方法はかなり複雑です。やり方が分からなければ、助成金を取り扱っている社会保険労務士に相談してみるのも、一つの手です。
ここまで、雇用保険に入る4つのメリットについて解説してきました。労働者にとっては、比較的簡単に入れて、保険料は安いし、何かあった時にはお金がもらえる。会社側にとっては、労働者を守ることができ、助成金ももらえる。雇用保険はとにかくおトクな制度でした。