会社には、週20時間以上働く労働者を雇用保険に加入させる義務があります。雇用保険に入ってもらった労働者には、毎月、雇用保険料を払ってもらわなくてはいけません。では、雇用保険料はどうやって計算するのでしょうか?実はとっても簡単です。
お給料の総額×雇用保険料率=雇用保険料
シンプルすぎるがゆえに、雇用保険料の計算には勘違いしやすいポイントがあります。今回は、雇用保険料の計算について、4つのポイントを解説していきます。
雇用保険料は、税金や社会保険料などを控除する前のお給料の総額に、雇用保険料率をかけて求めます。でも、「お給料の総額」って、一体何なのでしょうか。何が含まれて、何が含まれないのでしょうか?下の表に、一例をまとめました。
参考:神奈川労働局のページ
労働者が働いたことに対して支払うお金はだいたい、ここでいう「お給料の総額」に含まれます。一方、会社がよかれと思って(福利厚生的に)出すようなお金は、含まれないことが多いようです。注意が必要なのは、通勤手当やボーナスにも雇用保険料がかかるということです。
最近、コロナウイルスの流行によって、会社が休業手当を支給するケースが増えています。この休業手当に対しても、雇用保険料はかかってきます。忘れずに控除しましょう。一方、休業補償は、労働災害が起こった時に、被害にあった労働者に対して会社が支給するものです。こちらには、雇用保険料はかかりません。
社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)であれば、会社と労働者が折半負担、つまり半分ずつ負担することになっています。しかも、だいたいのお給料(標準報酬月額)によって、いくら納めるかは決まっています。しかし、雇用保険は違います。毎月のお給料の総額に、「雇用保険料率」をかけることによって、毎月いちいち計算するのです。
下の表が、雇用保険料率です。
参考:厚生労働省リーフレット
一般の事業(農林水産業等や建設業以外の事業)であれば、労働者負担分はお給料の総額の0.3%、会社負担は0.6%となっています。会社負担のほうがずっと大きいんです。ですから、雇用保険料は、単純に労働者と会社が半分ずつ負担しているわけではありません。
一般の事業で、労働者負担として、毎月のお給料から天引きする雇用保険料の計算は以下の通りです。
・お給料の総額:20万円・雇用保険料率:0.3%
お給料の総額×雇用保険料率=雇用保険料
⇒ 200,000円×0.003=600円
600円をお給料から控除する
一方、会社負担分の雇用保険料は、年度更新といって年1回計算します。年度更新については、ポイント④で解説します。
「お給料の総額」が、切りのいい数字でない場合、3/1000などの雇用保険料率をかけると、1円未満の端数が出ます。この端数は、どのように処理したらいいのでしょうか。答えは簡単、四捨五入です。
・お給料の総額:218,666円・雇用保険料率:
0.3%
お給料の総額×雇用保険料率=雇用保険料
⇒ 218,666円×0.003=655.988円
1円未満を四捨五入して、656円をお給料から控除
一方、会社負担の雇用保険料を計算する「労働保険の年度更新」では、1000円未満は切り捨てて計算します。毎月は四捨五入、年一度は切り捨て。覚えておきましょう。
ここまで、毎月労働者のお給料から差し引く雇用保険料について解説してきました。では、会社負担の雇用保険料は、どうやって計算するのでしょうか。
毎年1回、労災保険の保険料と雇用保険の保険料を計算・申告し、納めることを、「労働保険の年度更新」といいます。「労働保険の年度更新」では、労働者負担の雇用保険料と、会社負担の雇用保険料を併せて計算します。雇用保険に入っているすべての従業員に支払ったお給料の総額に、雇用保険料率(労働者・会社負担合計)をかけてもとめるのです。
・雇用保険に入っているすべての従業員のお給料の総額:1000万円・雇用保険料率:0.009
お給料の総額×雇用保険料率=雇用保険料
⇒ 10,000,000円×0.009=90,000円
雇用保険料9万円+労災保険料を申告・納付
会社は、労働者から預かっている雇用保険料と、会社側負担分の雇用保険料をまとめて国に納めることになっています。これは会社の義務です。すべての従業員のお給料の総額を計算するのは骨の折れる作業ですので、「労働保険の年度更新」を社会保険労務士に委託している経営者様も多いことでしょう。
ここまで、雇用保険料の計算についてのポイントを4つ紹介しました。
お給料の総額×雇用保険料率=雇用保険料
このシンプルな計算式に、勘違いしやすいポイントがたくさんあること、分かっていただけたでしょうか。雇用保険料を計算するときは、紹介した4つのポイントを押さえて計算するようにしましょう。