人事部に求められるの大きな役割。それは、経営計画を達成していくために必要となる人材戦略をたて、その必要数や人材像などを明らかにし、適切な人材採用と配置をおこなうこと。これを「要員計画」といいます。企業の活性化のために人材をどのように活かすのか、とても難しい業務です。今回は、要員計画についてその方法を解説していきます。
要員計画とは、英語で「personnel planning」といい、企業経営で重要といわれる「ヒト」「モノ」「カネ」のうち「ヒト」をどう配置するかを考えることです。
要員計画は、人事部門にとって最も重要かつ難しい業務の一つともいわれています。
要員計画は、単純に人員配置を決めればいいというものではありません。すでにいるメンバーの人員配置や、業務における能力の開発を見込んだ異動計画に加え、新たな人材の採用計画など、様々な観点からの計画が必要です。
経営計画に沿った事業運営のために、それぞれの部門に必要な人材を量的・質的に確保し、配置するために、場合によっては、戦略的に業務を整理し、組織自体を変えるような業務改革を伴う場合もあります。
要員計画については、人件費の観点からもしっかりと段階を踏んで計画を立てることが必要です。その手法についてはマクロ的手法とミクロ的手法があります。
マクロ的手法 |
部門ごとの適正な人件費を算出 ・目標売上高 ・目標付加価値 ・労働分配率 ・損益分岐点 |
ミクロ的手法 |
部門ごとの適正な人員数を算出 ・部門・職種・階層別の申告による必要人数を積み上げ ・職務分析 ・作業時間から必要人数の割り出し |
マクロ的手法は、「この部門でも目標売上高は◯円だが、損益分岐点を考えると、人件費は◯円までに抑えたい。となると、◯人をあてがうことができる」といったように、お金の面で人件費を割り出し、それに伴って、人数を算出する方法です。
それに対してミクロ的手法は、部門や業務ごとの要員ニーズを割り出して積み上げることから、必要な人数を割り出します。
定型作業の多い部門であれば、必要人数を把握するのは比較的容易ですが、クリエイティブな仕事や専門職などだと、スキルを持つ人を探さなくてはなりません。
すでにいる社員を時間をかけて育成するか、外部から調達するのかといったことも併せて考える必要があります。
要員計画をおこなう前に、社員の情報を把握するとともに、各部門・会社全体の人材のニーズを調査しておきましょう。
要員計画を効率的に進めるために、しておきたいことを
要員計画を効率よく進めるためには、まずは社員情報を管理する必要があります。社員情報の管理については、人事情報システムを導入するなどして、社員のキャリア管理を適切におこないましょう。
社員のデータベースに以下のような内容を保持しておくことで、会社のニーズとともに本人の希望も考慮した要員計画を立てることができるようになります。
・名前
・性別
・生年月日(年齢)
・職位
・給与
・所属
・異動履歴
・前職
・保有資格
・専門性
・本人のキャリア志向
・異動希望
・懲戒処分
・家族構成
・人事考課
・備考
会社や部門からの人材のニーズに対して、全てをかなえてしまうと、人件費などが折り合いません。社内の人材を有効活用するために、育成をおこなったり、部門の業務効率を改善するなどの手段も検討すべきでしょう。
人員を移動させる代わりに、新しいシステムを導入することで、人手不足が解消されるかもしれません。
人材も費用も有限です。要員計画を立てる際には、何を一番優先しておこなうかをしっかりと見据えてかかる必要があります。
・社内の人材を有効活用できるかどうか
・外部から人材を採用することについてのコスト
・業務自体の見直し/部署の統廃合
・システム導入などのIT化の検討
要員計画とともに、業務改革をおこなうことで、人員を配置する優先順位が低い部門の過重労働を避け、部門間における不公平感を軽減することができます。
要員計画の裏側でおこっていることは、従業員には見えにくいです。人事異動や組織変更に対する不満は常に起きやすく、忙しい部署に所属していたりすると「自分の部署ばかり忙しい、自分は評価されていない」とモチベーションダウンひいては退職につながりやすく、せっかく育てた人材が流出してしまうことにつながります。
本来であれば、経営計画に基づいた要員計画をおこなって、必要な人材を確保しておくべきなのですが、バブル崩壊後からリーマンショック、そして今回の新型コロナウイルスなど様々な要因で、企業は採用を控えたりリストラをおこなってきました。
そのため、本来であれば一番活躍すべきである中堅層の人材が少なくなっており、企業内の年齢や職務構成のアンバランスが生じている企業が多くあります。
人事部としては、最小コストで最大の成果を出せるよう、要員計画については綿密に計画立てておこなう必要があるのです。