昨今、グローバル化やIFRSの導入を進めている日本企業が増加していることに伴い、経理職にも国際化が求められるようになってきています。
そんな中で「英文経理」という言葉を聞く機会も増えてきたのではないでしょうか?本記事では、そんな英文経理の概要と必要な資格やスキルなどを解説いたします。
英文経理とは、その名の通り経理業務を英語で行うことです。日本国内における英文経理処理は、概ね以下の2パターンに分かれます。
USGAAP(米国一般会計原則)と言われる米国における会計基準やIFRS(国際会計基準)に基づく経理処理です。
USGAAPについては主にアメリカの証券取引所に上場している会社で導入されているため、外資系企業がほとんどです。一方でIFRSについては、外資系企業だけでなく日本企業でも一部の企業が導入しています。
日本の会計基準でありながら、英文の財務諸表を作成する経理処理が必要とされる企業もあります。主に日本国内で上場している会社の海外子会社とのやり取りの中で、海外の子会社で作成された英文の財務諸表や資料を日本語に翻訳し、日本基準として会計処理を行う仕事が該当します。
英文経理を行うには、英語力と経理・会計の知識の両軸が求められます。そんな英文経理を行う際にオススメの資格は、以下の2つです。
また英語力の証明するのであれば、TOEICのスコア獲得もオススメです。
USCPAとは、「U. S. Certified Public Accountant」の略で、日本語では「米国公認会計士」です。全米州政府会計委員会(NASBA)によって資格試験が実施され、日本をはじめ世界の各国で受験可能です。
世界で最も認知度が高いビジネス資格の1つであり、資格保有者は、会計事務所や一般事業会社等で幅広く活躍しています。
USCPAは日本とは異なり、資格の取得後も研鑽を重ねてレベルアップしていくことを狙いとしています。そのため、各科目の合格率は50%前後となっています。
USCPAを取得するメリットとして、公認会計士としてのキャリアアップを見込めることが挙げられます。
特に外資系企業では、日本の会計基準に加え米国の会計基準に対する理解も求められます。USCPAを取得することでグローバル企業の会計への理解をアピールできます。
また、USCPAの試験はすべて英語となっているため、英語力の証明ともなりえます。特に外資系企業の場合には基本的なビジネスランゲージは英語となりますので、USCPAを取得することで社内コミュニケーションが取りやすくなるでしょう。さらにUSCPAでは、IT関連の基礎知識も試験範囲となっているため、ITの知識を習得できる点もUSCPAを取得するメリットだといえるでしょう。
英文簿記をはじめとする、英語の会計処理や国際会計基準の理解度の指標となる資格です。日商簿記や上記の米国公認会計士のように、固有の資格という形ではなく、スコアという形で点数に応じて4段階の称号が与えられます。
こちらも米国公認会計士同様に英語での受験となりますので、幅広い会計知識と相応の英語力が必要になります。
IFRS検定はICAEWが主催していて、その名の通り国際会計基準についての検定です。全60問にマークシートで解答し、60%以上の正答で合格となります。
かつては英語のみで行われていた試験ですが、2009年以降は日本語でも受験可能となったため、上記の2資格のハードルが高いと感じる方にオススメの資格といえます。
ただし日本語受験した場合は、国際会計基準への理解は認められる一方で、英語力の証明にはならないので注意しましょう。
英文経理に対応できる英語力を証明する手段として、TOEICでハイスコアを取得するという方法もあります。USCPAなどの試験ではそこまで高い英語力が必要とされませんが、英文経理の仕事においてはより高いレベルの英語力が求められる可能性があります。
そのため上記の資格いずれかと併せ持つ形で、TOEICの800点台以上のスコアを取得しておくと良いでしょう。
いずれも難易度は高いですが、これらの資格を保有しておくことで、外資系企業や海外子会社勤務の経理職への転職が有利に進められますので、学習をしておきましょう。
なお、英文経理に関わらず経理に役立つ資格一覧については、下記のコラムで詳しく紹介しています。
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上述の通り、英文経理を行うには、高い会計スキルと英語力が必要です。会計スキルで代表的な資格が日商簿記検定や公認会計士ですが、仮に習得しても新たに米国会計基準を学習する必要があります。
また、日本基準であったとしても、海外の子会社から受領した英文の財務諸表について、疑問がある場合、現地担当者へ直接問い合わせを行い、英文の根拠資料を読み取って会計処理を行わなければなりません。
英語力に関しては、日常会話レベルの英語力だと、会計の論点について議論/質問するのが難しくなりますので、ビジネス英会話がスムーズにできるレベルがないと、就業した時にギャップを感じるかもしれません。
そし重要なのは、これらのスキルがどのレベルで求められるかは、企業の特性によって変わるということです。もし転職を検討する際は、企業から求められている会計スキルや英語スキルをしっかりと確認し、ギャップが無いようにしましょう。
求められるスキルの企業の特性による違いについては、以下の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
米国会計基準は、IFRSとのギャップが日本基準よりも少ない会計基準と言われています。日本基準ではほぼお目にかかることのない、有給休暇引当金や非継続事業の取り扱いなど、特殊な論点が米国会計基準には既に存在するため、英文経理で米国会計基準の会社での就業を経験しておくことで国際会計基準へのスライドを行う際に、日本基準の会社よりもギャップを少なくできます。
また今後の日本社会では、外資系企業の日本市場への参入や、日本企業の海外進出/グローバル化が進んでいくと予測されています。そんな中で、英文経理を経験しておくことは、将来的な転職先の選択肢を増やすことにも繋がるでしょう。
出典:金融庁「会計基準を巡る変遷と最近の状況」
英文経理の担当者の年収について、統計として発表されたデータが公開されているわけではありませんが、士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロで転職に成功された方の年収は、軒並み増加しています。
特に経理の経験はあるものの英文経理の経験が無いという方については、100万円単位での年収増が実現することが多いです。
これは英文経理ができる、もしくはできると見込めるスキルがある人の希少性が高いことや、英文経理が必要とされる企業に外資系や上場企業が多く、そのような企業の給与体系自体が高い傾向にあることが理由と考えられます。
結論から申し上げると、経理実務の経験が無い方が、英文経理担当のポジションに転職するのはかなり難しいといえます。経理の仕事は英文経理でなくても専門的で習得に時間がかかり、英文経理となるとさらにその難易度が上がるからです。
ただし、通常の経理業務の経験がある場合や、未経験でもご紹介したような活かせる取得を複数している場合は、転職に成功できる可能性はあります。資格取得や実務スキルを身に付けた上で、転職に挑戦してみるのがオススメといえます。
今回は、英文経理の概要や活かせる資格やスキルなどについて解説していきました。英文経理は今後の日本社会のグローバル化や会計基準の国際化において、ますます必要とされる業務の一つといえます。
ですので、活かせる資格やスキルを習得した上で、積極的に英文経理の経験を積んでいくのがオススメです!
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