日本では、長時間会社で勤務することを前提とした働き方を脱却させるために様々な施策を打ち出していますが、そのうちの一つが、経済産業省が2018年から導入を呼びかけている「サバティカル休暇」です。欧米のように長期間の休暇を取得することで、心身ともにリフレッシュすると同時に、これからのキャリアに役立つ資格取得などの自己啓発に役立てることができます。
今回は、サバティカル休暇の概要とメリット・デメリットについて解説します。
「サバティカル休暇」とは、もともと欧米などで「研究休暇」と呼ばれているもので、研究や旅行のため本来 7 年ごとに大学教授などに与えられる 1 年または半年の休暇のことを差します。「sabbatical」には、「安息」「休息」という意味があり、自分のポジションは保持したまま、自由な長期休暇を楽しむ事ができるのです。
なかなか長期休暇を取ることができない日本の会社にとっては夢のような制度ですが、日本でも、2018年の経済産業省の旗振り前後から、取り入れる企業も少しずつではありますが増えています。
本来であれば、休暇理由に制限を課さないのが「サバティカル休暇」なのですが、日本では、長期休暇を取ることについて「それなりの理由」が求められ、大学院への進学や、資格の取得、海外青年協力隊参加など、自己啓発やボランティアなど、はっきりとした目的のためにサバティカル休暇を与えるケースが多いです。
しかし、今までは退職してからでないとできなかったようなことが、サバティカル休暇の導入によって、復帰後のポジションを保障された上でチャレンジできるという意義は大きいといえるでしょう。
サバティカル休暇の間の給与については、会社によって異なります。
数ヶ月以上の長い休暇を有給休暇にしてしまうと、サバティカル休暇を取得できない社員との不公平感が強まるというデメリットがあるため、休暇中は無給とする企業も多いです。
サバティカル休暇中が無給の場合でも、会社に籍は残りますので、休暇に入る前には給与天引きされていた社会保険料などをまとめて支払っておいたりと、休暇前にはまとまった資金が必要となります。
休暇中の生活費や、学費や旅費など合わせると、サバティカル休暇を取得するためには、それなりの蓄えをしておく必要があるでしょう。
しかし、給与をどうするかは会社がきめることです。会社のために何かを学んで帰ってくることを期待して、手当や支援金を出したり、一部有給として収入が途絶えないようにする企業もあります。
それでは、サバティカル休暇のメリット・デメリットについて、従業員・会社側の両方からみていきましょう。
普段は時間がなくて取り組めなかったことにチャレンジできるのが、サバティカル休暇の最大のメリットです。退職せずに大学院や資格の取得、留学、ボランティア活動や別の会社での就労など、新しい経験や知識を得て、能力を伸ばすことができます。
会社としても、サバティカル休暇を与えることで退職をされずに済むだけでなく、休暇中に身につけたスキルや資格をいかし、さらに専門的な仕事をしてもらうことができるため、人材開発の手段としても一石二鳥です。
また、サバティカル休暇を与えているということを対外的に広報することで、より先進的な企業イメージを向上されることができ、より優秀な人材を確保することにもつながります。
良いことだらけのようにも見えるサバティカル休暇ですが、従業員側としては休暇で抜ける人のフォローが大変というデメリットもあります。
また、長期間不在となるサバティカル休暇を希望者全員に与えてしまうと、仕事が回らなくなる恐れがあることから、休暇取得ができるのは成績優秀者などに限られます。選考に漏れ、休暇取得がかなわなかった社員のモチベーションダウンも問題です。
また、サバティカル休暇は、休暇明けに元のポジションに戻るというのが原則ですが、組織改編などで同じポジションにつけなかったり、**休暇中に企業が大きく変わってしまって、結果的に復帰が難しくなるといった問題もあります。
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筆者の知人は、1年半のアメリカ留学の間に社長が交代しており、大幅な組織改編と営業方針の転換がおこなわれていました。その結果、留学帰りの社員は冷遇されるようになってしまったため、結果的には転職することに。。。
産休や育休の後の復帰でも、復帰後に職場になじめなかったりという問題がありますが、サバティカル休暇でも同様の問題が見られるのです。
新しい福利厚生制度の一環として注目されている「サバティカル休暇」。日本企業における長期休暇の取り扱いについてはまだなじみがないため、導入している企業も試行錯誤されているというのが現状です。
大学院進学や留学、海外青年協力隊参加など、期間を必要とする活動を目指している方は、そのために退職して再就職するのではなく、サバティカル休暇や類似の制度を導入している企業を就職・転職の一つの基準としてみてはいかがでしょうか。