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賃貸等不動産の範囲と時価以外に必要な注記事項を押さえよう

税理士 井上幹康
賃貸等不動産の範囲と時価以外に必要な注記事項を押さえよう

「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」は、財務諸表の注記事項としての賃貸等不動産の時価等の開示について定めた基準であり、内容は非常に少ないです。ただし、賃貸等不動産の範囲がややわかりにくく、時価以外にも注記が必要な事項があります。今回はそんな賃貸等不動産の範囲と注記事項をご紹介します。

賃貸等不動産の範囲

「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」(以下、「基準」という)の適用にあたってまずやらなければならないのは、時価等の注記が求められる「賃貸等不動産」の把握になります。もしも企業が「賃貸等不動産」を保有していなければ、当たり前ですが、時価等の注記も不要となります。

基準では「賃貸等不動産」の定義や範囲が規定されているのですが、一か所にまとまって規定されておらず、やや読みにくいので、以下「賃貸等不動産」に含まれるものと除かれるものを区分してご紹介します。なお、「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」(以下、「適用指針」という)にも一部賃貸等不動産の具体例が書かれているのでそちらからも引用しています。

「賃貸等不動産」に含まれるもの(基準4(2)、基準5、基準28) 1. 賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産
2. 賃貸等不動産には、次の不動産が含まれる
(1) 貸借対照表において投資不動産(投資の目的で所有する土地、建物その他の不動産)として区分されている不動産
(2) 将来の使用が見込まれていない遊休不動産
(3) 上記以外で賃貸されている不動産
3. 将来において賃貸等不動産として使用される予定で開発中の不動産や継続して賃貸等不動産として使用される予定で再開発中の不動産
4. 賃貸を目的として保有されているにもかかわらず、一時的に借手が存在していない不動産
5. 不動産がホテルやゴルフ場等として使用されているが、その所有者が第三者に賃貸し第三者が運営業務を行っている場合の当該不動産

「賃貸等不動産」から除かれているもの(基準4(2)、基準7、基準28、適用指針3)
1. 棚卸資産に分類されている不動産
2. ファイナンス・リース取引の貸手における不動産
3. 物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている不動産(注)
(注)賃貸等不動産として使用される部分については、賃貸等不動産に含める。なお、賃貸等不動産として使用される部分の割合が低いと考えられる場合は、賃貸等不動産に含めないことができる。
4. 連結財務諸表において賃貸等不動産の時価等の開示を行う場合、例えば、連結会社間で賃貸されている不動産(連結貸借対照表上、賃貸等不動産には該当しない)
5. 自ら運営しているホテルやゴルフ場等(賃貸されている不動産に該当しないもの)

また、やや細かい話にはなりますが、不動産信託の受益者については、原則として、不動産を直接保有する場合と同様に処理することから、その信託財産である不動産が賃貸等不動産に該当するときは、当該不動産の持分割合に相当する部分を賃貸等不動産として取り扱うこととされています(適用指針6)。

賃貸等不動産の範囲

必要な注記事項

賃貸等不動産に含まれる不動産を保有している場合には、財務諸表に以下の事項を注記することが求められています。

賃貸等不動産に関する注記事項(基準8)
(1) 賃貸等不動産の概要
(2) 賃貸等不動産の貸借対照表計上額及び期中における主な変動
(3) 賃貸等不動産の当期末における時価及びその算定方法
(4) 賃貸等不動産に関する損益

(3)で時価の注記が求められている以外にも、例えば(2)の期中における主な変動や(4)の賃貸等不動産に関する損益まで注記が求められていますので注意が必要です。基準では、貸借対照表計上額と当期末における時価のみならず、当該賃貸等不動産の期中における主な変動や損益も併せて注記することによって、財務諸表利用者が賃貸等不動産の収益性や投資効率などを総合的に把握することに役立つ情報を提供できると考えています(基準30)。

なお、基準では、賃貸等不動産の総額に重要性が乏しい場合は注記を省略することができるとされています。この賃貸等不動産の総額に重要性が乏しいかどうかの判断は、賃貸等不動産の貸借対照表日における時価を基礎とした金額と当該時価を基礎とした総資産の金額との比較をもって判断することとされています(適用指針8)。

まとめ

基準自体のボリュームは少ないのですが、今回ご紹介したように、賃貸等不動産の範囲がややわかりにくく、不動産を多く保有する会社にとっては、その把握に時間を要する場合があります。したがって、不動産を取得等した際に、「賃貸等不動産」が該当するか否かの判定を行い、注記が必要とされる事項(期中変動や損益)を把握・管理できるようにしておくとよいでしょう。

また、今回は触れませんでしたが、注記事項である時価の算定方法にもいくつかの種類がありますので、自社がどの方法を適用するのかについて事前に検討しておく必要があるでしょう。

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この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:コラム・学び

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