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人事と労務の違いとは?仕事内容からやりがい、求められるスキルや資格まで違いを解説!

ヒュープロ編集部 川辺
人事と労務の違いとは?仕事内容からやりがい、求められるスキルや資格まで違いを解説!

「人事」と「労務」は、ヒト・モノ・カネのうちのヒトに関わる業務として、一括りで分類されがちで、同じ部署や担当者が受け持つことも多いです。しかし、「誰のために」「何をする」かなどは大きく違いがあり、そこに求められる能力も当然違ってきます。今回は、そんな人事と労務の違いについて、紹介します。

人事と労務の役割の違い

人事と労務は、ともに企業の管理部門コーポレート部門などに所属するのが一般的です。それだけでなく、ご紹介したように会社の「ヒト」に関する業務を行うという共通点があることから、その境界線が分からないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで、まずは両者の企業における役割の違いについて見ていきましょう。

人事の役割

企業における人事は、企業活動に必要なヒトを採用し、採用したヒトが想定通りの活躍をできるようにする役割があります。
どんな企業でもヒトが充足していないと成り立ちません。充足させる手段として、採用活動がイメージしやすいと思いますが、採用できた「ヒト」が期待通りの活躍をし、長期的に就業してもらえるようにサポートすることも、人事の重要な役割なのです。

労務の役割

一方で労務は、ヒトが働きやすい企業づくりのために労働環境の整備や制度の導入・運用をするという役割を持っています。
正社員はもちろん、アルバイトやパート、業務委託など様々な就業形態の従業員が安心して働ける環境を作ることで、企業が健全な経営をできるようにしています。
また従業員のためだけでなく、労働に関する法令に企業が抵触しないようにするためにも、労務は重要な役割を果たします。

人事と労務の仕事内容の違い

人事と労務の役割が異なる分、その仕事内容も違ってきます。
ここでは、それぞれの具体的な仕事内容についてみていきましょう。

人事の仕事内容

「人事」の目的は「人財によって組織を活性化させること」です。従業員の働き方を評価し、配置や研修等の管理を行います。その領域は採用、育成、評価、異動/昇降格/配置など多岐にわたります。
組織の中の「ヒト」、いわゆる従業員等を対象とした業務です。大きく以下の3つの業務をミッションとしています。

①新卒/中途等の採用に関する諸対応

採用に関する業務、いわゆる“入り口“業務です。
管理層や部門からの過不足やニーズ聞き取り、部署や職種ごとに採用目標数を定め、求人内容精査と作成、(高校/)大学等)各学校廻り、各メディア登録/対応、合説企画/運営、人材会社の選定と依頼、応募者管理(書類選考、面接、職場見学対応、選考段取り、及び内定者や採用者フォローなど)があります。

②内部教育の仕組み構築と運用

次に教育に関する業務です。
“入り口“から入ってきた採用者や既存従業員に対して、目標に到達するためにどういう能力が必要か、そのためにはどんな知識や資格が必要か、それを得るためにはどうするか、それを誰に受けさせるか等々、いかに効率的に利益につなげるかを後述する評価とも絡めて設定し、それに基づいたカリキュラム企画/実施し、現場/管理層双方からの意見も聞き取ったうえでのアフターフォロー、習熟度や資格の取得進捗管理につなげていきます。

③業務評価実施と従業員配置/異動/昇降格等の管理

最後は育成に関する業務です。
従業員評価の面接/分析だけではありません。給与連携による賃金確定と昇給昇格(その逆の減給降格も)、報酬査定、それに関連した配置転換、及び就業規則等諸規則に沿った賞罰の管理、システムの見直し/改編/新規導入等、さらに評価面談をする管理者向けの研修等もこなします。

労務の仕事内容

労務業務の目的は「従業員が安心して働けるための組織づくりです。従業員の働く環境を管理・整備し、福利厚生の管理、労働安全衛生の管理、労使交渉の管理や折衝/調整が該当します。「ヒト」の集合体である組織全体を対象とした業務です。大まかに以下の5つの業務に携わります。

①福利厚生管理

・法定福利管理;雇用/労災/健康/厚生年金/介護の各種保険、及び休業補償、児童手当等の法定福利に関する規定の管理、適用とその対処を行います。
・法定外福利管理;通勤費、法定外の健康診断、社食/保養所/社宅等の法定外福利に関する管理と各手続を行います。

②勤怠管理

遅刻/欠勤/早退/休暇取得等、従業員の勤怠に関する情報の管理を行います。評価や報酬の土台となるものでもあり、緻密で正確な管理が求められます。

③報酬管理

勤怠情報や評価を基に給与や賞与等の報酬を決定し、所得税や住民税の手続きも並行しながら支給の手続きを行います。勤怠と同様、間違いが許されない業務であり複雑で煩雑になりがちな業務です。

④諸規定管理

人事規定、賃金規定、福利厚生規定、出張規定、休業規定、就業規則等、組織運営上必要な諸規定の保管、管理、改定、刷新、届出を行います。

⑤労働安全衛生

法定健康診断の実施運用、労働災害時の手続き、啓発活動、労使交渉等に加えて、今般では、義務化されたストレスチェックの運用や実施手続き、高ストレス者への働きかけ等がこれに当たります。

なお、労務の仕事内容については、以下の記事でも詳しく紹介しておりますので、併せてご参照ください。

人事と労務で求められるスキル・資格の違い

当然、仕事内容が異なればそれに必要なスキルや知識、活かせる資格も変わってきます。

人事で求められるスキル・資格

人事に最も必要とされるのは、コミュニケーションスキルです。人事は、応募してきた求職者との面接人材エージェントとのやり取りといった現場の業務から、社長をはじめとした経営陣と採用方針を決める部分まで、人と関わる機会が非常に多い職種といえます。ですので円滑なコミュニケーションによって業務を遂行するスキルは欠かせないでしょう。

また、年間の採用計画によって目標採用人数が決められているため、営業職ではないものの目標数字にコミットして達成に導く力も必要です。そのため、営業職などで高い実績を上げた方などはそのスキルを活かすことができるでしょう。

資格に関しては、そこまで重視されるポイントではありませんが、キャリアコンサルタントなどの資格は活かせる可能性が高いです。国家資格であり、勉強時間や費用がある程度必要ではありますが、転職活動においては有利に働くでしょう。

労務で求められるスキル・資格

人事ではそこまで重点を置かれない資格ですが、労務では社会保険労務士資格(社労士資格)の有無が選考の可否に関わってきます。

社会保険労務士資格は難関国家資格と呼ばれ、2023年の社労士試験については合格率が6.4%という結果でした。合格すれば、労務に関する高いレベルの知識を保有していることを証明できるだけでなく、「2年以上の実務を経験する」もしくは「連合会が実施する事務指定講習を修了する」して全国社会保険労務士会連合会の名簿に登録することで社会保険労務士を名乗って仕事をすることができます。
また、それと同時に社労士の独占業務を行うことも可能になります。この業務は社労士以外の人が行うことができないため、労務の仕事に直接的に活かせるようになるでしょう。

スキルの面では、人事と同じくコミュニケーションスキルが必要になってきます。労務の担当者は従業員の悩みや経営陣が感じている労務に関する課題のボトルネックを共通認識として持ち、解決に導かなくてはなりません。そのためには、社内でのコミュニケーションを積極的に取る姿勢が不可欠であるといえます。

人事のように数字的な目標が置かれる状況はあまりありませんが、その分、日常的な労務問題の解決やスケジュールに則った正しい届け出や手続きを実行するために、最新の労務に関する法制度をキャッチアップできるスキルが必要とされます。

人事と労務のやりがい

人事や労務は他の職種とは少し違ったやりがいがあります。それぞれのやりがいについて紹介していきます。

人事のやりがい

人事のやりがいは、採用した人にも所属した企業にも貢献できる仕事であることです。

採用活動において内定を出して入社した人にとって、就職や転職は人生の分岐点であり、その選択を導いてくれた人事担当者は感謝されることになるでしょう。もちろん内定後の入社辞退入社後のミスマッチによる短期離職を引き起こす可能性のある責任の大きい仕事ではありますが、その分やりがいも大きいと言えるのです。

もちろん企業にとっての貢献度も非常に高く、活躍する人材が採用できた場合などは、相応の評価をされるでしょう。採用戦略や人事計画は企業の経営戦略の大きな部分を占める要素に該当します。その計画通り、もしくはそれ以上のパフォーマンスを発揮することで、会社全体が計画通りの成長や実績を出すことに貢献できるのです。当然うまくいかなかった際に会社に与えるマイナスの影響が大きいのでリスクは伴いますが、この貢献度をやりがいに持てる方も多いのです。

労務のやりがい

労務のやりがいの一つに、最前線の現場で労務業務を経験できることが挙げられます。労務のコンサルティング業務などを行う社労士事務所では企業の労務担当が解決済みの問題についてのコンサルをすることは無いので、現場で起きている問題の一部しか知りえない可能性もありますが、企業の労務は基本的に全ての労務問題を部署内で解決していきますので、経験値は上がっていくわけです。
速いスピードで成長専門的なスキルを身に付けていけるという点は、やりがいに感じられるという方も多いです。

また、従業員に感謝される仕事ができるというのも労務の担当者がやりがいに感じるポイントの一つです。
労務担当者は、従業員から「こういう場合の手当はいくらくらいもらえるの?」とか「休暇の申請ってどうやるの?」などと、疑問を投げかけられることが日常茶飯事です。それらの身近な疑問を解消するだけでも、十分感謝されるでしょう。
ただ、従業員のより良い働き方を実現するために、労務は他にも様々な課題を解決しようと尽力しています。
働き方改革が進む今でも過度な残業が黙認されていたり、給与体系に不満を抱える人はいまだにいらっしゃるのが現状です。そんな課題を改善することで同じ会社で働く従業員に感謝されるのは、この上ないやりがいに感じる方も多いようです。

人事と労務のそれぞれに向いている人の特徴

人事に向いてる人

採用説明会や対談などで人事担当者を見ると、華やかな仕事のように思えるかもしれません。しかし実際は、スカウトを送ったり1日に何件もの面接を行うなど、地道な業務も多いため、それらを苦にせず目標に向かってがむしゃらに行動できる人に向いている仕事であるといえます。
そして重要なスキルとしてコミュニケーションスキルをご紹介しましたが、人柄に関しても明るく、相手に好印象を与えられるタイプである必要があります。理由は言うまでも無いかもしれませんが、人事は採用面接において「会社の顔」として社外に相対するため、できるだけ良い印象を与えることで、所属する企業を入社先に選んでもらわなければならないためです。
このような人柄を持ち得ている、かつそれを維持しながら仕事をするのが苦でない人に向いているといえるでしょう。

労務に向いている人

先ほどご紹介した通り、労務でもコミュニケーション能力は労務として働くには重要な要素です。労務では社内の従業員との対話が必要なシーンが多いため、相談されやすい人柄、つまり信頼できる人柄であるかどうかが大きなカギとなります。

コミュニケーション不足や話しかけづらい雰囲気があると、労務が把握できる範囲外で問題やトラブルが起きてしまうリスクにも繋がりますので、そういった働き方が苦ではない方に向いていると言えるのです。

また、労務職として仕事をすることは企業の従業員の権利を守ったり、働き方の選択肢を増やすことに繋がりますので、従業員からの感謝が一番の見返りとも言えます。
ですので、人からの感謝を身近に感じて仕事がしたいという方には適性があります。

人事や労務の年収について

人事と労務とで共通して、所属する企業の年収体系によってもらえる年収も大きく変化します。一般的に規模の大きい企業外資系企業首都圏に本社がある企業などは、ベースとなる年収が高いことが多いです。

ただし、それぞれの所属する職場内で年収をアップさせる方法が無いわけではありません。
人事職であれば、目標よりも大きい採用実績をあげたり人事戦略策定などの上流工程の仕事ができるようになることで、評価が上がり、査定にも連動していくでしょう。

労務職であれば、社労士資格を取得することで業務幅を広げるのが最も有効でしょう。企業によっては資格手当があるケースもありますので、確実に年収を上げやすい手段であるといえます。既に資格をお持ちの場合は、人事と同じくよりレベルの高い業務を任されれば年収アップに繋がる可能性は高いでしょう。

まとめ

今回は、様々な観点から人事や労務の違いについて解説していきました。企業の「「ヒト」に関する重要な役割を果たしている「人事」と「労務」ですが、中身を見てみると違いが多いことがお分かりいただけたのではないでしょうか?

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この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINE編集部の川辺です。転職エージェントとして多くのご登録者様からご相談をいただく際に伺った転職に際しての悩みや不安、疑問を解消する記事をご覧いただけるよう、日々奮闘中です!士業や管理部門、FASなどの業界に就職・転職をご検討されている方は、ぜひ業界特化の転職エージェントである、「ヒュープロ」をご活用ください!
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