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不正会計の事例とあわせて解説!なぜ不正会計はプロでも見抜けない?

HUPRO 編集部
不正会計の事例とあわせて解説!なぜ不正会計はプロでも見抜けない?

不正会計はなぜ起きてしまうのか疑問に感じたことはないでしょうか?ニュースなどで大手企業による不正会計の事例を耳にすることもあると思います。2019年に不正会計を開示した上場企業は70社で、不正会計の内訳としては、「誤り」が31件・「粉飾」が28件・「着服横領」が14件。不正会計を開示した企業数は年を追うごとに増加しており、2019年の70社というのは過去最高の数字になります。

なぜ不正会計はプロでも見抜けないのか、どうやって不正会計はおこなわれるのか、どうすれば不正会計をなくすことができるのかを、過去の不正会計の事例とともに解説します。

2019年に開示された不正会計の事例

2019年に不正会計を開示した上場企業は70社、案件数は73件でした。不正会計の内訳としては、「誤り」が31件・「粉飾」が28件・「着服横領」が14件となっています。不正会計を開示した企業数の推移は、2008年に25社・2016年に57社・2017年に53社・2018年に54社で、2019年の70社というのは過去最高の数字になります。

出典:2019年全上場企業 「不適切な会計・経理の開示企業|東京商工リサーチ」調査

2019年に開示された不正会計の一部を紹介します。

2019年2月 LIXILグループ子会社による不正会計事例

19年2月には、LIXILグループが子会社のLIXILリニューアルで虚偽受注があったと発表しています。工事の完了日を不正操作することで売上を先行計上したという不正会計です。LIXILリニューアルの内部通報により調査をおこなった結果、実態のない受注物件が発見されています。

2019年3月 大和ハウス工業の中国の合弁会社による不正会計事例

19年3月には、大和ハウス工業で業務上横領が発表されています。中国の合弁会社で資金の不正な出金があり、帳簿残高と現金に200億円以上の差額がありました。

大和ハウスによれば、関連会社の経理担当者から帳簿残高と現金に差額があるという報告を
受け調査を開始しました。ネットバンキングを利用した不正送金の形跡があり、200億円以上が使途不明金になっています。会見書類を持ち出そうとした女性社員が突然出社しなくなったことから、帳簿を確認したところ不正が発覚しています。

2019年5月 MTG子会社による不正会計事例

19年5月にはMTGの中国子会社で売上の架空計上が行われていました。中国の子会社に運ばれた商品を、販売する前に売上として計上していたという不正会計です。

2019年7月 すてきナイスグループによる不正会計事例

すてきナイスグループでは、元代表取締役会長(兼最高経営責任者)の平田恒一郎氏、元代表取締役副会長の日暮清氏、元取締役の大野弘氏の3名による2015年3月期の有価証券報告書における虚偽記載が報告されています。

すてきナイスグループは東証一部上場の持株会社です。連結対象外の会社も含めると子会社や関連会社の数は90以上で、建設資材や不動産販売など住宅関連事業をおこなっています。

複数の子会社や関連会社を利用して不適切な会計処理を行ったことが判明しています。
2015年3月期には多額の売上を架空計上し利益を水増ししていたようです。

2019年9月 ナイガイ子会社による不正会計事例

ナイガイ子会社のセンティーレワンで不適切会計がおこなわれたという不正会計が発覚しています。通信販売を手掛けているセンティーレワンが、商品在庫の計上で不適切な処理をおこなったという不正会計です。

2019年9月 平和不動産従業員による不正会計事例

平和不動産では、保有する不動産の修繕工事における工事費を本来の工事費用よりも高く計上するという不正会計が発生しています。不正を行った従業員は、工事を請け負った工事会社から見返りとして、自身が運営する会社の内装工事費を安くしてもらったようです。

2019年10月 東芝の米国子会社による不正会計事例

東芝の米国子会社で男性従業員が不正に個人的利益を得ていたという事例が報告されています。建設会社に対する工事や管理業務の費用を実際の金額よりも高く計上して発注したという不正会計です。取引先の経営者と共謀して不正会計をおこない、現金や不動産という形で自身の利益のしていたようです。

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不正会計の実態

全ての不正会計が世間に公表されているわけではありません。不正会計が公になるまでの過程や、プロでも見抜けないのはなぜか、不正会計するとどんな罰があるのかを確認しておきましょう。

不正会計が公になるまでの過程

1. 企業が決算書を1年間かけて作成します。
自分の会社の状況を自分で報告するのです。「自分の成績を自分でつける」のです。ですから、ここで意図的に不正をしてくる場合があります。

2. 次に決算が過ぎると監査法人が監査に入ります。
監査法人とは「監査のプロである公認会計士が集まった組織」です。日本には大手4つの監査法人があります。

3. そして実際に監査を始めます。
ここで不正を見つければいいのですが、見つけれずに監査法人がOKを出して世間に公表すると後で不正が明らかになった時に大問題になるのです。

4. 何らかの原因で不正が明らかになります。
最近では内部告発なんかが多いのではないでしょうか?「悪いことをやればいずれバチが当たる」のです。

しかし、監査法人は全ての不正を見つけるわけではありません。「銀行や株主にとって重要な不正」を見つけるのです。例えば、現金が1億円ある会社で1万円のズレがあっても銀行や株主は気にしないでしょう。ですから、軽微な虚偽表示は見逃されることがあります。また、労働基準法違反やセクハラなどは監査法人では見つけません。あくまでも、「会計的に重要な不正」を見つけるのです。

不正会計がプロでも見抜けないのはなぜ?

不正は大きな特徴を有します。それは「意図的に仕組まれたスキーム」ということです。換言すれば、「絶対バレないように仕組んでいるから発見しづらい」ということです。やはり会社の人は年間を通して会社にいるので、監査の時に会社に伺う監査法人も全てを見抜くことは現実的に厳しいということです。また、決算書に関する資料は会社が保管しているため、完全に隠したら監査法人が見つけることはできません。

不正会計するとどんな罰がある?

不正会計をすると刑事責任と民事責任を問われます。これは不正会計をした会社も監査法人も双方問われます。刑事責任とは、金融商品取引法違反が代表的なものです。民事責任は会社法による損害賠償が代表的なものです。損害賠償責任は、億単位で請求されることもあります。いずれにせよ、大きな痛手になることは間違いないですね。

そんなに不正会計って発生するの?

どうやって不正会計が行われるのか?

これは様々ありますが、多くは「売上・売掛金・棚卸資産」関係で起きやすいです。経理の方や簿記検定受験生であれば、聞き慣れた言葉だと思います。そして多くは取引先と通謀して帳簿上だけ売上を行なったり、監査に入る工場に他の工場から製品を輸送して棚卸資産を大きく見せるのです。ポイントは不正を行いたい動機付けがある場合に財務諸表に大きな影響を与える勘定科目が行いやすいということです。例えば、会社の倒産を防ぐために、売上を水増ししたり、流動比率を大きくするために棚卸資産を水増しするのです。

不正会計をなくすためには?

不正会計をなくすためには、会社と監査法人の密なコミュニケーションが欠かせません。会社の方が分からない時に相談しやすい環境を監査法人が提供する必要はあります。また、会社の方が相談してきたら、相談に応じることも大切です。監査をやりながらコンサルのようなアドバイスは公認会計士法に触れますが、円滑な監査のためのコミュニケーションは不可欠です。会社と監査法人の双方の信頼関係で不正会計を未然に防ぐことができるのです。

また、会社も不正を未然に防ぐ内部統制を構築して運用しておくことが不可欠です。例えば、財務部の従業員を十分な数まで増やしたり、過度なノルマを課さないなど、不正が起きやすい環境を作らないことが不可欠なのです。
このように双方が「不正会計を未然に防ぐ環境づくり」を行うことによって、不正会計は防止されるのです。

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