会計事務所の仕事内容は、クライアントの記帳代行や税務申告書の作成をはじめとして多岐にわたります。中には、税理士資格が必要な業務もありますが、科目合格者など税理士の業務をサポートするスタッフが行える業務もあります。今回は、具体的な仕事内容から会計事務所の年間スケジュールなども解説していきます。
会計事務所とは、企業や個人といったクライアントに対して、会計や税務に関するサービスを提供する事務所です。税務申告や経理処理などを代行する役割を主に担います。
なお、この「会計事務所」というのはいわゆる俗称であり、こうした会計や税務に関するサービスを提供する事務所の正式名称は「税理士事務所」と制度上では規定されています。
では、なぜ多くの税理士事務所が会計事務所という通称を使用するのかというと、「税務以外のサービスも提供できる」ということをアピールするためです。税理士事務所という正式名称であると、税務に特化しているように見えてしまうという思いがそうさせているようです。
もちろん「税理士事務所」を名乗っている事務所も多くありますが、示すものは同じなのです。
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会計事務所の仕事内容としては、主に税務および会計業務が挙げられます。
そのうち、資格が必要な業務については税理士が担当し、資格が不要な業務は会計事務が担当します。
会計事務所の具体的な仕事内容をここでは以下の7つに分けてご紹介します。
記帳代行とは、クライアントが行うべき帳簿作業業務を代行する業務のことを指します。
具体的には、クライアントから領収書や売上台帳などの各種資料を預かり、その資料を基に取引の内容や金額などを会計ソフトに入力して会計帳簿を作成します。
この記帳代行は、会計事務所が行う最も基本的な仕事であり、新入社員が初めに任されやすい仕事のひとつです。ただ、記帳代行で取り扱う取引は量が非常に多いため、正確性とスピードが求められる業務でもあります。
なお、近年ではクラウド会計が広まり、記帳代行の入力作業が大幅に簡素化されている会計事務所もあります。
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決算代行とは、上記の記帳代行で作成した会計帳簿をもとに、賃借対照表や損益計算書など税の申告のための書類を作成する業務を指します。
特定の会計期間(通常は1年間)を締めくくる決算期において、企業は期間内の活動の成果を把握する必要があります。そこで、日々の取引を記した会計帳簿をもとに仕訳を行い、年間の企業の活動記録を決算書として作成することで、企業の経営成績や財政状態を確認します。
これらの決算書は企業の経営と財務管理に欠かせないだけでなく、企業の利害関係者にも公開される重要な書類であるため、会計事務所としても期日を守り、正確に業務を行う必要があります。
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税務申告とは、上記で作成した決算書に基づき、クライアントの確定申告書を作成する業務を指します。
具体的には、税務書類の作成や税務代行、税務相談などを行いますが、これらの業務は税理士の資格を持った人のみが行える独占業務であるため、主に税理士が担当します。そのため、申告書の代理人の欄にも税理士の氏名を記載します。
税務申告書の作成においてミスが生じると、クライアントが負担する税金額の計算ミスによりクライアントの損失につながる可能性もあるため、会計事務所の業務の中でも最も重要な仕事であると言えます。
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税務申告書の提出後、税務署の処理に対して納得ができない場合に、クライアントに代わって不服申し立てを代理で行うなどの税務署対応業務も行います。
さらに、税務署による税務調査が行われた場合には、その立ち合いや対応を行うこともあります。税務調査が行われる中で、過去の帳簿や通帳などから税理士が知らなかった過去の問題点が発覚したり指摘されたりします。税理士は、税務署とクライアントの間に立って説明を行ったり、クライアントの損失を考慮しながら落としどころを見つけることを行います。
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巡回監査とは、定期的にクライアント先を訪問して、会計処理に関する確認やアドバイスを行う業務を指します。
具体的には、会計帳簿が正しく作成されているか確認したり、不明点や問題点があれば逐一顧客に確認を取り、必要に応じて指導をするなどが挙げられます。
一般的に、この監査業務は毎月クライアントを訪問して記帳代行業務などを行いながらチェックを行う月次監査と、決算期末に訪問する年次監査があります。
この監査業務はクライアントの訪問や不明点の解消等で顧客対応が必要であることから、会計事務所の仕事に慣れてきた人、会計知識のみならず顧客応対スキルのある人が任される仕事です。
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給与計算とは、記帳代行に付随する業務です。年末調整も併せて行われることが多く、給与明細と源泉徴収票の作成を主に行う業務を指します。
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コンサルティングとは、クライアントに対して税務や会計の視点から経営に関するアドバイスを行う業務を指します。
具体的には、決算書を基に企業の様々な情報を分析することで、経理業務の指導をしたり、取引の管理方法についてのアドバイスを行うなど、コンサルティングの内容は多岐にわたります。会計事務所によっては、国際税務やM&Aなど、特定の分野に特化したコンサルティング業務を行っている場合もあります。
財務戦略の最適化や合理的な経営判断を促すことで、クライアントが安定した経営をすることをサポートします。
会計ソフトが発展した近年でも、会計事務の中で取って替えることができないとされている業務であり、これからも必要とされる業務であるといえます。
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実際に会計事務所ではどんな人が働いているのでしょうか。
会計事務所のメインの業務である税務申告は、税理士がいなければ対応できません。そのため、基本的に所長やオーナーは税理士資格を有しており、それ以外に勤務している税理士がいる場合もあります。
上述の仕事内容のうち、税金の申告や納付などの税務の代理や税務書類の作成、税務相談は税理士の有資格者のみ行える独占業務です。
会計事務所のメインの業務である税務申告は税理士しか行えないと言いましたが、税理士への登録は公認会計士の有資格者も可能であるため、公認会計士が働いている場合もあります。
会計事務所では、税理士試験や公認会計士試験を準備している受験生が多く働いています。
会計事務所側としては、試験を準備する受験生は学習内容が仕事に直結するため戦力になります。
また受験生としても、会計事務所での実務経験を受験勉強に活かすことができ、さらに独立後の組織経営についても学ぶことができます。さらに会計事務所であれば、他の職場より受験勉強に対する理解があり、働きながら受験を準備することができるため、生計を維持しながら合格を目指したい方は会計事務所で多く働いています。
このように税理士試験準備中の職員や、税理士試験に科目合格をしている職員は税理士補助として働くことが一般的です。
税理士が行う独占業務のサポートを主に行い、書類の作成支援や、税務申告書の作成補助などが挙げられます。
〈参考記事〉
会計事務所では、子育てや育児が終わった職場復帰先としてパートや時短勤務で働く方や、学生の方がアルバイトやインターンとして働くこともあります。
基本的には内勤で、記帳代行や、決算業務、その他事務作業を行います。
中には税理士や会計士を目指す方もいらっしゃいますが、税理士を目指さない税理士補助として働く方も多く見られます。
〈参考記事〉
ここまで紹介した会計事務所の仕事内容について、年間の流れとスケジュールについてみていきましょう。
一般的な会計事務所では、以下のようなスケジュールで仕事が行われています。
1月 | 12月決算の決算業務 |
2月 | 12月決算の確定申告 |
4月 | 3月決算の決算業務 |
5月 | 3月決算の確定申告 |
6月 | 固定資産税・都市計画税の納付 |
11月 | 3月決算の中間報告 |
12月 | 年末調整、源泉徴収票の交付 |
毎年ほぼ同じスケジュールで仕事が行われます。そのため、自身の年間計画が立てやすく、また有休もとりやすい点も魅力といえます。
ただ、コンサルティング業務に力を入れている会計事務所においては、臨時的に発生する業務も多くなるため、不定期に忙しく休みがとりにくい場合もある点に注意が必要です。
年末調整が始まる12月から企業の決算期の確定申告が終わる5月までは、会計事務所にとっては繁忙期となります。
GWも、事務所によっては忙しくなる傾向にあり休日に出勤となる事務所もあるでしょう。
なお、個人事業主のクライアントが多い会計事務所においては、確定申告が行われる2月中旬から3月中旬が繫忙期となります。
一方で、確定申告後の6月から11月は閑散期となります。比較的休みの取りやすい事務所も多く、8月の税理士試験に備えて試験休暇を付与してもらえることもあるでしょう。
また、事務所はこの閑散期には採用に力を入れる傾向にあるので、転職をお考えの方は積極的に動くことをお勧めします。
〈参考記事〉
では、実際に会計事務所で仕事を行うにあたり、必要な資格やスキルはあるのでしょうか。
上述の通り、会計事務所の仕事の中では税理士のみ行うことができる業務が存在します。
もちろん、会計事務所で働くだけであれば、税理士の資格は必須ではありません。ただ、資格を保有していないだけで仕事の幅は大きく狭まることになります。
〈参考記事〉
会計事務所で働くうえで必要なスキルとして、現代ではまず第一にパソコンのスキルがあがります。
現在はほとんどの職場で会計ソフトを使用しており、使い方はソフトによって違ってきますが、パソコンのスキルは最低限必要になります。パソコンの資格としてはMOS(Microsoft Office Specialist(マイクロソフトオフィススペシャリスト)を取得しているとメリットになります。
会計事務所には、税理士や公認会計士の資格を持たない人も多く働いています。
しかし、会計事務所の業務を行うにあたっては、会計や税務に関する専門知識が必要な場面が多いため、税務関連の知識が重要となってきます。
例えば、会計事務所のメインの業務である記帳代行業務では、簿記の知識が必要となります。実際に会計事務所の求人でも日商簿記2級以上や税理士試験の科目合格を必須・歓迎資格として載せているケースも少なくないです。
〈参考記事〉
ここまで紹介した会計事務所の仕事に向いている人の特徴について、ここからは解説していきます。
ここでは、実際に会計事務の仕事をしている人の意見をご紹介します。会計事務の仕事をしたいと思っている人は、ぜひ参考にしてください。
会計事務所のメインの業務である記帳代行業務などはルーティン的な作業を中心としています。ただ、お金を取り扱う以上ミスは許されない業務になるため、正確に淡々と業務を完了させられる人は向いているといえるでしょう。
また、会計事務所は、基本的に計算作業がメインとなり数字を取り扱います。パソコンで書類を作成した場合でも、最終的には自分で計算して数字を細かくチェックする必要があるため、数字の処理が苦であると感じなれば問題ないでしょう。
さらに、会計事務所での仕事はクライアントとのやりとりが必須となります。ですので対人コミュニケーション力は勿論、社会人としてのマナーも最低限は身に着けている必要があります。
最後に、会計事務所への転職を考える方からよく聞かれる会計事務所の働き方と、会計事務所で働くメリットについて見ていきましょう。
新卒・中途に関わらず、会計事務所はブラックだからやめとけと言われることがあります。
その理由としては、以下の3点が考えられます。
会計事務所は、事業会社の確定申告や決算の時期が繁忙期に当たるため、残業が増えたり、激務になることが多く見られます。ですが、最近は業務分担を徹底することで、繁忙期の激務を避けるような業務体制を築いている事務所も増えてきました。
会計事務所にはじめて勤務する人は、業務を行ううえで必要となる簿記をはじめとした税務・会計の専門知識を習得することが難しい、きついと感じることがあるかもしれません。また、毎年変わる法律などについても常に最新の状態にアップデートしておかなければいけないため、勉強時間の確保は必須となります。
ただ、新しく得た知識によって顧客により良い提案をしてそれを受け入れてもらえた際、またそれにより顧問料収入を多く得ることが出来て給与が上がることになる際等には、やりがいを感じて面白いと感じるポイントにもなります。
多くの会計事務所は、税理士や公認会計士の資格を持つ所長やオーナーを中心に、国家資格を持つ職員と事務員で成り立っています。そのため、一部の大手会計事務所を除いては、所長やオーナーといった上司が変わることはほぼないため、人間関係を良好に保つのが大変というイメージがあります。
上記のような意見もありますが、どの業界に属しても、きついと感じるか、面白いと感じるかは人それぞれです。会計事務所で働くにあたってのメリットについて最後にご紹介します。
会計事務所で働くことで、税務の専門家としてスキルを磨くことができます。
税理士の独占業務は有資格者にしか行えませんが、非独占業務については全て資格を持っていなくてもできる仕事ですので、担当することによって、十分、税務の専門家になることができるのです。
こうして税に関するスキルを磨くことで、会計事務所内でキャリアアップを目指したり、他の会計事務所に転職してリ、また企業経理や税理士を目指すなど、将来のキャリアの選択肢を広げることに繋がります。
税理士を目指す方にとっては、税理士試験の勉強をしながら働ける点がメリットといえるでしょう。税理士試験は税理士になるために合格が必須の試験ですが、国家試験の中でも難関とされており、5年ほどかけて計5科目を取得する人が多いです。その期間、予備校に通ったり、毎年の試験前に勉強時間を多めに取るのは、他の企業では難しいです。一方で会計事務所では、資格取得を応援すべく、試験に合わせて柔軟な働き方が可能な事務所が多いので、税理士試験合格を目指す人には大きなメリットになります。
〈参考記事〉
今回は、一般的な会計事務所の仕事内容を主に解説してきました。
会計事務所には税理士や公認会計士の他に税理士補助など様々なスタッフが在籍しており、クライアントの税務・会計業務をサポートしています。税理士の資格を持っていなくても行える様々な仕事があるため、家事や子育てと両立するためのパート勤務や、資格取得の勉強をしながら働くことも可能です。
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〈参考記事〉