中小企業会計とは、中小企業に向けた会計のルールのことをいいます。日本の多くは中小企業なので、しっかりとこの中小企業会計の会計ルールを理解し、利用していくことはとても重要です。適切に利用できれば、メリットも受けられます。今回は、中小企業会計のなかでも中小会計要項にスポットを当て、解説していきます。
中小企業向けの会計ルールとして、中小会計指針そして中小会計要領の2つが存在しています。どちらも公的機関が関わって制定されており、法的拘束力のない規範、またガイドラインの扱いは同じです。ただ、中小会計指針は「国際会計基準(IFRS)」の強い影響を受けている大企業向けの会計基準をベースとしており、中小会計要領は日本の伝統的である企業会計原則をベースとしているという点での違いがあります。
中小会計指針は、国際会計基準(IFRS)を基準としているので、毎年、基準の大きな変更が行われるため、中小企業にとっては利用しにくいものではあるのですが、一定水準以上の計算書類が作成できるというメリットがあります。一方の中小会計要領はほぼ改訂されるようなことはなく、今まで多くの中小企業が利用してきた企業会計方法で利用できます。このように、ほぼすべての中小企業にとっては、中小会計要領を利用する方が分かりやすく実用的であるといえます。そこで、ここでは中小企業会計の中でも特に中小会計要領について解説を進めます。
中小会計要領は、中小企業の経営者が会計ルールを理解しやすく、自社の経営状況を把握してそれを役立てられることを目的として作られています。そのため、次のようなポイントを重視しています。
・中小企業の利害関係者(株主、金融機関、取引先など)に対して情報提供をすること
・中小企業の会計慣行を考慮し、会計と税制の調和をとりながら、会計計算規則に準拠すること
・計算書類などの作成に関する負担は最小限に抑え、中小企業に必要以上の負担を課さないこと
そして、これらの中小会計要領の対象となる企業は、「禁輸商品取引法の規制の適用となる会社」そして「会社法上の会計監査人を設置している会社」を除いた株式会社とされています。法人税法で定められている会計処理を行っている会社や、会社情報の開示を求められる範囲が限られているような場合に、適している会計ルールだといえるでしょう。しかし、これらの企業しか利用できないというわけではありません。
中小企業会計のなかでも中小会計要領を利用して会計を行うことで得られるものとは、どのようなものがあるのでしょうか。
日本政策金融公庫は、中小会計要領を利用している中小企業や、利用を目指そうとしている中小企業に対し、優遇のある融資制度を設けています。それが「中小企業会計活用強化資金」であり、中小企業会計要領の利用を目指している中小企業を対象に基準金利での貸し付けをしています。また、中小企業会計要領を安全に利用しているか、利用する予定があるといったような要件を満たすことができれば、基準金利よりも0.4%も低い優遇金利が適用されるケースもあるのです。また、同じように日本政策金融公庫による「中小企業経理力強化資金」でも、中小企業会計要領を利用している中小企業に対しては、0.1%の利率優遇をしています。
ほかに日本政策金融公庫以外でも、多くの地方銀行または信用金庫などが中小企業会計要領を利用している中小企業を対象に、有利な融資制度を揃えています。例えば、遠州信用金庫においては、日本税理士会連合会が作成した「中小企業の会計についてのチェックリスト」に税理士が捺印したものを提出できる中小企業に対しては、融資利率を0.2~0.3%も優遇をしているのです。
中小企業庁などが行う補助金事業に応募をする時点で中小会計要領を採用していれば、審査において加点を受けられるというケースがあります。年度により対象事業は変わるのですが、さまざまな事業への助成金が用意されています。
中小会計要領は、経営面の分析にも活用することが可能です。例えば、「中小企業実体基本調査」では、中小企業の財務指標の業種別における平均値を知ることができます。自己資本率をはじめ16個の経営指針について記載があるので、自社の指針と比べることで、自社の経営状況を客観的に分析することができるのです。また、独立行政法人中小企業基盤整備機構のシステムを用いての経営診断も可能です。無料で利用ができ、登録も不要なので、ぜひ活用してください。
中小企業会計には中小会計指針と中小会計要領があり、中小会計要領に沿って会計処理を行うことでさまざまなメリットが受けられます。なかでも融資が基準金利以下で受けられたり、助成金を受けやすくなるといったことは、中小企業にとってはとても良いことだといえます。中小企業会計に携わっている人は、中小会計要領の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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