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東証一部に上場する条件は?株式数や利益額など最近の流れとともに解説!

HUPRO 編集部
東証一部に上場する条件は?株式数や利益額など最近の流れとともに解説!

多くの起業家にとって、株式上場は最大の夢でもあるでしょう。また、近年はマザーズやJASDAQなど上場への条件も下がり、一般のベンチャー企業にとっても上場が身近な存在になりつつあります。今回は、近年増加傾向にある東証一部上場への条件を中心に、なぜ増加傾向にあるのかの背景も含め解説していきます。

そもそも上場についてあまり理解できていないという方はこちらのコラムを先にご覧ください。

東証一部上場への条件

まず、このコラムを執筆している時点での東証一部の上場基準を解説します。基本的に東証二部から東証一部へ上場することを考えます。

①時価総額及び純資産

まず、企業の時価総額が上場時に250億円以上あることが求められます。時価総額ですので、発行済株式の時価の合計が250億円以上というと、純資産が250億円近くあると考えられるので、結構な規模となります。

しかし、ある程度将来性が見込まれる企業であれば純資産の何倍もの時価がつくことになるため、場合によっては純資産が数十億円でも時価総額が250億円以上になることもあります。

ただし、純資産は最低でも10億円以上ないといけません。これは、いくら将来性があると言っても手元資金が全くない企業であれば倒産のリスクがあるためです。正確には連結純資産の額が10億円以上で、かつ、単体純資産の額が負でないことと定められています。

②株式数

また、株式数にも制限があり、流通株式が2万単位以上ある必要があります。
まず流通株式というのは、オーナー等が保有していない株式のことを言います。通常オーナーは、インサイダーや経営権の安定化のために基本的に株式を売りません。

ですから、動く株式があまりにも少ないと、せっかく東証一部に上場したといっても一般の投資家が売買することができません。
また、流通株式数が株式全体の35%以上あることが条件となります。これも、いくら株式数が多いと言っても流通する比率が低ければ結果として売買できないためです。

③利益の額

また、もっとも重要な指標の一つとして、利益基準があり、次のうちの一つを満たす必要があります。
・直近2年間の利益の額が5億円以上
・株式の時価総額が500億円以上

利益が5億円以上出ていれば申し分ないのですが、研究開発がかさんでいる企業や先行投資をしているような企業の場合は利益が出ていない可能性があります。しかし、将来性を買われて時価総額が500億円以上であれば上場の基準を満たすこととなります。

④株主の人数

この他、上場時の株式の人数も重要となります。基準としては2200人以上の株主が必要です。
これは、いくら流通株がたくさんあったとしても特定の株主しか保有していなかった場合は結果として流通しない可能性もありますし、相場の操縦も簡単にできてしまうからです。

⑤事業の継続年数

事業の継続年数も重要なポイントです。
最低限3年間は事業を継続しており、また取締役会が運営されている必要があります。これは、まず最低限2年間公認会計士による監査を受けていなければならないため、2年間は最低限必要となり、その上で2年前の期首も監査対象となるため、最低限プラス1年必要となり、3年の縛りが出てきます。

⑥会計監査の状況

企業がいくら利益が出ていると言っていても本当に出ているかどうかは誰にもわかりません。よって、監査法人による会計監査が必要となります。

この監査法人による監査は先ほどお話した通り最低2年間行われる必要があります。また、監査を受けていれば良いだけではなく、財務諸表に虚偽記載がなく、かつ直近の財務諸表では無限定適正意見、その前の財務諸表では無限定適正意見もしくは限定付きの適正意見を入手する必要があります。

会計監査について詳しくは下記の記事をご覧ください。

この他、内部統制監査報告書も基本的に適正であることが求められます。ここで、無限定適正意見というのは、企業の作成した財務諸表が重要な点において虚偽表示が無かったことを証明するものです。

限定付適正意見というのは、全体としては投資家の判断を誤らせるほどの重要な間違いはないものの、ある一部分だけは注意しておいてくださいというものです。

⑦その他の条項

これ以外にも色々と細かい基準があります。株式事務を外部の事務代行機関に任せていることや、株式の譲渡制限が解除されていること、単元株式数が一定の要件を満たすことなどです。

これらの点については基本的に信託銀行などの証券代行と呼ばれる機関に任せておけば特段間違えるようなところではありません。

参考:上場審査基準|日本取引所グループHP

東証一部上場の条件見直し

ここ最近東証一部への鞍替えが続出していて、現在は2000社を超える企業が東証一部に上場していることとなっています。これは、他のマザーズやJASDAQ等の市場の合計よりも多くなっており、何でもかんでも東証一部とみなされてしまっています。
東証一部上場企業増加の背景にあるのは、東証二部やマザーズから東証一部への上場基準の優遇措置が挙げられます。

新規上場の場合、上述の通り、東証一部への上場には時価総額250億円以上の定めがあります。しかし、東証二部やマザーズ上場企業の東証一部への鞍替えの場合は、時価総額が40億円以上で良いとされています。

実際に、近年大幅に増加しているのは、東証二部やマザーズからの東証一部上場です。ここ数年だと、ファイバーゲートやソウルドアウト、ラクスルなどがマザーズ上場後に3年未満で東証一部上場を果たしています。

企業としては、一部上場することで、信用が上がり資金調達も行いやすくなるため、当然に一部上場を目指します。

しかし、これでは東証一部の増加傾向が今後も変わらず、東証一部の価値が下がってしまうということで、現在、東証はさらに高い基準のプレミアム市場を作ろうとしています。ただ、プレミアム市場については執筆現在明らかになっていないので、今後の東証の動向に注目する必要があるでしょう。

参考:一部指定・指定替え・市場変更基準|日本取引所グループHP

まとめ

東証一部上場の条件は確かにハードルが高いのですが、現在はそのハードルを多数の企業が超えてしまっているのも事実です。
今後、東証一部よりも高いランクの市場ができる可能性が高いので、これからの東証の動きに注目が必要でしょう。

この記事を書いたライター

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