利益剰余金は、財務諸表における純資産の部に開示される項目です。利益剰余金の変動は会社にとって重要な事象により変動であり、主要株主や金融機関にとっても重要な科目として着目されています。今回は、利益剰余金の定義に触れつつ、取り崩される主な事象と手続き並びに会計処理について解説していきます。
利益剰余金とは、財務諸表における純資産の部で開示される項目の1つで資本項目とされています。利益剰余金は、利益準備金とその他利益剰余金の2つの要素で構成されており、更にその他利益剰余金は任意積立金と繰越利益剰余金で構成されています。
利益剰余金について詳しくはこちらをご覧ください。
関連記事:利益剰余金とは?内部留保の背景含め、詳しくわかりやすく解説
利益剰余金の増減要因について主な要因について記載していきます。まず、利益剰余金の増加要因としては主に、剰余金の配当を実施した場合に利益準備金に積み立てた場合や会社の1年間の経営成績が黒字であった場合の当期純利益を計上した場合です。一方で、利益剰余金の減少要因としては、利益剰余金を原資として剰余金の配当を行った場合や、1年間の経営成績が赤字であった場合の当期純損失を計上した場合です。企業が作成している株主資本等変動計算書を確認していただくとその会社にとって利益剰余金がどのように増減しているか把握できますので確認するのもおすすめです。
利益剰余金の取崩す主な事象である利益剰余金を配当原資とした剰余金の配当について会社法で規定がされています。具体的には会社法453条において、株主に対して剰余金の配当をすることができると定められています。次の段落で具体的に見ていきます。
剰余金の配当を実施するためには、会社法454条において株主総会を開催してそこで剰余金の配当を実施することを決議し、承認がされなければならないとされています。上場会社であれば、企業のホームページで株主総会議事録や株主通信、招集通知とかで株主総会での議題が掲載されています。剰余金の配当を行う会社であれば、株主総会の中で決議事項として記載されているので実際に株主総会の決議で承認される事象であることが確認できますので一度見てもらえると理解が深まると思います。株主総会は会社にとって最上位での会議体であり、そこで決議されるものであることから会社にとって重要な事象であることがわかると思います。また配当には主に2種類があり、上記で説明した年度末における配当と事業年度の中で配当が実施される、いわゆる中間配当があります。中間配当についても原則としては、株主総会決議によって決議承認されることが求められておりますが、例外として取締役会設置会社に限っては取締役会の決議で行うことができるとされています。
実際に剰余金の配当を実施するとなったときに配当金額について自由に決めれるかというとそうではありません。会社法445条4項において配当金として支出する金額の1/10を資本金の1/4の額に達するまで、利益準備金として積み立てなければならないとされており、いずれか少ないほうの額を準備金に積み立てる必要があるとされています。これは、剰余金の配当は会社の外に資金を流出することとなるので会社の財政基盤が少なからずとも弱体化してしまいますので債権者の利益を保護するために会社法ではこのような規定がなされています。
ここでは具体的に剰余金の配当における会計の仕訳について見ていきます。具体例として年度末における剰余金の配当について会計仕訳を解説していきますが、中間配当においても会計処理や利益準備金に積み立てる金額の計算方法は同様となりますのでここでは割愛します。
(前提条件)
資本金5,000円、資本準備金500円、利益準備金500円
剰余金の配当金額2,000円
まず、積み立てとして計上しなければならない金額について見ていきます。
会社法445条4項で定められている規定に沿って以下計算します。
・資本金(5,000円)×1/4-(資本準備金(500円)+利益準備金(500円))=250円
・配当金額(2,000円)×1/10=200円
上記の結果、いずれか少ない額である200円が積み立てる金額となります。
株主総会配当決議時
(会計仕訳)
仕訳を入力する際の伝票日付は、株主総会開催日となります。
配当支払時
(会計仕訳)
利益剰余金の取り崩しを行う主要な事象とその会計処理について説明させていただきました。剰余金の配当で特に気を付けなければならないポイントは2つあります。1つ目は、剰余金の配当決議は株主総会で行うこと。2点目は、剰余金の配当を行う際に一定の金額を利益準備金に積み立てるということです。特に2点目については剰余金の配当を行う際に一定の金額を積み立てること自体を失念してしまったり、計算を誤ってしまったりということが考えられますのでその点は注意してください。