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利益剰余金とは?内部留保とは違う?わかりやすく解説します!

HUPRO 編集部
利益剰余金とは?内部留保とは違う?わかりやすく解説します!

利益剰余金(りえきじょうよきん)とは、企業が生み出した利益を分配せずに社内で積み立てたものです。いわゆる「内部留保」と呼ばれることもあります。利益剰余金の金額が高い場合は、その企業の経営は安定しているとみなされるなど、企業の経営成績のかなめともなる指標です。本記事では、この利益剰余金について詳しくわかりやすく解説していきます。

利益余剰金とは?貸借対照表で確認してみよう

この図は、決算書における貸借対照表(バランスシート)の右下にある「純資産の部」を分解したものです。

利益剰余金は、本業の営業売上から費用と税金を差し引いた純利益から、役員報酬や配当を支払った後に残るお金で、利益準備金その他利益準備金(積立金・繰越利益準備金)から成り立っています。

このうち、利益準備金については、資本準備金と共に「法定準備金」として、会社法により積立をすることが義務付けられています。社債を取得した会社の債権者保護のためです。

剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。

(会社法第445条)

しかし、それだとずっと利益準備金が積み上がっていくだけなので、やはりこちらも会社法にて限度額が決められています。

当該剰余金の配当をする日における準備金の額が当該日における基準資本金額(資本金の額に四分の一を乗じて得た額をいう)以上である場合 0

(会社計算規則第22条第2項)

つまり、利益準備金がすでに資本金の1/4以上であれば、超える額は「その他利益剰余金」として積み立てていきます。結果的に、会社の利益が増えれば利益剰余金が順調に増えていくというわけです。これを一般的には「内部留保」と呼んでいますが、「内部留保」という言葉は会計用語ではないので、会計や簿記のテキストには出てきませんので注意してください。

利益剰余金=内部留保は現金ではないことが多い

「利益剰余金」は、いわゆる「内部留保」した利益の累積です。そして、貸借対照表の名目が「利益剰余金」と「金」の文字が入っているため、利益剰余金はすぐに流用可能な現金で積立てられていると思われがちです。

確かに利益剰余金は、「貸借対照表」の資産の部で確認できます。しかし、この「資産」というのが曲者で、「現預金」とは限らないのです。例えば「建物」「土地」といった不動産や有価証券も「資産」に含まれます。製造業なら設備投資した工場や機械といったものも「資産」です。

もちろん現預金もありますが、内部留保というものはその内訳は現金なのか株なのか設備なのかというのは、貸借対照表だけ見てもわからないのです。
貸借対照表上は「利益剰余金」だとしても、それが従業員が働いているオフィスや工場といったことも十分にあり得ます。

例えば企業が「本社ビルを売却」といったようなニュースが出ることがありますが、あれは内部留保の吐き出しを行っているのです。赤字補てんなどを現金で行う必要があるけれども、手許に現金がないので、不動産を売却したお金を使おうとしているのですね。

もし現預金や有価証券以外の内部留保を処理し始めたとなると、その企業の経営はかなり切羽詰まっているといえる状況です。

利益剰余金=内部留保を企業が貯めたがる理由

利益剰余金は会社に蓄積されていることから「内部留保」と呼ばれ「会社がお金を社員に還元せずに貯め込んでいる」と、とかく悪者にされがちです。特に近年は、株価の上昇もあり、大企業の内部留保が巨額に膨れ上がっていると報道されています。

しかし、内部留保というのは企業の体力を示しており、いざという時の貯金でもあるのです。企業経営というのはいつ何があるかわかりません。例えば2020年2月現在、新型コロナウイルスの影響で企業活動がストップしたり、停滞したりと、世界中の経済が大打撃を受けています。

このような時に、内部留保がある企業であれば、仮に経営がストップしてもしばらくは生き延びることができるのです。内部留保を現金で持っていなかったとしても、例えば不動産であれば担保にしたり売却したりできますので、資金繰りの条件をより良いものにできるでしょう。

逆に、内部留保がない自転車操業の企業は大変危険です。経営基盤が脆弱な企業は、リスクがあるとして低金利の融資を受けられず、利息の高い借金によって経営がより圧迫されてしまいます。

企業にとって一番のリスクは、資金繰りが回らなくなって債務超過に陥り倒産することです。「利益が出ているのに、なぜ社員の給料は上がらないのか」とよく言われます。しかし、大きな企業ほど、人件費を含めた固定費にも巨額のお金がかかるため、リスク管理の観点からも、企業経営がストップしても経営を維持できる利益剰余金をストックしておくのは理にかなっているのです。

内部留保について詳しくは以下の記事もご覧ください。
関連記事:内部留保って何?内部留保が多い事は悪い事なのか?

内部留保は実際どのぐらい?

2018年度は、企業の内部留保が7年連続で最高の463兆円になったとニュースにもなりました。
企業がこれからの先細りを懸念して身を守るために利益を貯めておこうとしている姿勢がうかがえます。
それだけでなく、他社の買収など、経営上の攻めを行うためにも内部留保は必要です。内部留保がなければ、外部から資金調達を行わなければならず、利息の付く借金によって経営が圧迫されるからです。

ちなみに、日本を代表する企業で言うと、トヨタ自動車の利益剰余金は2018年度で21兆9875億円あります。この利益剰余金の厚みが、若者の自動車離れといわれて自動車が売れないといわれる中でもトヨタの経営を支えているといえます。
自動車業界では、2019年現在、経営が揺れている日産自動車も4.9兆円の利益剰余金があります。しかしながら、2019年第一四半期の純利益が、前年同期比94.5%マイナスの64億円となっており、12500人の人員削減も発表されているなど大変厳しい状況です。

大きな企業ほど、運転資金にも巨額のお金がかかるので、いざという時のためになるべく利益剰余金、つまり内部留保を手元に残しておこうとします。

まとめ

以上、利益余剰金について説明しました。「内部留保」という言葉はよくテレビのニュースなどで耳にするかと思いますが、それが利益余剰金と認識できていない人も多いかもしれません。会計についてあまり詳しくない人も、この機会にしっかりと利益余剰金について理解しておきましょう。

この記事を書いたライター

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