転職活動における面接の際に採用担当者がまず聞くことは、志望動機です。この志望動機によって採用の可否が大きく変わるにも関わらず、意外としっかりと考えていない人を見かけます。今回は、公認会計士が転職する際の志望動機について、NGなポイントや業種ごとの書き方などを、現役公認会計士が解説します。
まずは志望動機に関わる重要なポイントとして、公認会計士が人気である理由について見ていきましょう。
公認会計士は言わずと知れた会計や監査に関わる難関国家資格です。難易度が高い一方で、公認会計士を取得して資格を活かした仕事をしたいという方は多いです。では、なぜそれほど公認会計士の仕事は人気を集めているのでしょうか?
厚生労働省のHPによると、公認会計士の平均年収は約746万円で、日本の平均年収である461万円に比べると、約300万円ほど高くなっています。
また、高年収の基準ともいえる1,000万円を稼いでいる方も多いです。もちろん働く職場や経験年数、スキルによって上下しますが、資格の難易度に見合った年収がもらえ、高年収も狙いやすいという部分は、人気を集める大きな要因となっているでしょう。
公認会計士のニーズの高さは、キャリアの選択肢の広さにも繋がっています。公認会計士の大多数は監査法人に勤めているものの、他の職場で働く人が徐々に増えつつあるというのが、近年の状況です。一例ですが、以下のような職場でキャリアを描くことができます。
公認会計士が独占業務として行う監査業務は、企業の財務諸表の信頼性を証明する業務です。財務諸表はその企業の公式の情報として社会に公開され、取引を検討している企業や、投資をしている株主が意思決定の参考にする資料となります。
つまり、これらの意思決定に関わる資料の信憑性を担保する監査業務は、社会的に重要な役割を果たしていることになります。この社会貢献性の高さや、責任感の重さを魅力に感じて公認会計士を目指すという方も多いようです。
会計士の転職において何が重要か考えた時、真っ先に思いつくものは何でしょうか。
その人のスキルやコミュニケーション能力はとても重要な項目となります。ですが、志望動機というものが最も大切であることにお気づきでしょうか。
なぜ志望動機が大事かというと、会計士である以上は一定の知識やスキルがあるという保証がされているので、事業会社等では能力を会計士に確認することはそれほど多くありません。むしろ面接する側は会計士でないこともありますので、どのくらいの能力かはわからないのが普通です。よって、転職活動は比較的楽になると言えるでしょう。
一方で、会計士が例えば事業会社に転職活動をする場合は会社としては、「スキルはあるけれどずっとこの会社にいてくれるだろうか」「高い報酬を払うのだから他の会計士とどこが違うのだろうか」と考えることになります。
そこで、志望動機がしっかりしていれば、即戦力かつ長く勤務してくれるということが会社にもわかり、安心して採用に進むこととなるのです。
会計士というのは会計系では最も難しい資格の一つで、これを持っているだけで転職市場では有利と言えます。
一方で、「会計士持っていてうちにずっといてくれるのかな?」と思われるのも事実です。よって、会計士の志望動機は必ずポジティブなものである必要があります。
例えば、「前の会社はやりたいことがなかったから辞めた」とか「上司の態度が気に入らなかったから辞めた」というのは本当にそんな理由だったとしても言わない方が良いです。
そうであれば、「貴社では自分のやりたいことができると思って応募した」とか「今までの経験を貴社で発揮できると思い応募した」等、前向きな志望動機のほうが印象が良いでしょう。
監査法人は会計士が働く職場として最もポピュラーなので、「なぜ監査法人で働くことを選んだのか」をあえて深く聞かれることは少ないと思います。ただし、監査法人で「どういった役割を果たしたいのか」、「将来どうなりたいのか」については問われることが想定されるので、自身のキャリアプランは明確にしておく必要があるでしょう。
また、監査法人は社員の多くが公認会計士であるため、ある種「公認会計士を持っていることは当たり前」といった見方をされることがあります。
なので、公認会計士資格プラスアルファでアピールできるものを志望動機の中に書けると、有利に働きます。
会計士が会計事務所に転職する際によく聞かれる質問が「独立志望ですか?」というものです。実は、この質問の答えに対する反応は、会計事務所によってかなり異なります。
「将来は独立志望です」というと、「この人は長くいないつもりだから採用を見送ろう」と思う会計事務所と「独立志望というくらい志が高いのであればお客さんを任せられる」という評価に分かれます。
実際、私が会計士を面接する際は能力が同じ場合は独立志望のほうを採用します。もっと言うと、本当に独立の時期が来れば一つの支店を任せて報酬もある程度自由にとってもらおうとも考えるでしょう。
大きな会計事務所になればなるほどそのように多様性を重んじる傾向にありますが、個人事務所であればあまり前面に出さない方が無難ではあります。
関連記事:会計事務所の志望動機ってどう書くの?ポイントと事例を紹介
事業会社で、経理要員として会計士が転職する際の志望動機では、即戦力となることをアピールしましょう。
監査法人に勤めている会計士は実務をやっていないため、一般事業会社での経理には最初は戸惑いがちです。しかし、数か月もすれば要領もわかってくるため、持っている知識やスキルを活かすことができるでしょう。
会社によっては「会計士なのだから最初から全てできて当然だろう」と思う人もいますので、できることを全面的に出して、不安なことはこちらから特に伝える必要はないでしょう。もちろん、入ってから落胆されるくらいであれば先に伝えることもありますが、あまりネガティブな要素ばかり並べないようにしましょう。
コンサルとなると、どのような内容のコンサルかによって志望動機は異なってきます。特に戦略系コンサルタントとなると、会計士のスキルだけでは仕事にならず、プレゼン能力や問題解決能力が求められます。
よって、志望動機よりも能力やコミュニケーション能力が重視されますが、なんでも吸収できる柔軟性をもって面接に臨むことが重要です。また、前職でクライアントに喜ばれたエピソード等を交えると、この人はクライアントに向き合った仕事ができるという評価となるでしょう。
最近IPO準備の会社が増えてきていることもあり、CFOのような経理を統括する人材の募集が増えてきています。このようなポジションに公認会計士はうってつけであり、業界でもよく募集を見かけます。
IPO準備ではいくらCFOであってもかなり実務をすることが求められます。よって、あまり管理を重視した志望動機ではなく、人が育つまでは自身がしっかりと手を動かすことをアピールしましょう。またIPO準備企業ではそれほど報酬を払えない会社も多いです。その点も、良い経験になる、社長の夢を一緒にかなえる等のポジティブな要因で志望したことをしっかりとアピールしましょう。
ここでは、志望動機を考える際に大事なポイント別に、良い例と悪い例を紹介していきます。
公認会計士が転職するにあたって、キャリアアップしたいから、という理由は一般的だと思います。しかし、度が過ぎるのは禁物です。
「今まで監査という検証する仕事のみの経験しかしていなく、いつかは独立を考える中で、財務諸表を作る側になりたいと思い、貴社を志望しました。」
確かに、いつかは独立したいという公認会計士もたくさんいるのであながち間違ってはいません。ですが、その情報はあえて企業に伝える必要が無い情報となります。全く独立する気が無いというのは嘘となりますが、それをあえて言わないというのは嘘にはなりません。今のところは長期的に働く意思があるということをしっかりと伝えるべきです。
「財務諸表をチェックする側の今までの経験を活かし、作成後に社内でもチェックできる体制の構築に寄与できると思い貴社を志望しました。」
志望動機としてかなり違っているかもしれませんが、
・独立を考えていること
・自身のキャリアアップよりも会社に貢献できることを強調していること
という2点が大きく異なっています。
転職活動では複数の企業にエントリーするのが一般的ですが、面倒になって同じような志望動機で片付けるのはおすすめしません。このような志望動機はすぐに人事担当者に見抜かれてしまうからです。
「私は原価計算を得意としており、貴社の原価計算部門にマッチしていると思い応募しました」
一見、普通の志望動機に見えますが、
・原価計算の何が得意なのか
・何がマッチしているのか
とても漠然としている志望動機となります。
「私は自動車メーカーでの原価計算を担当しており、年間3%のコスト削減を毎年行っておりました。この経験を活かし、貴社の電子機器の製造においても違った観点からのコスト削減に寄与できると考えております」
先ほどの志望動機との違いは、
・年間○○%の削減と、具体的に記載されていてわかりやすい
・他業種からの観点で貢献できると、内容が具体的
ということになり、採用側にもメリットが伝わる内容となります。
使いまわしの志望動機ではないことをアピールするためには、会社のことをできるだけ調べている姿勢を見せることが大事です。
「貴社は古くからある会社で、その伝統を重んじる社風に感銘を受けて志望しました」
この志望動機は次の点から問題となります。
・古くからある会社というのは他にも色々ある中で、なぜ自社を選んだのかがわからない
・伝統を重んじる社風とあるが、どこからそのようにくみ取ったのかがわからない
これでは、同じような会社に同じような志望動機を書いていると判断され、自社が内定を出しても他に入社してしまうかもしれないから採用を見送ろうと判断される可能性があります。
「貴社のホームページの中に、100周年記念事業の写真が掲載されており、社員の皆様の顔が生き生きしているところに惹かれました。」
この志望動機であれば、具体的に自社を調べていることもわかりますし、記念事業等は古臭くて嫌がるという人間ではないこともはっきりします。
ここまで公認会計士の志望動機の書き方について解説していきましたが、そうはいっても上手く書けない人や、書けたけどいいのか悪いのか分からない人も多いのではないでしょうか。そんな時は、就職エージェントや転職エージェントに添削の依頼や相談をするのがオススメです。士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロでは新卒・中途ともに選考や面接のサポートをしていますので、ご利用いただくメリットをご紹介していきます。
ヒュープロはこれまで多くのご登録者様の就職や転職を支援してきた実績がありますので、そこで蓄積されたデータから多角的な視点で書類通過率を高めるための志望動機の添削ができます。今回ご紹介した書き方以外の細かい部分も含め数多くのノウハウを有しているので、個別に最適なアドバイスができるのです。
先ほど紹介した企業ごとの志望動機については、重要ではあるものの企業研究にかなりの時間を費やす必要があります。ヒュープロは求人掲載企業との関係も深く、詳細な企業情報を持ち合わせていますので、わざわざ調べる手間が省けるほか、一般的には得られないようなリアルな情報も提供できます。
会計士は転職市場では優遇されやすいと言えます。しかし、志望動機があいまいであったりネガティブなものであったりすると採用はされにくくなります。最も大事なことは、「なぜ当社を希望したのか」というところですので、会社のことは十分に調べたり、エージェントにわからないことはしっかり聞いたりすることが重要です。