公認会計士の仕事の一つにコンサルティングというものがあります。コンサルは華やかなイメージがありますが、実際はどのような仕事をして、どのような転職事情なのかは知らない人も多いでしょう。監査法人との違いも気になる方がいると思います。そこで、本記事では公認会計士のコンサルへの転職について解説していきます。
コンサルへの転職をお考えの方は是非ご覧ください。
コンサルと一言で言っても様々な種類があります。ここでは、公認会計士が転職する主要なコンサルについて三つご紹介します。
戦略系コンサルというのは、文字通り会社の経営課題に対して戦略を施して、実際に業績を伸ばしていくコンサルです。
主に外資系の超大手企業が得意とする分野で、基本的には有名大学卒業の新卒採用がメインとなります。
なぜ新卒メインであるかというと、地頭のよさや発想力、コミュニケーション能力等その人の潜在的な力を重視するからです。というのも、戦略系コンサルでは企業に対する助言のみならずプレゼン能力等様々な応用力が試されるため、凝り固まった頭ではなく柔軟な頭の持ち主を採用したがるからです。
また外資系のため、英語のコミュニケーション能力も求められることがあります。
代表的な外資系戦略系コンサルティングファームとしては、マッキンゼーやボストンコンサルティングなどがあげられます。
総合系コンサルは、戦略だけではなくそこから基幹システムやIT、経理財務等あらゆるポイントを助言するコンサルです。
総合系コンサルは主に監査法人系列のコンサル会社が行うことが多く、公認会計士が多く転職する先でもあります。
総合系コンサルでは各種分野のエキスパートが集まりつつも、特定の企業に対してはチームを組んで皆で会社の方向性を定めていくという手法が採られます。
代表的な企業としてはデロイトトーマツコンサルティング、アクセンチュア、PwCコンサルティングなどが挙げられます。
FASとはM&A業務に対するアドバイザリーサービスを専門に提供するコンサルのことを指します。デューデリジェンスや企業評価の業務を主に担当しており、公認会計士の人気は一番高いです。代表的な企業としてもBig4系のグループ会社が多く、会計士業務との関わりの深さが伺えます。
シンクタンク系コンサルとは、主に金融系の会社が保有しているコンサル会社です。シンクタンク系コンサルでは、経済全体の調査やITのコンサル等を行っていて、他のコンサルよりも官公庁等のコンサルも多いのが特徴です。
シンクタンク系コンサルは他のコンサルよりも大きな視点での情報提供が多い為、イメージとして学者のようなものとなります。
代表的な企業としては、野村総研やNTTデータ経営研究所、日本総研などがあげられます。
経営コンサルタントとはクライアントの企業の経営戦略についてのコンサルティングを行うコンサルタントのことです。
具体的な業務としてはクライアント企業の課題を発見し、分析、仮説検証をしてクライアントに提案すると言った流れが一連の業務となります。
公認会計士がコンサルタントに転職する場合、この経営コンサルタントが人気です。
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公認会計士がコンサルに転職する事例として最も多いのが、監査法人系列や大手会計事務所のコンサル部門など、母体が監査法人・会計事務所のものであるFASとなります。
例えば戦略系コンサルとなると、公認会計士等のスキルというよりもその人の地頭が評価対象となりますし、20代から30代前半までの若年層を採用する傾向にあるためです。もちろん、公認会計士の資格を持っているということは地頭が良いという判断材料になりますし、会計の知識もあるに越したことはありません。
ですが、それ以上に他の要素を重要視するため、会計士としての今までの経験が生きる機会も少ないでしょう。公認会計士として転職するというよりも、戦略系コンサルに公認会計士がたまたま転職した、という感覚の方が近いかもしれません。
そんなこともあり、公認会計士の強みを最大限に発揮できる監査法人系のコンサルとして転職することが多くなります。
監査法人系のコンサルであれば、例えば株価評価や連結決算構築業務、決算早期化業務、IPO支援等、今まで監査法人として見てきたことを今度は逆に実践するという立場でクライアントをサポートします。
今まで自分自身でやったことがない仕事であったとしても見てきたことですので、ある程度スムーズに作業に取り掛かれるため公認会計士は非常に重宝されます。
とはいえ、全ての会計士がコンサルに向くわけではありません。また、コンサルは響きの良い職種ですが、中身が全てバラ色のものとも限りません。
というのも、例えば財務コンサルとしてクライアント先に行ったとしても口ばかり出すのではなく、実際に作業中心となる可能性も大いにあります。
例えば株式公開したい会社の経理機能が弱いということでコンサル契約をした場合、最初から経理部長に説明しても理解されないことも多いです。そこで、自分でシステムやエクセル等を活用して枠組みを作るだけではなく、実際に生の数字を打ち込んであげたうえで説明をする、という光景もよく見ます。
また、コンサル業務には締め切りがタイトなものも多い為、場合によっては深夜まで残業となってしまうことも考えられます。現在は働き方改革の一環で残業は抑制されている方向ですが、実際にそのプロジェクトが自分一人でしかできないものであれば少なからず残業も必要となってくるでしょう。
コンサルに向いているのは、意外と地道な仕事も頑張れて、報酬以上に仕事にやりがいを見いだせる人と言えます。
前提としてコンサル企業は即戦力となる経験者を中途採用で求めます。しかし近年はコンサルティング市場の拡大により人手不足なため、未経験でもコンサルに就職することは可能になっていまし、公認会計士の資格があれば有利に立てます。
また資格・経験以外のところでは論理的思考力や、コミュニケーション能力が求められるでしょう。面接ではこの二点を積極的にアピールしていきましょう。
会計士がコンサルに転職する際に気を付けることとしては、その後のキャリアをどう考えているか、という点です。もちろん、そのままコンサルとしてトップまで駆け上がるつもりで入るのであれば特に問題はありません。
しかし、その後別のキャリアを積む目的でコンサル会社に入ると、意外と次の選択肢に困ります。
コンサル会社から会計事務所に入ると細かい作業を嫌う人もいますし、事業会社に入ると今まで指導してきた立場から逆に指導される立場に変わるのを嫌う人もいます。
この点は人それぞれですので、コンサルでどのようなスキルを得て、その後どのように生きていきたいかをある程度持っておくと、転職先でも頑張れるのではないでしょうか。
会計士がコンサルに転身するのは、大多数は監査法人系の会社となります。しかし、戦略系コンサルやその他のコンサルに転職する人もいます。公認会計士として生きていくのか、自分自身を売りにして公認会計士の能力もある、というスタンスで行くのかは、長期的にどのようなキャリアを描いているかによって大きく変わることでしょう。
自分が思い描くキャリアを軸にして転職先を考えてみましょう。
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