社員の業績を正しく評価し、これからの成長に役立てるために行う人事考課。しかし導入しても上手くいかないと悩む企業が多くあるのが現状です。そこで、本記事では人事考課における課題をピックアップし、それぞれの対処方法について解説していきます。
組織としてのパフォーマンスを上げるためには、人材の活用が不可欠です。人材を正しく評価し、適材適所に配置するためには人事考課が必要なのですが、いまひとつその重要性は認知されていません。
そのため、そもそも人事考課の制度がない企業もあります。特にオーナー企業に多いのですが、客観的な評価ではなく、社長が全ての評価を決めるというものです。
また、能力の評価ではなく、賃金を抑えるために成果主義導入を行い、従業員のモチベーション低下を招いてしまうことも。
こうしたことから、近年多く見られるのが、優秀な人材が外資系に流出してしまうことです。かつては終身雇用の安定や福利厚生の手厚さから、日本企業を選択する人が大部分でした。しかし、中堅社員になってからのリストラなどが盛んに行われるようになった昨今では、厳しい環境であってもはじめから外資系でスキルを磨こうとする人材の数はますます増えるでしょう。
経営陣はこれからを考えた場合、企業に発展をもたらす人材に、適切な人事考課を行うことで働くモチベーションを高めていく義務があるのです。
人事考課の評価体系は、本来は貢献度の高い従業員は評価・報酬ともに高く、貢献度の低い従業員は評価・報酬ともに低くなっていなければいけません。
しかし、多くの場合、貢献度の評価については実態にフィットしていません。というのも、人事考課は基本的に定点(四半期、半期、年度など)で行うもののため、短期的な評価に偏りがちで、何年もかけて成果を取りに行く中長期的な施策などを評価しづらいという特徴があります。
そのため、例えばこれからの事業について布石を打っている途中のような場合だと、その内容が全く評価されず、逆にいつも通りの業務を継続して行っている人が評価されてしまう場合も。
もちろん結果は大事ですが、会社にとって一番困るのが、挑戦的なことを行って失敗すると評価ががくんと下がってしまうような制度にしてしまうと、誰も挑戦しなくなることです。酷い場合は「仕事しない方が評価が良い」という事象が起こってしまいます。
この制度が改訂されず、そのままだと、結果的には仕事をしていない人が昇格していってしまい、組織が硬直化を招いてしまうのです。
いくら結果が全てとはいえ、ハイリスクハイリターンの施策については、別枠を設けるなど、ある程度セーフティーネットを貼って対応することが必要でしょう。
これは、人事考課がシビアと言われる外資系でも起こりがちなのですが、そもそも人事考課をおこなう直属の管理職の権限が強い場合、その主観が大きく評価に反映されてしまうことがあります。
そのため、同様のパフォーマンスを残していても、Aさんは上司に気に入られているからA評価、Bさんは上司に疎まれているのでC評価といったことが起こってしまいます。
スタートアップなど、人数が少ない場合は、全員の顔が見えるような状況なのであからさまに評価の違いは付けづらいかもしれません。しかし、企業の規模が大きくなるほど、部の成績にどの社員が大きく貢献したかという部署内の事は、部外の人には見えづらくなります。
そうなるともちろん、不当に低く評価された社員の不満は大きくなるだけでなく、他の社員も会社に取って貢献することよりも、いかに上司に気に入られるかということが業務遂行の軸となってしまいますので、企業の発展を阻害する大きな要因となってしまうのです。
特に、発展著しい企業だと、創業期に入社した上司よりも、企業が大きくなってから入って来た部下が優秀ということも良くあります。「生意気だ」という上司の勘定は厄介なものです。人事考課制度が優れていても、肝心の評価者のスキルが不足していては意味がありません。
人事考課を行う上司への研修や、さらに上役からの評価、そして部下からの評価なども組み合わせ、管理職による独断の評価を生まないようにする仕組み作りも必要になってきます。
人事考課を適切に行いたくても、人事労務部門の人数が足りずに時間と人手を割けないというケースもあります。
企業の規模に寄らず、中小企業はそもそもの担当者数が少ない問題、大企業は評価対象人数が多すぎる問題があり、年に1~数回という業務である人事考課に充分なリソースを割くことが難しくなっているのです。
経営方針や事業環境などが変われば、人事考課制度も現状に適するように変えていく必要があります。例えば、今まで年に一度としていた人事考課を逆に半年や四半期に一度に変更し、業務にかかる負荷を分散させ、日常的に考課を取り入れていくなど、柔軟な姿勢で変化に対応していくのも一つの手でしょう。
年に一度だと、昨年のことを思い出すのも時間がかかります。また、年度途中で状況が変わった時などに目標の最終性もしづらいのは当然です。
思えば経営における月次決算や四半期決算があり、その都度業績に応じて予算などが見直されるのに、人事考課はそのままというのはおかしな話なのではないでしょうか・
定量的な売上などの目標は状況に即して現実的な数字を追うようにし、資格試験などの定性評価は年度ごとに結果を見るなど、従来のやり方にとらわれずに現場も人事もやりやすい方法を取ることが、結果的には業務負荷を軽減することにつながります。
日常的に人事考課を意識することで、社員のモチベーションアップと、企業の活性化に役立てるようにしましょう。
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