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転職・独立時に気を付けたい競業避止義務

HUPRO 編集部
転職・独立時に気を付けたい競業避止義務

転職したいと考えたとき、これまでの経験やスキルを活かせる同業他社に転職してはどうかと考える人は多いのではないでしょうか。しかし同業他社というのは、いま勤めている会社からするとライバル会社。人材やノウハウの流出を嫌い「競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)」を課している会社も少なくありません。本記事では転職・独立時に気をつけたい競業避止義務について詳しく説明します

在職中、競業避止義務は労働契約法が根拠

「競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)」とは、労働者は所属する企業と競合する会社・組織に就職したり、競合する会社を自ら設立したりするなどの競業行為を行ってはならないという義務のことです。

これだけ見ると退職後の話のようですが、就業期間中については、「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない」と労働契約法第3条第4項に定められています。

つまり、営業秘密などの情報を競合する会社・組織などの外部に漏らすような事は「信義に従い誠実に」業務を果たすことと反しているため、競業行為は労働契約違反として、懲戒処分対象になるのです。

在職中の労働者については、労働契約法で競業避止義務の根拠が明確に示されています。確かに、在職中にライバル会社に副業で就職したり、自身で会社を設立したりすることはちょっと考えづらいですし、業務上の秘密をライバル会社に漏らすことは、明らかに会社に不利益をもたらしますので、処分対象になるのもうなずけるでしょう。しかし問題は退職後です。

競業避止義務は、業務上の秘密保持義務とも深く関連しており、在職中はもちろん、退職後にも転職の足かせとなる場合があります。

退職後の競業避止義務は職業選択の自由を侵害する?

例えば、重要なプロジェクトにおけるキーパーソンだったり、いま勤めている会社の主力製品の開発に関わっていたりする人が、退職後にライバル会社に転職し、同様の商品を開発されてしまっては困りますよね?

特に、秘匿性の高い業務を行っているような場合は、しっかりと競業避止義務が労働契約に盛り込まれていることが多いのです。退職後についても、あらかじめ労働契約や退職時に誓約書を書かせることでライバル会社への就職や独立を禁止する会社もあります。

しかし日本国憲法にはそもそも「職業選択の自由」がうたわれています。退職後まで労働契約の競業避止義務を課す場合は、それを侵害する可能性があるとしてしばしば係争になることもあるのです。

一概にすべてが憲法違反となるわけではなく、ケースバイケースで認められる場合とそうでない場合があります。仮に裁判となった場合は、従業員の業務内容、退職時の地位、地域、期間の限定など、様々な要素が考慮された上で、競業避止義務が適切かどうかという判断がなされるのです。

また、どのような状況であれ、必ず競業避止義務の対象になる人もいます。取締役です。

取締役は必ず競業避止義務の対象

取締役においては、その競業行為を会社法365条により明確に禁止されています。取締役会設置会社においては「競合取引」「利益相反取引」を行おうとする取締役は、取締役会に重要な事実を開示し、取締役会の承認を受けなければなりません。

また、取引後には、遅滞なく取引についての重要な事実を取締役会に報告する義務があります。取締役を務めた方が転職する際は、注意が必要です。

転職・独立時にはしっかり確認しておきたい競業避止義務

入社・退職時には様々な契約を書面で取り交わすため、その内容を全て把握することは難しいかもしれません。

転職・独立してから損害賠償などを請求されては困りますので、事前に良くチェックしておきましょう。
中には、就業規則の中の退職規定に以下のように記されている場合もあります。

(競業避止義務)
第○○条 従業員は在職中及び退職後 6 ヶ月間、会社と競合する他社に就職及び競合する事業を営むことを 禁止する。ただし、会社が従業員と個別に競業避止義務について契約を締結した場合には、当該 契約によるものとする。

出典:秘密情報の保護ハンドブック:経済産業省

近年では、退職時に秘密保持誓約書を取り交わすことも多く、競業避止義務が課せられる場合はその中に以下のような形で記載されているパターンが往々にしてあります。

第○条(競業避止義務の確認) 貴社を退職するにあたり、退職後一年間、貴社からの許諾がない限り、次の行為を しないことを誓約いたします。

①貴社で従事した○○の開発に係る職務を通じて得た経験や知見が貴社にとって重 要な企業秘密及びノウハウであることに鑑み、当該開発及びこれに類する開発に係る職務を、貴社の競合他社(競業する新会社を設立した場合にはこれを含む。以下同じ。)において行うこと

②貴社で従事した○○に係る開発及びこれに類する開発に係る職務を、貴社の競合 他社から契約の形態を問わず、受注又は請け負うこと

出典:秘密情報の保護ハンドブック:経済産業省

また、競業避止義務の誓約書を取らせる事もあります。

貴社を退職するにあたり、退職後1年間、貴社からの許諾がない限り、次の行為をしないことを誓約いたします。

1)貴社で従事した○○の開発に係る職務を通じて得た経験や知見が貴社にとって重要な企業秘密ないしノウハウであることに鑑み、当該開発及びこれに類する開発に係る職務を、貴社の競合他社(競業する新会社を設立した場合にはこれを含む。以下、同じ。)において行いません。

2)貴社で従事した○○に係る開発及びこれに類する開発に係る職務を、貴社の競合他社から契約の形態を問わず、受注ないし請け負うことはいたしません。

出典:秘密情報の保護ハンドブック:経済産業省

実際には、転職元企業からの警告書面を受領し、その中に契約内容の一部が記載されて初めて転職者の負っていた義務内容や競業避止義務が明らかになるようなケースもあります。競業避止義務については、転職先にも迷惑をかけることになりますので、事前によく確認しておきましょう。

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この記事を書いたライター

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