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連結決算で子会社がすべきことは?

公認会計士 大国光大
連結決算で子会社がすべきことは?

連結決算は、有価証券報告書提出会社は開示が義務付けられています。親会社では情報収集や開示義務がありますが、一方で子会社はどのようなことをすべきでしょうか。
今回は連結決算で子会社がすべきことについて解説します。

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連結決算に組み込む子会社とは?

連結決算の対象となる子会社は別の記事で詳しく説明しますが、今回は簡単に説明します。
まず、大前提として、その会社を「支配」しているかどうかで連結子会社となるかどうかが決定します。これを、通称支配力基準と言います。
具体的には次の要件を満たしている場合は連結子会社として連結財務諸表に組み込まなければなりません。

・議決権を50%超保有している会社
・議決権を40%~50%保有しており、緊密者という議決権を行使するのに同意する人と合わせて50%超保有となる場合
・40%未満であるが、緊密者と合わせて50%超の議決権を保有しており、役員や技術提供などその会社と密接な関係にある場合

最終的にはその子会社が親会社の意向にほぼ完全に沿って行動する場合は連結子会社という判定となります。

連結決算で子会社が行うこと

では、連結決算で子会社が行うことはどのようなことでしょうか。順に説明します。

①個別財務諸表を作成する

子会社も一般的な会社ですので、まずは通常通り財務諸表を作ることから始めます。ただし、税務申告や銀行に提出するような完璧な財務諸表ではなく、試算表レベルでの財務諸表を作りますが、全ての決算整理仕訳を入れ、完全な試算表を作ることとなります。
この時、勘定科目に注意が必要です。というのも、特に親会社と同一事業であれば後に合算・消去をする際に科目が異なっていると組替を行わなければならないからです。
例えば親会社ではパソコンの購入を消耗品費で処理していて、子会社では器具備品費という科目を使っていたとします。合算するたびに科目が増えてしまいますし、消去した時に勘定科目がマイナスとなってしまう可能性があります。

②グループ会社との取引を把握する

次に、親会社に対してグループ会社との取引を報告する必要があります。これは、親会社においてグループ間取引を全て消去する必要があるためです。
これは決算で拾っていては時間がかかりすぎるため、あらかじめ勘定科目の補助元帳にグループ会社の名前を作っておくと集計が便利でしょう。気をつけなければならないのが、親会社との取引ではなく「グループ会社」との取引です。
例えば同じ親会社に支配されている別の子会社等は兄弟会社と呼ばれ、グループ会社となります。ですので、まず補助科目設定の前に自社のグループ会社にどの会社があたるかを網羅的に把握しておく必要があります。実務では、親会社との取引は上手に拾っていても、兄弟会社との取引が抜けやすいので注意が必要です。
これらを集計したのちに親会社にグループ会社との損益、資産負債を報告することとなります。

③未実現利益の把握

また、連結固有の項目として未実現利益の消去というものがあります。
これは、例えば親会社から子会社に物品を販売したものの、子会社ではその在庫を保有したままだったとします。すると、親会社では利益が計上されていて、子会社においても仕入をしたまま在庫が計上されて損益に変動はありません。
すると、グループ全体では物品が移動していないと同じであるのに、親会社の利益が残ったままとなってしまいます。そこで、その実現していない利益を消去する必要があります。
そこで、子会社はグループ間で売買した実績の報告は先ほど行いましたが、グループ間で仕入れたもので、未だ外部に販売していない在庫を報告する必要があります。ただし、実務的に一つずつ把握できる業種なら良いですが、そうでない場合は仕入高の割合で在庫のうちグループ間で仕入れたものを計算で導くこともあります。
なお、忘れやすい項目としては固定資産の購入があります。特に固定資産は物品の販売と違って減価償却費によって徐々に未実現利益が費用化されていくため把握漏れしないようにしましょう。

④注記の集計

連結財務諸表は、貸借対照表、損益計算書のみならず、注記も集計します。特に有価証券報告書提出会社は注記の数がとても多い為、親会社主導でどのような注記項目が必要かを決算前に子会社に依頼する必要があります。
特に、決算日後監査報告書提出までに災害、盗難、重要な貸倒等の重要事実が発生した場合は監査に影響が出ますので、必ず親会社に速やかに報告する必要があります。

⑤その他の注意点

その他、連結決算の方針によってはキャッシュフロー計算書を自社で作成した上で親会社にて合算する場合があります。また、子会社の下にさらに子会社があった場合、原則は親会社が全ての会社を連結しますが、早期決算の為に子会社で連結財務諸表を作成して親会社と合算することもあります。
連結決算の方針によって作業内容が大きく変わるため、親会社と子会社は情報交換をしっかりと行いましょう。

まとめ

連結決算は親会社のみで作業は行えず、子会社の協力が絶対不可欠です。後からあれもこれも欲しいとなると連結決算を組むのに非常に時間がかかりますので、本決算の前に情報交換や、試しに去年の財務諸表で連結決算を組むなど、十分な準備が必要です。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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