決算の種類の代表的なものは、年度決算、四半期決算と月次決算があります。それぞれ、年に一度、年に四度、毎月と決算を組むことを言います。今回はそんな中でも月次決算の詳しい業務内容について、現役公認会計士が徹底解説します。
月次決算とは、先ほどお話した通り毎月行う決算を言います。理想的なスケジュールで言えば、毎月月末から5営業日までにその月の決算を作ります。
例えば6月の月次決算であれば7月第1週末までに6月までの決算を組むことを言います。
期末決算は1年に一回行われる決算であり、税金の申告や借入の時に銀行に見せるために作成することが主な目的です。
一方で月次決算は外部に提出するのではなく、内部で現在の経営状態を把握するために作成されます。
では、月次決算のメリットにはどのようなものがあるでしょうか。
まず、言い切れるのは儲かっている会社は100%月次決算を行っています。これは、期末の決算を見てから会社の方向性を決めていては遅すぎるからです。月次決算を組んでいれば、毎月会社の現状を知ることができ、すぐに次の行動に移すことができます。
また、資金が豊富にあってなんとなく儲かっているつもりになっていても、結果利益が出ているわけではなく借入が膨らんでいたり、たまたま大きな売掛金を回収していたりしただけだった場合があります。しかし、月次決算を組んでいればそのようなこともすぐにわかり、次につなげることができます。
では実際には月次決算ではどのような業務を行うのでしょうか。
最も大事なことは、売上を確定させることです。中小企業の中には現金が入ってきたときに売上を計上することもありますが、必ず請求書を発行した時や納品の都度売上計上を行います。売上は自社で完全に把握できるはずですので月末の翌営業日には確定できるようにしましょう。
次に、仕入の確定です。理想的なのは、仕入先から納品書を受け取った都度仕入計上をすれば月末に慌てて仕入を計上しなくともよくなります。しかし、全ての会社が納品書をつけてくれるとは限らないので、最低限請求書で仕入を計上できるようにしましょう。請求書が遅れると月次決算を組むのも遅くなるので、いつも遅い先は催促するかFAX等で先に送ってもらうなどすると効果的です。
仕入先から見たら自社はお客さんとなるので、無理なお願いのように見えてもしっかりと送ってくれることもあるので交渉しましょう。
月次決算で頭を悩ませるのが費用の確定です。仕入と同じように請求書をタイムリーに送ってくれればよいのですが、経費に関しては様々な業者を利用することが多いのでなかなか請求書が到着しきらないことがあります。
また、従業員の立替金の精算などもいつまでも精算しに来ないと経費が固まりません。
もちろん、これらを催促して促せばよいのですが、電力料や水道料金等はどれだけ催促しても遅くなることは確実です。
そこで、そのような費用は見積りで計上してしまうのも手です。一旦見積りで計上しておいて、実際に請求書が来たり支払ったりする際に実際の金額に置き換えても見積りがめちゃくちゃでなければ経営判断には影響がありません。
固定資産の減価償却費は年に一度正確な金額を算定するため期末決算で計上する会社も多くあります。しかし、減価償却費は固定資産の取得や除却があまりない場合は1年の発生額を見積もることが簡単です。
また、減価償却ソフトを使っていれば、毎月実際の減価償却費計上額を1か月単位で計上することができます。
また、期末決算で賞与引当金を計上しているような会社はあらかじめ予算に賞与引当金を組み込んでおいて、1か月単位で計上することもできます。
これ以外にも年度でしか計上していなかった項目について月次決算に織り込むとより良い決算となります。
例えば製造業等では急に機械が故障してしまって多額の修繕費が発生することがあります。この修繕費についてはいつ発生するかわからないので、発生した月に突然赤字になってしまうことがあります。
ある程度のサイクルで修繕が発生することがわかっているようであれば、おおよその修繕費を見積もっておいて月次決算に織り込んでおけば、急な修繕があったとしても引当金を取り崩すことで損益がぶれることはありません。
ただし、このような引当金は税務上認められないことが多いので、期末決算では取り崩すことを忘れないようにしましょう。
月次決算は自社の現状を知り、次の一手を打つのにとても有効な手法です。月次決算の業務はいかに早く先月の状態を知るかが重要ですので、各項目をどうやって固めるかと、期末決算でしか計上していなかった項目をいかに月次決算に織り込むかが重要です。紹介した項目以外にも気づいた項目は積極的に月次決算に織り込んでいきましょう。
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