税理士事務所のホームページを見ると「月次決算を導入しましょう」という文言を見かけると思います。なんとなく月次決算をすると良いというのはわかりますが、具体的にどのように良いのか答えられるでしょうか。そこで、今回は月次決算の目的や、どんな風に経営に役立つのかを現役公認会計士が具体的に解説していきます。
月次決算とは、読んで字のごとく月ごとに決算を行うことです。通常会社の決算は年に一回確定申告や株主総会のために作られます。これを通称本決算と呼びます。それ以外にも、3か月に一度の四半期決算や、半年に一度の半期決算などもありますし、飲食業では日次決算というのもあります。
月次決算の目的は、月ごとの売上、利益を把握して翌月にどのようなアクションをとるべきかを決定することです。年次で予算を組んでいて、月次目標が定められている会社では、月次で予算と実績を比較し、予算達成できなかった詳細な理由を考え、次につなげます。万が一予算が組まれていないとしても、前年同期比をして、前期とどのように経営成績が異なっていたかを把握して次月につなげる動きをします。
月次決算をしないと、前月が儲かっていたかどうかもわからないうえに、当月以降具体的に何をしていいのか勘だけを頼りに動くことになってしまいます。
このように、月次決算をする理由は現状の自社の状況を把握するとともに、将来に向けて何をすべきかを明確にすることにあります。
月次決算の導入がどのように影響するのか、そのメリット・デメリットをご紹介します。
メリットとしては以下のことが考えられます。
①予算と照らし合わせて原因を知り、改善できる
②「今」の会社の現状を知り、素早い経営判断ができる
③月ごとの経営状態が分かって、金融機関への印象が良くなる
④本決算時に慌てずに済む
①今から導入する場合、作成時間がとられる
月次決算では予算との対比をするということをお話ししました。ではどのような決算と予算を対比するのでしょうか。年度の本決算では貸倒引当金や減価償却費、各種引当金を計上することになります。確かに本決算にならなければ実際の金額がわからないため、月次に割り振ることは難しいように感じます。
しかし、例えば減価償却費は資産の取得、除却売却がなければ12分割するだけなので計算しやすいですし、細かい減価償却資産の取得は重要性に乏しいため反映させなくとも問題ありません。反対に大きな固定資産を購入した場合はその月から予定の減価償却費を計上すればよいことになります。
その他、月次に配分できる費用についてはあらかじめ割り振ってしまえば問題ありません。
気を付けたいのが税込経理を採用している企業です。税込経理を採用している場合、消費税は租税公課で処理されるため期末に一気に費用が計上されることになります。よって、月次決算では租税公課引当金として、仮受消費税と仮払消費税の差額を計上する必要があります。
このほかにも法人税を月次決算に織り込むために月次の税前利益に対して実効税率を乗じて計算する企業もあります。
さらに、電気料金など請求が遅いものについては企業自ら検針して計算したり、請求書が到着せずに織り込めなかった費用についても見積書や納品書をベースに計上したりすることが重要です。
月次決算の目的ややり方は解説した通りですが、どのように活用すべきでしょうか。
大前提として、月次決算は月末から作成まで早ければ早いほど良いです。月末が過ぎて20日も経過してから月次決算を見たところですでに20日経過しているため、あと10日しか行動できる期間がなく遅いのです。
業種にもよりますが5営業日くらいでは月次決算が作成されているとよいでしょう。その上で、取締役会や経営会議として各部署の責任者を呼んで会議に使うと効果的です。社長が営業部長に「とにかく売上をあげてこい」というのと「先月は目標に対して100万円売上が少なかったから、今月は目標値プラス100万円受注してきなさい」というのでは具体性に大きな違いがありますし、営業部長も納得がいくことでしょう。
上場企業では、月次決算は100%行っています。統計を取ったわけではありませんが、これは断言できます。つまり、もうかっている会社はすべて月次決算を行っているのです。
一方で零細企業では月次決算を行っていない会社も多く存在するでしょう。理由としては、決算を税理士に任せていて数か月に一度しか記帳していなかったり、記帳は自分でやっているけど年度末にバタバタしないように今のうちに帳簿をつけているだけだったりします。
実は、零細企業であればあるほど月次決算を行う必要があります。零細企業の最大のネックは資金繰りでしょう。経営者がよく「なぜかわからないけれどうちは資金繰りが悪い」という言葉を発します。なぜかわからないのは月次決算を十分に行っておらず、売掛金の滞留に気づかなかったり、過剰な在庫があることに気づかなかったりしているからです。
月次決算を行っていれば、いくら売上が上がれば利益が出るかも明確ですし、いくらまで在庫を抱えることができるかも計算ができ、これらの恩恵があるからこそ月次決算を重要視しているのです。
いかかでしたでしょうか。月次決算は義務ではありませんが、健全な経営を行う、会社の成長につなげるためには必要不可欠な業務です。
ただ月次決算をして終わり!では業務が増えただけで意味がなくなってしまうので、月次決算で把握した会社の状態をもとにPDCAを回していくことが大切です。また、年次決算のように出すべき書類がすべて決まっているわけではありませんので、企業ごとに把握したい内容も併せて月次で出していくのもよいでしょう。
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