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社会保険労務士試験の合格率が低い理由とは?最新の合格率も解説!

HUPRO 編集部
社会保険労務士試験の合格率が低い理由とは?最新の合格率も解説!

社会保険労務士試験の合格率は毎年おおむね1桁台で、2022年に実施された試験も6.4%でした。社会保険労務士を目指す方は、試験の合格率がなぜ低めなのか気になるのではないでしょうか。今回は、社会保険労務士試験の合格率の推移とともに、その問題構成から合格率が低い理由などについて開設します。

社会保険労務士試験とは?

社会保険労務士試験とは、社労士資格を取得するための国家試験です。
基本的には毎年1回、8月に行われ、11月に合格発表が行われます。

社労士試験は、法律や経営学、労働政策などの幅広い知識が必要とされる難しい試験であり、合格率は比較的低いです。しかし、合格すれば、社会保険労務士として専門的な知識やスキルを身につけ、企業や労働者の問題解決に貢献することができます。

【令和4年版】社会保険労務士(社労士)試験の受験者数と合格率

令和4年8月28日に実施された社労士試験の受験者数と合格率は下記の通りです。

出典:厚生労働省 第54回社会保険労務士試験の合格者発表

受験申込者数は前年比3.6%増、受験者数は8.9%増となり、コロナが落ち着いてきたことが関連しているとも考えられます。
しかしながら、合格者数は2,134人と前年に比べて803人も減少しています。

合格率はなんと5.3%です。

難関として知られる司法試験予備試験や、司法書士試験の3~4%よりは上かもしれませんが、合格率5.3%というのは相当な難関といえます。

社会保険労務士の合格率の推移

2013年から2022年までの10年間の社会保険労務士試験の合格率の推移は、以下のグラフの通りです。

出典:厚生労働省「合格者数等の推移(過去10年)・第54回社会保険労務士試験合格者の年齢別・職業別・男女別構成

受験申込者数は毎年減少傾向にあります。

合格者数が最も多かったのは2014年の4,156人で、合格者数が最も少なかったのは2015年の1,051人です。合格者数だけを比較すると4倍ほどの差があります。
おそらく2014年の合格者数が多くなったため、問題の難易度があがったり、基準の調整があったりしたのではないでしょうか。

合格率が最も高かったのは2014年の9.3%で、合格率が最も低かったのは2015年の2.6%です。2.6%といえば、旧司法試験なみの合格率です。合格率も比較すると約3.5倍の差があります。ただし高くても9.3%とここ10年間において10%を上回ることなく、全て1桁台でした。

社会保険労務士試験の構成・合格基準

それだけ難易度の高い社会保険労務士の試験とは、どのような構成なのでしょうか。試験の構成と合格基準から合格率の低さを考えてみましょう。

社会保険労務士試験科目と配点

社会保険労務士試験は8科目あります。

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト社会保険労務士制度

試験の方式は、選択式と択一式の2種類。

選択式は8問出題の40点満点で、試験時間は80分。
問題文の中に5つの空欄があり、選択肢の中から正解の番号を選択してマークシートに記入する方式です。1問5点とありますが、それぞれの科目で5問ずつ出題されるため、実際には40問あります。
それを80分で解くためには、1問2分程度の時間で解かなくてはなりません。

択一式は70問出題の70点満点で、試験時間は210分。
5つの選択肢の中から正解を選び、マークシートに記入します。全70問を210分で回答することから、1問につき3分程度の時間しかかけられません。

社会保険労務士試験の合格ライン

「両方マークシートだから、そんなに難しくないのでは?」と思われたかもしれません。しかし、合格基準が厳しいのです。

例えば、第52回(令和2年度)社会保険労務士試験の合格基準については、以下のように定められています。

①選択式試験は、総得点25点以上かつ各科目3点以上 (ただし、労務管理その他の労働に関する一般常識、社会保険に関する一般常識および健康保険法は2点以上)である者
②択一式試験は、総得点44点以上かつ各科目4点以上である者

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト 第52回(令和2年度)社会保険労務士試験についての情報

社労士試験の合格基準点は、選択式試験及び択一式試験のそれぞれの総得点と、それぞれの科目ごとに定められます。
足切り制度があることで、点数全体でみれば合格点に達していても、科目ごとの点数が不足していることで試験に落ちてしまうケースがあるのです。

そのため、苦手な科目があっても他の科目でカバーということができません。
例えば、国民年金法だけが苦手で、それだけ得点が合格基準点以下だった場合、他の全ての科目がパーフェクトにできていても、不合格となってしまいます。
社会保険労務士の試験は、試験範囲全ての分野についてまんべんなく得点する必要があるのです。

例えばTOEICのような試験であれば、最後まで回答できなくても前半である程度のスコアを出すことができるかもしれません。
しかし、社労士試験の場合は時間内に最後の科目までたどり着けなかったら、それでもう不合格が確実なのです。

合格基準点は、試験の難易度によって補正されるため、合格発表日までわかりません。試験の時に「この問題を捨てていいのか」と悩むことがあっても、その1問を捨てたら基準を満たさないかもしれないというプレッシャーがあります。他ではないレベルで、スピードと正確さが求められる試験といえるでしょう。

社会保険労務士試験の合格率はなぜ低いのか

それでは、なぜ社労士試験はここまで合格率が低いのか解説していきます!

科目数が多いため勉強範囲も広い

社労士試験は科目数が非常に多く、それだけ勉強しなければならない範囲も広いことが特徴です。
社労士試験の科目は下記の通りです。

労働基準法及び労働安全衛生法
労働者災害補償保険法
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
雇用保険法
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
労務管理その他の労働に関する一般常識
社会保険に関する一般常識
健康保険法
厚生年金保険法
国民年金法

これだけ科目数が多いだけでなく、社労士試験は毎年のように法改正があるため、昨年正解だったものが今年は正解ではなくなるということも多々あります。

科目合格制度がない

社労士試験は税理士試験などとは違い、科目合格制度がありません
過去に受験した際に合格している科目があったとしても、全科目合格してなければ、次回受験の際に全科目を受験しなければならないのです。

1日で試験科目をこなす必要があり、長時間の集中力が要求される

先ほど述べたように、社労士は試験科目が多いことで知られています。
そしてその多数の科目を1日ですべて受験しなければならない過酷な試験です。
かなりの集中力を要することがわかるかと思います。

各科目に厳しい基準点が存在する

社労士試験は各科目ごとに厳しい基準点が存在しています。
1科目でも合格点に満たない科目があると、不合格となってしまうため、すべての科目で合格基準点を超えなければなりません。

また、合格基準点は決められているものではなく、その年の受験者の得点を考慮して確定されるため毎年変動します。
この点数を取れば合格できるといった毎年の明確な基準がないため、対策をしにくいのが特徴です。

社会保険労務士試験の勉強法とコツ

1.苦手科目を作らないこと

先に述べたように、社労士試験はすべての科目で合格基準を超えなければならないため、捨て科目を作ることができません。
何かの科目に偏ることなく、すべての科目で合格点を取れるように勉強を進めることが大切です。

2.スキマ時間を活用して勉強する

社労士は社会人の方が、働きながら資格取得を目指すことが多いでしょう。
まとまった時間を取ることが難しければ、30分から1時間ほどでもいいので、時間を確保して勉強を継続させることが大事です。
勉強範囲が広く、暗記も多いため、毎日の積み重ねを意識しましょう。

3.過去問演習を行う

社労士試験は、過去に出題されている問題の傾向を掴み、慣れていくことが合格への近道となります。過去問演習に力を入れて、何度も繰り返すようにしましょう。

社労士試験の科目免除について

社労士試験では、実務経験などによって一部科目免除が認められることがあります。

「主な免除資格」は下記の通りです。

⒈国又は地方公共団体の公務員として労働社会保険法令に関する施行事務に従事した期間が通算して10年以上になる方

⒉厚生労働大臣が指定する団体の役員若しくは従業者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上になる方又は社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人の補助者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上になる方で、全国社会保険労務士会連合会が行う免除指定講習を修了した方

⒊日本年金機構の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間(日本年金機構の設立当時の役員又は職員として採用された方にあっては、社会保険庁の職員として社会保険諸法令の施行事務に従事した期間を含む。)が通算して15年以上になる方

⒋全国健康保険協会の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間(全国健康保険協会設立当時の役員又は職員として採用された方にあっては、社会保険庁の職員として社会保険諸法令の施行事務に従事した期間を含む。)が通算して15年以上になる方

※ 1~4の他にも試験科目ごとに免除資格があります。詳細は「試験科目の一部免除資格者一覧 」をご覧ください。

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「主な免除資格」

科目免除には事前の申請が必要となりますので、あてはまる資格を使用したい場合は事前に申請をしましょう。

また、科目免除を受けることは必ずしも有利に働くわけではないため、注意が必要です。

科目免除を受ける際のデメリット
免除を受ける科目の点数は、その年の合格基準点に応じて決められます。
そのため、得意科目であった場合などは、免除資格を使わずに受験した方が、
良い得点になることも
考えられます。
ご自身の得意・不得意も考慮して科目免除を受けるかどうか考えるのも良いかもしれません。

まとめ

社会保険労務士の試験の合格率はおおむね1桁台で、2022年に実施された第54回試験の合格率は5.3%と、前年をさらに下回りました。

社労士試験の合格率が低い理由としては、試験科目が8科目と多いだけでなく、総得点と科目ごとの得点で「合格基準点」という足切り制度があることの2点が考えられます。苦手な分野を作らないように勉強しないといけないのです。社会保険労務士を目指す人は、このことを念頭に勉強計画を立てて試験に臨みましょう。

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この記事を書いたライター

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